金沢弁 金沢弁の例

金沢弁

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/21 07:13 UTC 版)

金沢弁の例

  • 金沢市森本での高齢女性と中年男性の会話[27]。「〜まさる」や「〜みす」など、伝統的な金沢弁の敬語が使われている。
「ばあちゃん、どこ行きまさらんけ?」(ばあちゃん、どこへお行きになるんだい?)
「きゃ、まい日でごぜーみすさけ、尾山の別院にまいんに行きみす」(今日はいい日でございますから、尾山[28]の別院に参りに行きます)
「ほりゃ、いい心がけやね。ごせっかくな」(それは良い心がけだね。ご精が出ますね)
「おあんさんは、どこけ?」(お前さんは、どこだい?)
「わしゃげすびたのかんぬきがいたなったもんで、痔かとおもて医者に診てもろがや」(私は尻の穴が痛くなったもので、痔かと思って医者に診てもらうんだ)
「ほんながけ、うらも冬の時分のしんばりが治らんで、今でも膏薬塗っとりみす」(そうなのかい、私も冬の時分のしもやけが治らなくて、今でも膏薬を塗っております)
  • 八百屋の店主と客の会話例[29]
「あー、まいどさん。今日はまたさぶい日になりみして」(ああ、こんにちは。今日はまた寒い日になりまして)
「おいねー。ほやさけ、今日は鍋にすっかなとおもて」(ええ。だから、今日は鍋料理にするかなと思って)
「ほんな、この白菜こーてくまっし」(それなら、この白菜を買っていらっしゃい)
「あんまりでかいが要らんわ」(あまり大きいのは要らないよ)
「こっでいーか。あんやとねー、いつもねー、きのどくなー」(これでいいかい。ありがとうね、いつもね、ありがとうね)
イソップ物語の方言訳に見る世代差(2001年)[11]
共通語 71歳男性による金沢弁訳 19歳女性による金沢弁訳
2匹の蛙の子が池のほとりで遊んでいました。 ニヒキノ ギャワズノコガ イケノソバデ アソンドッタガヤト。 ニヒキノ カエルノコガ イケノソバデ アソンドッテンテ。
そこへ牛が水を飲みにやってきて、間違って1匹の蛙の子を踏みつけて殺してしまいました。 ホコエ ウシガ ミズオ ノンニキテ マチゴーテ イッピキノ ギャワズノコオ フンツケテ コロイテモタ。 ソコニ ウシガ ミズ ノミニキテー マチガエテ イッピキノ カエルノコオ フンズケテ コロシテシマッテン。
子蛙が1匹見当たらないことに気がついたお母さん蛙は、兄さんはどこにいるのかと尋ねました。 チンケー ギャワズガ イッピキ ミエンコトニ キーツイタ カーカギャワズワ アンカ ドコ イッタガヤト キータガヤト。 コガエルガ イッピキ ミアタランコトニ キーツイタ オカーサンガエルワ ニーチャンワ ドコニ オルンカ キーテン。
「お兄ちゃんは死んでしまったよお母さん。4本足のものすごく大きなやつがやってきて泥の中に踏みつぶされてしまったの」 「アンカ ゴネテシモタガヤ カーチャン。ヨンポンアシノ ガンコニ デカイヤツガ キテー ドロンナカニ フミツブイテシモタ」 「ニーチャン シンデシモータワ カーチャン。ヨンホンアシノ モノスゲー デッケーヤツガ キテ ドロンナカニ フンズケラレテシマッタワ」
「ものすごく大きいやつですって。このくらい大きかったかい」と言うと、お母さん蛙は精一杯大きく見えるように、ぷうっと体をふくらませました。 「ガンコニ デカイヤツッテ コンクライ デカカッタンカ」トユート カーカギャワズワ セーイッパイ デカイガニ ミエランニ プーット カラダ フクラマイタ。 「モノスゲー デッケーヤツヤッテー。コンクライ デカカッタンカ」トイッテ オカーサンガエルワ セーイッパイ デカク ミエルガニ プーット カラダオ フクラマシテン。
「うん!そう、もっと大きかった」 「ウン。ホヤケド マダマダ デカカッタ」 「ウン。ソーヤケド モット デカカッタワ」

  1. ^ a b 加藤和夫「隠れた方言コンプレックス」『言語』第24巻第11号、大修館書店、1995年11月、74-85頁、2022年1月17日閲覧 
  2. ^ 加藤和夫「北陸地方の方言景観に関する社会言語学的研究: 方言景観の多様性とその要因解明」『平成30(2018)年度 科学研究費補助金 基盤研究(C) 研究成果報告書』、金沢大学人間社会研究域歴史言語文化学系、2019年6月、2022年1月17日閲覧 
  3. ^ 加藤(2006)、287頁。
  4. ^ 加藤(2006)、19-20頁。
  5. ^ a b c d e f g h i j k l 川本(1983)
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t 岩井(1959)
  7. ^ 以上、岩井(1959)より
  8. ^ 以上、川本(1983)より
  9. ^ a b c d e f g h i 小西いずみ「富山・金沢方言における形容詞の副詞化接辞「ナト・ラト」と「ガニ」:方言に見られる文法化の事例」『社会言語科学』第7巻第1号、社会言語科学会、2004年9月、63-74頁、2022年1月19日閲覧 
  10. ^ 加藤(2006)、175-176頁。
  11. ^ a b c d 加藤和夫「方言の現在:石川県内の事例を中心に」『金沢大学サテライト・プラザ「ミニ講演」講演録集』第12巻、2001年3月、2022年1月19日閲覧 
  12. ^ 加藤(2006)、60-65頁。
  13. ^ 『新 がんばりまっし金沢ことば』214頁。
  14. ^ a b c d e f g h i j 野間純平「石川方言におけるノダ相当形式:新形式の成立過程に注目して」『方言の研究』第1巻、ひつじ書房、2015年9月、251-276頁、NAID 40021403197 
  15. ^ 補足:名古屋弁にも文末表現として「がや」「が」「がん」などが存在するが、名古屋弁のそれらは準体助詞ではなく終助詞に由来するもので(名古屋弁#終助詞参照)、金沢弁の「がや」およびその変形とは別物である。
  16. ^ 加藤(2006)、181頁。
  17. ^ 野間(2015)掲載の表を一部改変
  18. ^ 能登では「-iん」とも言う
  19. ^ 『頑張りまっし金沢ことば』16-19頁。
  20. ^ 加藤(2006)、88-89頁。
  21. ^ 『頑張りまっし金沢ことば』44-45頁。
  22. ^ 『頑張りまっし金沢ことば』82-83頁。
  23. ^ 加藤(2006)、168-169頁。
  24. ^ 『頑張りまっし金沢ことば』20-21頁。
  25. ^ 『頑張りまっし金沢ことば』10頁。
  26. ^ 『新 頑張りまっし金沢ことば』10-12頁。
  27. ^ 『頑張りまっし金沢ことば』228頁。
  28. ^ 金沢中心部のこと。
  29. ^ 加藤和夫「石川県」、『月刊言語』2003年1月号、大修館書店。





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