自衛隊 概要

自衛隊

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/04 22:17 UTC 版)

概要

日本国憲法第9条の下、専守防衛に基づき、国防の基本方針および防衛計画の大綱の定めるところにより、“国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、我が国を防衛すること”を基本理念とする(自衛隊法第3条第1項)[注釈 3]内閣総理大臣内閣を代表して最高指揮監督権を有し、防衛大臣が隊務を統括する。陸、海、空の三自衛隊を一体的に運用するための統括組織として統合幕僚監部が置かれ、防衛大臣は統合幕僚長を通じて、陸海空自衛隊に命令を発する。

自衛隊法上の「自衛隊」とは、自衛隊員[注釈 4]として含まれない「防衛大臣防衛副大臣防衛大臣政務官防衛大臣補佐官防衛大臣政策参与、及び防衛大臣秘書官」なども含めた防衛省の「事務次官並びに防衛省の内部部局防衛大学校防衛医科大学校防衛会議統合幕僚監部情報本部防衛監察本部地方防衛局防衛装備庁、その他の機関並びに陸上自衛隊、海上自衛隊及び航空自衛隊を含むもの」(自衛隊法第2条第1項)とされ、これは「防衛省」とほぼ同一の組織に相当する[注釈 5]。一般的には国の行政機関という面から見た場合は「防衛省」、部隊行動を行う実力組織としての面から見た場合は「自衛隊」として区別されて用いられることが多い。

日本国憲法第9条は国際紛争を解決する手段としての「戦争の放棄」と「戦力不保持」、ならびに「交戦権の否認」を定めているが、政府見解によれば憲法は自衛権の放棄を定めたものではなく、その自衛権の裏付けとなる自衛のための必要最小限度の実力は憲法第9条第2項にいう「戦力」には該当しない[10][11]。よって、日本を防衛するため必要最小限度の実力を行使することは当然に認められており、これは交戦権の行使とは別の観念であるという立場に立っている[12][13]。こういった憲法上の制約を課せられている自衛隊は、通常の観念で考えられる軍隊とは異なるものであるが、他方、自衛隊は国際法上は軍隊として取り扱われており、自衛官は軍隊の構成員に該当するものとされている[9]

国防の目的は、直接及び間接の侵略を未然に防止し、万一侵略が行われるときはこれを排除し、もって民主主義を基調とする我が国の独立と平和を守ることにある。この目的を達成するための基本方針を次のとおり定める。
  1. 国際連合の活動を支持し、国際間の協調をはかり、世界平和の実現を期する。
  2. 民生を安定し、愛国心を高揚し、国家の安全を保障するに必要な基盤を確立する。
  3. 国力国情に応じ自衛のため必要な限度において 効率的な防衛力を漸進的に整備する。
  4. 外部からの侵略に対しては、将来国際連合が有効にこれを阻止する機能を果たし得るに至るまでは、米国との安全保障体制を基調としてこれに対処する。 — 国防の基本方針 - 1957年(昭和32年)5月20日閣議決定

2013年12月17日、「国防の基本方針」に代わるものとして「国家安全保障戦略[14]が策定された。

自衛隊の公式な英称はJapan Self-Defense Forcesであるが、日本国外において陸海空の各自衛隊は日本の実質的な国軍(Japanese military force あるいは Japanese armed force)として認知されており、陸上自衛隊は Japanese Army(日本陸軍の意)、海上自衛隊は Japanese Navy(日本海軍の意)、航空自衛隊は Japanese Air Force(日本空軍の意)に相当する語で表現されることがある。なお、英語で"right of self-defense"の語は国際法上「自衛権」を意味し、"Self-Defense Forces"は「自衛権を行使するための軍隊」と解釈できる。(国際連合憲章第51条の英文も参照されたい。)




