赤毛のアン
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主な日本語訳一覧
- (1952年) 村岡花子訳 - 三笠書房。日本にアンを普及させた訳として知られている。原作の抒情的な表現やユーモラスな物言いを巧みに生かした文体は、長く読み継がれている。完訳ではなく所々に省略箇所があり、誤訳も見られるが、現在の新潮文庫版では、孫で、翻訳家の村岡美枝によって訂正されている[7]。
- (1957年) 中村佐喜子 訳 - 角川文庫。
- (1969年) 岸田衿子 訳 - 学習研究社。
- (1973年) 神山妙子 訳 - アニメ作品の底本となった訳。旺文社文庫、新学社文庫。旺文社文庫版は絶版入手困難。グーテンベルク21のデジタルブック版は入手可(外部リンクを参照)。新学社文庫版は中学生用図書教材であり、一般書店では流通しておらず、最寄りの新学社教材取扱店が注文を受けてくれれば個人でも現在入手可。
- (1975年) 猪熊葉子 訳 - 講談社文庫(旧版)。
- (1987年) 茅野美ど里 訳 - 偕成社。
- (1989年) 石川澄子 訳 - 東京図書。
- (1989年) きったかゆみえ 訳 - 全訳に近い抄訳。金の星社。
- (1990年) 谷口由美子訳 - 少年少女世界名作の森 14。集英社。
- (1990年) 谷詰則子 訳 - 篠崎書林。
- (1990年 - 1991年) 掛川恭子 訳 - 日本初の完訳シリーズ。ただし、トビラでのブラウニングの詩の引用がない。講談社(2005年4月から文庫化)。
- (1992年) 曾野綾子 訳 - 抄訳。河出書房新社・河出文庫、新学社世界文学の玉手箱シリーズ。
- (1993年) 松本侑子 訳 - 注釈が豊富な訳本。文学引用を解説している。集英社。
- 『赤毛のアン』ISBN 4087740072(集英社文庫、2000年、ISBN 978-4-08-747201-1)
- 『アンの青春』ISBN 4087752887(集英社文庫、2005年、ISBN 978-4-08-747867-9)
- 『アンの愛情』集英社文庫、ISBN 978-4-08-760562-4
- (1999年) 山本史郎 訳 - 『完全版・赤毛のアン』(英: The Annotated Anne of Green Gables 注釈つき『赤毛のアン』)の翻訳。原書房。
- (2008年) 村岡花子 訳 - 1954年に出版された村岡花子訳を、孫の村岡美枝が改訂・補訳した版[7]。新潮文庫。
- 『赤毛のアン』2008年 ISBN 978-4-10-211341-7
- 『アンの青春』2008年 ISBN 978-4-10-211342-4
- 『アンの愛情』2008年 ISBN 978-4-10-211343-1
- 『アンの友達』2008年 ISBN 978-4-10-211344-8
- 『アンの幸福』2008年 ISBN 978-4-10-211345-5
- 『アンの夢の家』2008年 ISBN 978-4-10-211346-2
- 『炉辺荘(イングルサイド)のアン』2008年 ISBN 978-4-10-211347-9
- 『アンをめぐる人々』2008年 ISBN 978-4-10-211348-6
- 『虹の谷のアン』2008年 ISBN 978-4-10-211349-3
- 『アンの娘リラ』2008年 ISBN 978-4-10-211350-9
- 『アンの思い出の日々(上)』2012年 ISBN 978-4-10-211351-6
- 『アンの思い出の日々(下)』2012年 ISBN 978-4-10-211352-3
- (2014年 - ) 河合祥一郎 訳 - 角川つばさ文庫
- 『新訳 赤毛のアン(上) 完全版』2014年 ISBN 9784046313737
- 『新訳 赤毛のアン(下) 完全版』2014年 ISBN 9784046313867
- 『新訳 アンの青春(上) 完全版 -赤毛のアン2-』2015年 ISBN 9784046314963
- 『新訳 アンの青春(下) 完全版 -赤毛のアン2-』2015年 ISBN 9784046314970
- 『新訳 アンの初恋(上) 完全版 -赤毛のアン3-』2021年 ISBN 9784046319418
- 『新訳 アンの初恋(下) 完全版 -赤毛のアン3-』2021年 ISBN 9784046319425
- (2019年 - 2023年) 松本侑子 訳 - 文春文庫。同氏訳集英社版の新訳改訂版
- 『赤毛のアン』 2019年 ISBN 978-4-16-791324-3
- 『アンの青春』 2019年 ISBN 978-4-16-791359-5
- 『アンの愛情』 2019年 ISBN 978-4-16-791395-3
- 『風柳荘(ウィンディ・ウィローズ)のアン』 2020年、ISBN 978-4-16-791433-2
- 『アンの夢の家』 2020年 ISBN 978-4-16-791600-8
- 『炉辺荘のアン』 2021年 ISBN 978-4-16-791789-0
- 『虹の谷のアン』 2022年 ISBN 978-4-16-791964-1
- 『アンの娘リラ』 2023年 ISBN 978-4-16-792150-7
邦題
邦題の『赤毛のアン』は、村岡花子が初邦訳を手掛けた時に付けられたものである。村岡は教文館の同僚、カナダ人宣教師ミス・ショーが戦局から1939年にカナダに帰る際に原書を渡された(ショーは出版の翌年に亡くなり、再会することはなかった)。当初、村岡は『窓辺に倚る少女』という題を考えていた[8]が、刊行する三笠書房の編集者・小池喜孝が『赤毛のアン』という題を提案し[9]、当時の社長の竹内道之助が村岡にこれを伝えた。
