金沢弁
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/21 07:13 UTC 版)
音声
- 語頭以外のガ行音は鼻濁音になる(二俣と田島を除く)[5]。
- 「え」の発音は共通語よりも前寄りで、「い」は口蓋化が少ない。そのため、「え」と「い」の発音が近く、話者や単語によっては両者の区別が曖昧になることがある[6]。
- 能登や富山の一部と違って「し・す」「じ・ず」「ち・つ」を区別するが(四つ仮名も参照)、「い」の口蓋化の少なさと「う」の中舌化によって両者の音の違いは小さい[6]。
- 意味に関係はしないが、母音を単独で発音する際に声門破裂音が伴う[6]。
- 「ぜ」「せ」は語頭では「ずぇ」「すぇ」、語中では「じぇ」「しぇ」のように発音される[6]。
- 例:すぇんしぇー(先生)[6]
- 「か」「が」と合拗音「くゎ」「ぐゎ」を区別するが、語中・語尾で合拗音が現れることは少ない[6]。大正以後に生まれた人は合拗音の使用が少ない[6]。
- 例:家事[kazi] ≠ 火事[kwazi]
- 「つぁ」「つぇ」「つぉ」の発音がある[6]。
- 例:おとっつぁん(お父さん)、いっつぇん(一膳)、はっつぉ(初穂)[6]
- 近畿方言と同じく、1音節の名詞を伸ばす傾向がある[6]。
- 例:目ぇ、手ぇ
- 「い」「う」で終わる名詞に格助詞「が」や助動詞「や」などが付く時や、「る」で終わる動詞の終止形に助詞が付く時に促音化が起こる[6]。
- 指示語の「そ」が「ほ」になることがある。
- 例:ほーや(=そうだ)、ほして(=そして)、ほーねんて(=そうなんだよ)
- ワ行エ段(英語のwestの語頭のような発音)の終助詞がある。詳しくは「助詞」の項目を参照。
- 文末が「ん」で終わる傾向が強い。詳しくは「助詞」の項目を参照。
- アクセントは京阪式アクセントと東京式アクセントの中間的なアクセントである。例えば、「犬」では京阪式と同じく「い」にアクセントがくるが、「山」では東京式と同じく「ま」にアクセントがくる。はたまた「風」では、京阪式や東京式では平板に発音するのに対して、金沢弁では「ぜ」にアクセントを付けて発音する。詳しくは加賀弁#アクセントを参照。
- 語尾や会話の区切りで、伸ばされる音のイントネーションが一瞬でずり上がって下りる抑揚が現れる。このうねりは北陸一帯特有のもので、「間投イントネーション」や「ゆすりイントネーション」などと呼ばれる。共通語化が進む若い世代も多用する。
- 例:ほんでぇえ(=それで)、〜やけどぉお(=〜だけど)
- 若い世代の例:あのぉんねぇ(=あのね)、えっとぉんねぇ(=えっとね)
- ^ a b 加藤和夫「隠れた方言コンプレックス」『言語』第24巻第11号、大修館書店、1995年11月、74-85頁、2022年1月17日閲覧。
- ^ 加藤和夫「北陸地方の方言景観に関する社会言語学的研究: 方言景観の多様性とその要因解明」『平成30(2018)年度 科学研究費補助金 基盤研究(C) 研究成果報告書』、金沢大学人間社会研究域歴史言語文化学系、2019年6月、2022年1月17日閲覧。
- ^ 加藤(2006)、287頁。
- ^ 加藤(2006)、19-20頁。
- ^ a b c d e f g h i j k l 川本(1983)
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t 岩井(1959)
- ^ 以上、岩井(1959)より
- ^ 以上、川本(1983)より
- ^ a b c d e f g h i 小西いずみ「富山・金沢方言における形容詞の副詞化接辞「ナト・ラト」と「ガニ」:方言に見られる文法化の事例」『社会言語科学』第7巻第1号、社会言語科学会、2004年9月、63-74頁、2022年1月19日閲覧。
- ^ 加藤(2006)、175-176頁。
- ^ a b c d 加藤和夫「方言の現在:石川県内の事例を中心に」『金沢大学サテライト・プラザ「ミニ講演」講演録集』第12巻、2001年3月、2022年1月19日閲覧。
- ^ 加藤(2006)、60-65頁。
- ^ 『新 がんばりまっし金沢ことば』214頁。
- ^ a b c d e f g h i j 野間純平「石川方言におけるノダ相当形式:新形式の成立過程に注目して」『方言の研究』第1巻、ひつじ書房、2015年9月、251-276頁、NAID 40021403197。
- ^ 補足:名古屋弁にも文末表現として「がや」「が」「がん」などが存在するが、名古屋弁のそれらは準体助詞ではなく終助詞に由来するもので(名古屋弁#終助詞参照)、金沢弁の「がや」およびその変形とは別物である。
- ^ 加藤(2006)、181頁。
- ^ 野間(2015)掲載の表を一部改変
- ^ 能登では「-iん」とも言う
- ^ 『頑張りまっし金沢ことば』16-19頁。
- ^ 加藤(2006)、88-89頁。
- ^ 『頑張りまっし金沢ことば』44-45頁。
- ^ 『頑張りまっし金沢ことば』82-83頁。
- ^ 加藤(2006)、168-169頁。
- ^ 『頑張りまっし金沢ことば』20-21頁。
- ^ 『頑張りまっし金沢ことば』10頁。
- ^ 『新 頑張りまっし金沢ことば』10-12頁。
- ^ 『頑張りまっし金沢ことば』228頁。
- ^ 金沢中心部のこと。
- ^ 加藤和夫「石川県」、『月刊言語』2003年1月号、大修館書店。
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