行政訴訟
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/27 06:01 UTC 版)
訴訟要件
被告適格について
抗告訴訟については処分又は裁決をした行政庁が国又は公共団体に所属する場合は、当該処分ないし裁決をした行政庁が所属する国又は公共団体が被告適格(当事者適格)を有する(行政事件訴訟法11条1項)。 例えば、法務大臣がした処分については法務大臣が所属する国が被告適格を有し、東京都知事がした処分については、東京都知事が所属する東京都が被告となる。
処分又は裁決をした行政庁が国又は公共団体に所属していない場合は、その行政庁が被告適格を有する(同法2項)。建築確認について指定確認検査機関が行った場合の取消訴訟の被告適格を有するのは指定確認検査機関となる。
そして、前2項の規定により被告とすべき国若しくは公共団体又は行政庁が存在しない場合は、処分または裁決に係る事務が帰属する国又は公共団体が被告適格を有する。建築確認を行った指定確認検査機関が解散して、被告となる行政庁が存在しなくなった場合、当該事務が帰属する都道府県が被告適格を有する。
その他、民衆訴訟や機関訴訟の場合における被告については行政庁が被告適格を有する場合がある。
国が被告となる場合、法務大臣が国を代表する[20]。その普通裁判籍の所在地は法務省の所在地となる[21]。都道府県の場合は、通常は都道府県知事が代表者となり[22]、その普通裁判籍の所在地は主たる事務所、すなわちその都道府県庁の所在地となる[23]。ただし、地方公共団体に設置されている独立行政委員会(教育委員会等)ないしその属する行政庁にかかる行政事件訴訟についての公共団体に関しては、当該独立行政委員会が代表者となる旨の規定がおかれている。
なお、行政事件訴訟法15条に「被告を誤つた訴えの救済」の規定がある[注釈 7][24]。
注釈
- ^ a b 仮の義務付、仮の差止めは、ここでは訴訟類型として挙げられているが共に本案のものではない。
- ^ 「処分性が認められない場合にはそもそも「法律上の争訟」(裁判所法3)に当たらないとされるか、あるいは当該立法によって認められるべき法的地位の確認訴訟として構成されることになろう(例として、在外邦人の選挙権を行使する権利の確認訴訟を公法上の当事者訴訟として認めた(最高裁 2005)がある)。」(人見 2014), p. 112.
- ^ つまり他の法定抗告訴訟で済ませられればそれでする必要があること。
- ^ 事例としては例えば(最高裁 1981)。
- ^ 形式的当事者訴訟、実質的当事者訴訟ともにあくまで講学上の呼称であって、実定法に定めが有るものではない。
- ^ 2004年の法改正以前にあまり注目されてこなかったのは、職権取調べの適用以外実質的に私法上の当事者訴訟と変わりなく。公私二元論に対する学会からの批判により存在意義が問われていたからである(一方でこれに対抗する当事者訴訟活用論も有った)。
- ^ 裁判所が原告からの申し立てなしに職権で被告の変更をすることはできないが、訴状の被告の表記が不正確であったり誤記の場合は、原告に対し補正を求めることになる。
出典
- ^ 稲葉 et al. 2018, p. 214 - 215
- ^ 行政訴訟のあるべき制度、あるべき運用について 法律文化 2004年2月号、神戸大学大学院法学研究科教授 阿部泰隆
- ^ 阿部 2021
- ^ 南 & 高橋 2014, p. 29
- ^ "抗告訴訟". 日本大百科全書. コトバンクより2022年7月7日閲覧。
- ^ (人見 2014), p. 111、一次文献は(杉本 1963), p. 8 -; (宇賀 2013), p. 119。
- ^ (人見 2014), p. 111、一次文献は(柳瀬 1969)
- ^ (人見 2014), p. 113 - 115.
- ^ a b (最高裁 2012)
- ^ (人見 2014), p. 114、一次文献は(山本)。
- ^ (人見 2014), p. 114、一次文献は例えば(塩野 2013), p. 264。
- ^ (人見 2014), p. 114.
- ^ (人見 2014), p. 114、一次文献は(塩野 2013), p. 252。判例としては例えば(横浜地裁 2014)。
- ^ (人見 2014), p. 115。一次文献は(塩野 2013), p. 253。
- ^ 斎藤 2007, pp. 318–319
- ^ 行政訴訟検討会 2004
- ^ a b 石川 et al. 2022, p. 170
- ^ 斎藤 2007, p. 320
- ^ 芝池 2017, p. 354
- ^ 国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律第1条
- ^ 民事訴訟法第4条第6項
- ^ 地方自治法第147条
- ^ 民事訴訟法第4条第4項
- ^ (村田 2014)
- ^ 村上 2014, p. 204、一次文献は杉本 1963, p. 28
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