村岡はこれを一旦断るが、これを聞いた村岡の娘のみどり(当時20歳)が『赤毛のアン』という題に賛同し、これを強く推した。このため村岡は、娘のみどりのような若い読者の感覚に任せることにし、『赤毛のアン』という邦題を決定した[10]。しかし、こうして刊行された『赤毛のアン』の表紙に描かれていたのは、どう見ても金髪の少女[11]であった[12]。
なお、イタリア語訳の題名も「赤毛のアン」を意味する Anna dai capelli rossi となっているが、これは、翻訳書の刊行よりも先に、日本のアニメ作品が、この題名でイタリアで放送されたことが影響していると考えられている[要出典][13][出典無効]。
主な訳例
- Well now - マシューの口癖。村岡花子訳、松本侑子訳では「そうさな」、きったかゆみえ訳では「そうだな」、神山妙子訳、アニメ版では「そうさのう」。
- bosom friend - アンとダイアナの間柄を評した言葉。村岡花子訳、松本侑子訳では「腹心の友」[注釈 4]、神山妙子訳、アニメ版では「心の友」。
- may flower - その名の通り5月頃にプリンスエドワード島内で咲くツツジ科イワナシ属(芳香の強いピンクや白花のアメリカイワナシ)であり、この花のない国に住んでいる人がかわいそうとアンに言わせている[14]。村岡花子訳、神山妙子訳、きったかゆみえ訳では「さんざし(サンザシ)」としているが実際には別の花である(さんざしはバラ科サンザシ属)。松本侑子訳、アニメ版では「メイフラワー」。
- Lake of Shining Waters - プリンスエドワード島に実在する湖。作中では、元々地元で Barry's pond (バリーの池)と呼ばれていたものをアンがこう命名したことになっている。村岡花子訳、神山妙子訳、松本侑子訳では「輝く湖水」、アニメ版では「きらめきの湖」。
- scope for imagination - アンの言動に頻出する言葉。村岡花子訳、松本侑子訳では「想像の余地」、神山妙子訳では「想像/空想の余地」、きったかゆみえ訳では「空想する楽しみ」。
- raspberry cordial - 村岡花子訳、神山妙子訳、きったかゆみえ訳共に「いちご水(イチゴ水)」、松本侑子訳では「木苺水」。アンがこれと間違えてワインをダイアナに飲ませてしまう。
- patchwork - きったかゆみえ訳、松本侑子訳では「パッチワーク」、神山妙子訳では「つぎはぎ細工」、村岡花子訳では「つぎもの」[15]。
- quilt - 松本侑子訳では「キルト」、きったかゆみえ訳では「キルティング」、村岡花子訳、神山妙子訳では「さしこ」[15]。
注釈
出典
- ^ Devereux, Cecily Margaret (2004). A Note on the Text. In Montgomery (2004), p.42. ISBN 9781551113623
- ^ Montgomery, Lucy Maud (2004) [1908]. Devereux, Cecily Margaret. ed. Anne of Green Gables. Peterborough, Ontario: Broadview Press. ISBN 1-55111-362-7
- ^ 'Anne of Green Gables' 1st edition sells at auction for US$37,000, a new record, "The Guardian", December 12, 2009
- ^ 「赤の補色である緑をイメージしたタイトルであるのも、その鮮やかな色彩の対照を意識させる(堀啓子『日本ミステリー小説史』2015年中公新書p.143)。
- ^ 赤松佳子「刊行百周年を機に読み直す『赤毛のアン』 (特集 ジェンダーと言語文化--少女・小説・ジェンダー)」『奈良女子大学文学部研究教育年報』第6号、奈良女子大学文学部、2009年、37-46頁、ISSN 13499882、NAID 110008670590。
- ^ 竹内素子/伊澤祐子/藤掛由実子「モンゴメリの日記(八) - 友の死…『日記抄』一九一九年二月七日をもとに -」『研究紀要』第33巻、仙台高等専門学校、2004年2月、154-142頁、ISSN 03864243、NAID 110004734440。
- ^ a b “実は誤訳や省略がいっぱいだった村岡花子訳の「アン」”. smartFLASH (2014年8月3日). 2020年11月1日閲覧。
- ^ 村岡恵理編『花子とアンへの道』(新潮社 2014年)「『赤毛のアン』誕生!ペンと共に生きた75年」によれば、村岡は他に『夢みる少女』とかも考えていた。
- ^ 第313回「赤毛のアン」の名付け親「小池喜孝」の本 - 山下敏明さんのあんな本、こんな本 なお、小池はその後、三笠書房を辞し、北海道北見北斗高等学校へ社会科教諭として赴任した。
- ^ 小池の提案は原稿が印刷所に回される前夜だったため、花子のこの翻意が1日遅ければ、邦題は『窓辺に倚る少女』となっていた可能性があった。(村岡恵理『アンのゆりかご 村岡花子の生涯』マガジンハウス、2008年。ISBN 978-4-8387-1872-6)
- ^ 雑誌『少女の友』の昭和15年(1940年)2月号で紹介されたイギリスの画家、ラルフ・ピーコックの『エセル』と題した人物画。
- ^ 村岡恵理『アンのゆりかご 村岡花子の生涯』マガジンハウス、2008年。ISBN 978-4-8387-1872-6
- ^ カナダ人もびっくり! イタリアに『赤毛のアン』を広めたのは日本だった!
