購買力平価説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/15 19:18 UTC 版)
絶対的購買力平価
基準になるのは、米国での商品価格とUSドルである。理論上は対USドルだけではなく、どの通貨に対しても購買力平価は算出可能である。物やサービスの価格は、通貨の購買力を表し、財やサービスの取引が自由に行える市場では、同じ商品の価格は1つに決まる(一物一価の法則)。
一物一価が成り立つとき、国内でも海外でも、同じ商品の価格は同じ価格で取引されるので、2国間の為替相場は2国間の同じ商品を同じ価格にするように動き、均衡する。この均衡した為替相場を指して、購買力平価ということもある。
購買力平価=(1海外通貨単位[基軸通貨であるUSドルが使われることが多い]あたりの円貨額[やその他の海外通貨]で表示した)均衡為替相場=日本での価格(円)÷日本国外(米国)での価格(現地通貨)
これが厳密に成立するにはすべての財やサービスが自由に貿易されねばならない。
実際には、為替相場が厳密に購買力平価の状態になっていて、かつ2つの貨幣による経済のインフレーション、デフレーションなどがそのまま為替相場に反映され購買力平価の状態が保たれる、ということはないと考えられている。為替相場は購買力の他にも様々な要因によって影響されるためである。但し、購買力平価から大きく乖離した状態が長期的に続くことは難しいと考えられている。
第一勧銀総合研究所は「現実の為替相場と購買力平価が常に一致しているわけではなく、むしろ乖離するほうが普通である」と指摘している[2]。
購買力平価説に則って、ドル円について「輸出物価ベースの購買力平価では1ドル=85円程度であるため大した問題ではない」という議論があるが、これは為替レート#実質実効為替レートと同じく貿易面での有利・不利を含意しており、円高を考える際には適切ではないことに留意すべきである[3]。
経済学者の高橋洋一は「学者などがある時点で計算した購買力平価や実効為替レートなどの数字を掲げて議論したとしても、企業・財界など、輸出が困難になり国内で企業を維持できないため海外展開をしようと考える人達の意見とは全く違うものであり、意味のない議論である」と述べている[4]。
相対的購買力平価
為替相場は2国における物価水準の変化率に連動するという考え方。またはそれによって求められる為替相場。 正常な自由貿易が行われていたときの為替相場を基準にして、その後の物価上昇率の変化から求められる。現在はこの求め方が主流となっている。
A国の相対的購買力平価=基準時点の為替相場×A国の物価指数÷A国国外の物価指数
これが厳密に成立するには全ての財・サービスが同じ割合で変動しなければならない。
基準年については、歴史的にはスミソニアン体制が実質的に終了し主要国が変動相場制に移行した1973年が採用されることが通常であり[5]、これはまた1973年時点では日米ともに経常収支が比較的均衡し、政治的圧力も無く自然に為替取引が行われていた(特に4-6月期の平均=1ドル265円)ことも理由とされる。
購買力平価のパズル
購買力平価から示唆される実質為替レートと実際の為替レートの間の乖離が長期間にわたって継続することを購買力平価のパズルと呼び、これに対して様々な説明が与えられている。
注釈
- ^ 人口密度に起因する土地代の影響等
出典
- ^ 高橋洋一 『高橋教授の経済超入門』 アスペクト、2011年、156頁。
- ^ 第一勧銀総合研究所編 『基本用語からはじめる日本経済』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2001年、77頁。
- ^ 片岡剛士 (2010年10月13日). “円高は経済政策の失敗が原因だ” (日本語). シノドス
- ^ 2012年インタビューFNホールディング
- ^ 国際通貨研究所「主要通貨購買力平価(PPP)Q&A」[1]
- ^ 統計局, 総務省 (2017年2月6日). “国際比較プログラム(ICP)への参加”. 総務省HP. 2019年11月11日閲覧。
- ^ 世界銀行. “International Comparison Program (ICP)”. 2019年11月11日閲覧。
- ^ “Monthly comparative price levels” (英語). 経済協力開発機構 (2023年12月). 2024年3月16日閲覧。
- ^ “The Big Mac index” (英語). The Economist. (2023年11月17日) 2024年3月16日閲覧。
- ^ Susannah Binsted (2019年9月30日). “Starbucks Index 2019” (英語). finder (finder.com) 2019年11月11日閲覧。
- ^ スターバックス. “スターバックス ラテ”. 2019年11月11日閲覧。
- ^ 財務省 (2019年10月). “HP> 税制 > わが国の税制の概要 > 国際比較 > 消費税など(消費課税)に関する資料 >付加価値税率(標準税率及び食料品に対する適用税率)の国際比較>備考3”. 2019年11月11日閲覧。
- 1 購買力平価説とは
- 2 購買力平価説の概要
- 3 PPPレートの推計
- 4 脚注
- 購買力平価説のページへのリンク