経済産業省 概説

経済産業省

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/24 00:13 UTC 版)

概説

経済産業省設置法3条が定めた任務である「民間の経済活力の向上及び対外経済関係の円滑な発展を中心とする経済及び産業の発展並びに鉱物資源及びエネルギーの安定的かつ効率的な供給の確保を図ること」を達成するため、マクロ経済政策産業政策、通商政策、貿易管理業務、産業技術政策、流通政策、エネルギー政策などを所管する。

1949年(昭和24年)5月25日から2001年(平成13年)1月5日まで通商産業省つうしょうさんぎょうしょう: Ministry of International Trade and Industry、略称: MITI日本語略称: 通産省つうさんしょう)が設置されていたが、2001年(平成13年)1月6日中央省庁再編によって、通商産業省を改組及び改称する形で経済産業省が設置された。

前身の通産省は、かつては日本経済ないし「日本株式会社」の総司令塔たる「経済参謀本部」として高度経済成長の牽引役とされた。海外においても「Notorious MITI」[注釈 2]ないし「Mighty MITI」[注釈 3]と呼ばれたように、その名は日本官僚の優秀さの代名詞として広く轟いていた[5][6]。その持てる許認可行政指導をあまねく駆使し、さらに政府系金融の割り当て融資財政投融資)、予算手当て、補助金などを力の源泉として主に産業政策を掌り、のみならず通商貿易技術革新に応じた科学技術開発に加え、特許エネルギー政策、中小企業政策など幅広い権限を保持し、日銀政策委員会にも複数委員を送り出すなど事実上金融政策にも関与してきた。

しかし、日本の高度成長期が終わると、幅広い権限を保持する割に他の省庁に比して許認可行政や補助金行政ができないことから、この省では否応なしに単発の政策アイディアで勝負せざるを得なくなってきている[7]。毎年五月六月頃から様々な新政策のアドバルーンを打ち上げてくる[7]。このため、財務省が財政ないし予算査定、税制を通して、依然として広く政策決定に関与する「総合官庁」であるのに対して、経済産業省はほとんどの産業を所管する「行政のデパート」であるにしても「限定された総合官庁」であるとも評されている[8]

経産省(通産省)のなかで選ばれた一部の中堅官僚は、世界各国の日本貿易振興機構(JETRO=ジェトロ)を経由した産業調査員[注釈 4]として各種調査活動に従事している。

通産省・経産省は、自由な気風や業界との交流の多さも後押しし、実業方面など経済界に人材を数多く輩出してきた。他方、通産省時代は政治家を出せない役所とも言われており、戦前の商工省出身では岸信介椎名悦三郎がいたものの、戦後の通産省に在籍した人物としては林義郎が目立つくらいで大蔵省や旧内務省系の出身者と比べて見劣りがした。しかし、80年代頃から若手の通産官僚の政界入りが相次ぎ、現在の国会では党派を超えた一大勢力となっている[9]

また、大分県知事の平松守彦(在任1979~2003年)以降、都道府県知事にも通産省・経産省出身者が次第に増え、旧内務省の流れを汲み、伝統的に多くの知事を輩出してきた総務省(旧自治省)に次ぐ勢力になっており[10][11]、2020年7月現在、全国の都道府県知事のうち8名が経済産業省出身である。経産省出身者の都道府県知事が増えた理由について、経産省内では「企業誘致に通産・経産省時代に培った企業人脈が生きている。産業振興による税収増への期待もあるのだろう」と分析しているが、対する総務省内からは「経産省は規制緩和で仕事が減り、知事志向が強まっているのでは」と皮肉る声も出ている[10]

経済産業省では、近年、規制権限が縮小傾向にあり、地域経済振興に活躍の場を求めているという事情もある[12]。また経済産業省への移行後は内閣府などとともにマクロ経済政策を担う官庁として重要な役割を果たすようになってきた。


