連邦大統領 (スイス) 権能

連邦大統領 (スイス)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/01 13:59 UTC 版)

権能

オーストリアドイツの連邦大統領とは異なり、スイスの連邦大統領は国家元首ではない。スイス連邦憲法上、連邦参事会が国家元首兼政府の長である。

連邦参事会の議長としては、連邦大統領は参事会での採決においてほかの連邦参事(閣僚)と同等の扱いを受ける。

さらに連邦参事として担当する連邦省についても、連邦大統領は連邦参事会の一員としてその職務を行うのみである。国内において連邦大統領が国家元首のように振る舞うのは、新年と建国記念日(8月1日)のテレビ・ラジオ演説と、毎年連邦院で行われる外交使節団に対する新年のレセプションで駐スイス・ローマ教皇庁大使とともにスピーチを述べるほどのものである。近年では外交の場が増えてきたこともあり、連邦大統領はスイスの政府首脳の立場として外遊することが多くなった。同様に、国際連合総会など他国の国家元首や政府の長が一堂に会する際にも連邦大統領が出席する。また、オリンピックの開会式は国家元首が開会宣言を行うことになっているが、過去にスイスで開催されたオリンピック(1928年のサンモリッツ五輪1948年のサンモリッツ五輪)では連邦大統領が開会宣言を行っている。

選出

連邦大統領は毎年12月初めに連邦議会において、連邦参事会のなかから1名を選任する。連邦大統領の任期は毎年1月1日から12月31日までである。

19世紀、連邦大統領に選出されることは連邦参事にとって高く評価されたという名誉であった。逆に評価の低い連邦参事が連邦大統領に選出されることは少なかった。たとえばヴィルヘルム・マティアス・ナエフ英語版は27年間連邦参事を務めたが、連邦大統領に選出されたのは1853年の1度きりであった。

20世紀以降は連邦大統領の選出にあたってあまり議論が起こることはなくなった。連邦大統領職を最も長い期間務めていない連邦参事が就任するということが不文律として定着したためである。このため連邦参事は長くても7年に1度は連邦大統領を輪番制で務めることになった。ところで連邦大統領に選出されることになる連邦参事はどれだけの票を受けられるかということが議論となることがある。1970-80年代では全246票中200票を獲得すれば優秀な結果とみなされていたが、近年は政党間の対立が激化してきていることもあって、180票を獲得すればそれなりに良い結果であるとみなされるようになっている。

1920年までは、途中に例外の時期があったものの、連邦大統領の任期中は連邦外務省を担当するということが慣習となっていた。そのため連邦参事会のなかで、連邦大統領退任直後の連邦参事が就任前の連邦省に戻り、新任の連邦大統領が連邦外務省を担当するというような変更が毎年なされていた。さらに連邦大統領はその任期期間中、連邦外務省担当参事(外相)を兼務しているにもかかわらずスイス国外に出国しなかったという慣習があった。

連邦大統領と同じく、副大統領も毎年選出される。副大統領は連邦大統領を代行する役職で、通常は翌年に連邦大統領に選出されることになる。

脚注


注釈

  1. ^ スイス連邦の公用語はドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語であり、現行のスイス連邦憲法(1999年4月18日制定)はそれぞれの言語版が用意されている。これらの公用語のうち、イタリア語を除く3言語では連邦大統領を指す単語に男性形と女性形があり、それらの言語版の憲法の第176条では『連邦大統領(女性形)または連邦大統領(男性形)』という表現が使われている(ドイツ語版フランス語版。ロマンシュ語版については憲法全文のPDF形式ファイルを参照)。本項では男性形のみ記述し、女性形は省略した。

出典

  1. ^ 森田安一『スイス 歴史から現代へ』刀水書房、1980年。P116の「(2)内閣」から。


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