注釈

  1. ^ 自衛隊法第3条第1項は、自衛隊を「我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たる」組織であると表現している。
  2. ^ 国際法上は軍隊として機能しているものの、憲法第9条との兼ね合いから正式に国軍化されておらず、政策的な制約が多く存在する。憲法が特別裁判所の設置を禁じているため、軍法会議も有しない。しかし、ハーグ陸戦条約が定めるところの交戦資格を持つ団体の条件を有しており、国際的に軍隊として扱われている。装備や編成も軍隊に準じており、各種制約を加味しても国際法上の軍隊と見なされている。
  3. ^ 栗栖弘臣は2000年に上梓した『日本国防軍を創設せよ』中でこう述べた――「国民の生命、身体、財産を守るのは警察の使命(警察法)であって、武装集団たる自衛隊の任務ではない。自衛隊は『国の独立と平和を守る』(自衛隊法)のである。『国』とは、わが国の歴史、伝統に基づく固有の文化、長い年月の間に醸成された国柄、天皇制を中心とする一体感を享受する民族、家族意識である。決して個々の国民を意味しない」。
  4. ^ 防衛省職員自衛官のほか事務官等(防衛書記官防衛部員など)から構成されているが、そのほとんどは同時に自衛隊員でもある。
  5. ^ 「自衛隊」の定義について規定する自衛隊法第2条第1項には「政令で定める合議制の機関並びに防衛省設置法(昭和二十九年法律第百六十四号)第四条第二十四号又は第二十五号に掲げる事務をつかさどる部局及び職で政令で定めるものを除く」との除外規定が含まれており、防衛省に属する機関のうち独立行政法人評価委員会、防衛人事審議会、自衛隊員倫理審査会、防衛調達審議会、防衛施設中央審議会、防衛施設地方審議会、捕虜資格認定等審査会、防衛省地方協力局労務管理課については「自衛隊」の範囲から除外されている(自衛隊法施行令第1条第1項・第2項)。従って、「自衛隊」と「防衛省」とでは組織の範囲が完全に一致するわけではない。
  6. ^ 実質為替レート アメリカドル(2016年)
  7. ^ 発祥は防衛庁(当時)詰めの新聞記者と指摘されている[21]
  8. ^ 学説については野中俊彦高橋和之中村睦男高見勝利『憲法(1)第4版』(2006年)有斐閣、164-166頁も参照のこと。
  9. ^ 違憲判決として、2009年現在、1973年の長沼ナイキ事件札幌地方裁判所判決、2008年4月17日のイラク派遣事件の名古屋高等裁判所判決、の2例があるが、いずれも下級審の判決である。
  10. ^ 佐々淳行の次男が通っていた小学校の日教組組合員の女教師が、父親が警察官・自衛官である生徒を立たせて「この子達の親は悪人です!」と吊し上げた。佐々は激怒し、教師は家庭訪問を行ったが、その席で反省の弁は無く、自民党や自衛隊、警察を口汚く罵るばかりであったが、教育委員会に訴え出て免職させると佐々が言うと、教師は一転して土下座して謝罪しはじめた。この際、この教師は「日教組の組織をあげて戦う」と発言したという[131]
  11. ^ 産経新聞社会部次長大野敏明は、1996年2月2日付産経新聞東京夕刊において、「自衛隊員の息子として教師から虐めを受け、登校拒否になった」「同じく自衛官の息子だった友人は内申書の評価を下げられた、親の職業を言いたがらない者もいた」と述べている。
  12. ^ 最も被害の大きかった広島県では、土砂崩れや土石流が多発して死者・行方不明者が31人に上った。6月29日の夕方から被害が拡大しはじめ、死者・行方不明者が続々と確認される中、20時の時点で自衛隊から広島県に対して災害派遣要請の必要性の確認が行われた。これを受け広島県は広島市の意向を確認したが、広島市は自衛隊の派遣は必要ないとして断っている。一夜明けた30日、被害はさらに拡大。結果、6月30日午前4時の時点で広島市は県へ災害派遣要請を行った。産経新聞は1999年7月1日の記事で『秋葉忠利・広島市長は「何かできなかったかという思いはある。教訓として生かしたい」と述べたそうだが、冗談ではない。その能力を十分に持っている自衛隊を活用する気がなかったとしか思えない。自分のイデオロギーのために広島市民の生命をないがしろにした、重大なる「人災」と言っても過言ではないだろう』と批判した。この件では、広島市が対策に忙殺されており、広島県も災害対策本部の設置が遅れ、情報を消防庁に送ることが遅滞していたため、国土庁総理大臣官邸に連絡することが出来ないまま時間が経過していた。災害派遣要請の決め手となる被害地域の航空写真が広島市消防局長の手元に届いたのは30日午前零時であり、その4時間後には広島県知事に対して自衛隊派遣要請が行われている[133][134][135]

出典

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