- ^ Reid, Catherine (2018). The Landscapes of Anne of Green Gables: The Enchanting Island that Inspired L. M. Montgomery. Timber Press. p. 44. ISBN 9781604697896 小説原文より"pink and white stars of sweetness under their brown leaves"; "I think it would be tragic.. not to know what Mayflowers are like"を引用している。
- ^ a b 2008年に行われた村岡美枝による改訂・補訳の際にも「異なる文化の二つの言語の奥にある心情の共通点をすくいあげて選んだこの言葉は残したい」としてあえて直さなかったとされる。“出版翻訳家 村岡美枝さん「贈ることで心が伝わる、それが本。子どもたちに、そんな本を届けたい(後編)”. フェロー・アカデミー (2014年4月10日). 2015年2月22日閲覧。
- ^ “「赤毛のアン」主演エラ・バレンタインに来日インタビュー! 新生“アン”に抜擢された感想は? 憧れの女優も直撃”. tvgroove. 株式会社TVグルーヴ・ドット・コム (2017年5月1日). 2022年3月7日閲覧。
- ^ 取材・文:編集部 石井百合子 (2017年5月1日). “新『赤毛のアン』はこうして生まれた 15歳の新星が明かすオーディション秘話”. シネマトゥデイ. 2022年3月8日閲覧。
- ^ 取材・文:石塚圭子 (2017年4月30日). “「赤毛のアン」原作者モンゴメリーの素顔「祖母はコミュニケーションの天才」”. シネマトゥデイ. 2022年3月8日閲覧。
- ^ “L・M・モンゴメリーの名作児童文学を新たに映画化!「赤毛のアン」5月6日公開決定”. 映画.com. 株式会社エイガ・ドット・コム (2017年2月16日). 2022年3月7日閲覧。
- ^ “エラ・バレンタイン主演『赤毛のアン』、予告編で天真爛漫っぷり炸裂!”. 映画ランド (2017年3月25日). 2022年3月7日閲覧。
- ^ a b c “実写版「赤毛のアン」3部作、第2部&完結編が連続公開決定”. 映画.com. 株式会社エイガ・ドット・コム (2018年6月28日). 2022年3月7日閲覧。
- ^ “16歳の卒業と旅立ちを描いた「赤毛のアン 卒業」予告編が完成”. 映画.com. 株式会社エイガ・ドット・コム (2018年9月4日). 2022年3月7日閲覧。
- ^ “Netflix「赤毛のアン」をドラマ化、「ブレイキング・バッド」脚本家が参加”. 映画ナタリー. (2016年8月25日) 2016年8月26日閲覧。
- ^ “「赤毛のアン」アン・シャーリー役に上白石萌歌、昨年の姉からバトンタッチ”. ステージナタリー (2016年2月29日). 2016年2月29日閲覧。
- ^ “美山加恋、ミュージカル『赤毛のアン』主人公・アン役に決定!”. クランクイン! (ハリウッドチャンネル). (2017年3月1日) 2017年3月1日閲覧。
- ^ “「赤毛のアン」アン・シャーリー役に田中れいな「皆さまに愛されるアンを」”. ステージナタリー (ナターシャ). (2019年2月28日) 2019年2月28日閲覧。
- ^ 公式サイト
- ^ 赤毛のアン事件 知財高裁平成17(行ケ)10349号 平成18年9月20日判決(四部)<棄却> 〔特許ニュース2006年10月27日号〕
- ^ 審決取消請求事件 平成17(行ケ)10349 平成18年9月20日 知的財産高等裁判所
- ^ 松原洋平「判例研究 著著作物の題号と同一構成の商標が公序良俗に反し無効とされた事例 : Anne of Green Gables事件」『知的財産法政策学研究』第15号、北海道大学大学院法学研究科21世紀COEプログラム「新世代知的財産法政策学の国際拠点形成」事務局、2007年6月、371-385頁、ISSN 18802982、NAID 120002277642。
- ^ 熊井明子「花子・アン・シェイクスピア」村岡恵理監修『KAWADE夢ムック 文藝別冊 総特集 村岡花子』河出書房新社、2014年。ISBN 978-4-309-97824-6
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