注釈

  1. ^ 「民間の経済活力の向上及び対外経済関係の円滑な発展を中心とする経済及び産業の発展並びに鉱物資源及び|エネルギーの安定的かつ効率的な供給の確保を図ること」(経済産業省設置法第3条)
  2. ^ ノートリアス・ミティ、悪名高い通産省
  3. ^ マイティ・ミティ、力強い通産省
  4. ^ いわゆる「産調」
  5. ^ 法律に基づく命令を含む。
  6. ^ 特別会計に関する法律第196 条の規定による登録免許税の納付の確認並びに課税標準及び税額の認定の事務に要する経費に充てるため必要な財源の一般会計からの繰り入れ。
  7. ^ 国の予算を所管するすべての機関である。なお人事院は予算所管では内閣に属するのでここにはない。

出典

  1. ^ 国会、裁判所、内閣、内閣府ほか11省等 2021年1月8日閲覧
  2. ^ a b 行政機関職員定員令(昭和44年5月16日政令第121号)(最終改正、令和3年3月31日政令第78号) - e-Gov法令検索
  3. ^ a b c 令和3年度一般会計予算 (PDF) 財務省
  4. ^ 経済産業省 コトバンク 2021年3月27日閲覧。
  5. ^ Vogel, Ezra Feivel (1979) Japan As Number One: Lessons for America, Cambridge: Harvard University Press. / エズラ・ボーゲル広中和歌子・木本彰子翻訳 『ジャパン・アズ・ナンバーワン―アメリカへの教訓』(TBSブリタニカ, 1979年)では通産省を行政の中心に描いている。「ジャパンバッシング」も参照。
  6. ^ Johnson, Chalmers A. (1983) Miti and the Japanese Miracle: The Growth of Industrial Policy, 1925-1975, Stanford Univ Press. / チャルマーズ・ジョンソン矢野俊比古監訳 『通産省と日本の奇跡』(TBSブリタニカ、1982年)
  7. ^ a b 大宮知信 『世紀末ニッポンの官僚たち』(三一書房、1991年) P54~
  8. ^ 川北隆雄 『通産省』(講談社現代新書、1991年3月) P110~
  9. ^ 八幡和郎 『さらば!霞が関』(1998年、PHP)
  10. ^ a b 旧通産・旧自治「2強時代」…官僚出身知事は6割超す - ウェイバックマシン(2013年12月14日アーカイブ分) 読売新聞オンライン 2007年4月9日
  11. ^ (2015統一地方選)現職9人、官僚出身 知事選立候補、4人が4選目指す[リンク切れ] 朝日新聞デジタル 2015年3月31日
  12. ^ 産経新聞 2015年4月13日
  13. ^ 松本清張『現代官僚論』(1963 - 1966年、文藝春秋新社)より一部引用抜粋。
  14. ^ 大臣初閣議後記者会見の概要 平成13年1月6日(土)(2012-3-6アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
  15. ^ 経済産業省商務情報政策局商務流通保安グループ「【事務連絡】経済産業省 産業保安各課の組織移行について (PDF) 」2012年9月19日
  16. ^ a b 経済産業省設置法(平成11年7月16日法律第99号)(最終改正:令和2年6月12日法律第49号)
  17. ^ 経済産業省組織令(平成12年6月7日政令第254号)」(最終改正:令和2年9月16日政令第286号)
  18. ^ 経済産業省組織規則 (平成13年1月6日経済産業省令第1号)」(最終改正:令和2年9月16日経済産業省令第75号)
  19. ^ 中小企業庁設置法 (昭和23年7月2日法律第83号) (最終改正:平成26年6月13日法律第67号))
  20. ^ 独立行政法人一覧(令和3年4月1日現在) (PDF)”. 総務省. 2021年4月16日閲覧。
  21. ^ 所管府省別特殊法人一覧(令和3年4月1日現在) (PDF)”. 総務省. 2021年4月16日閲覧。
  22. ^ 特別の法律により設立される民間法人一覧(令和3年4月1日現在:34法人) (PDF)”. 総務省. 2021年4月16日閲覧。
  23. ^ 経済産業省所管の特別の法律により設立される法人について 経済産業省
  24. ^ a b 令和3年度特別会計予算 (PDF) 財務省
  25. ^ a b 一般職国家公務員在職状況統計表(令和2年7月1日現在)
  26. ^ 経済産業省定員規則(平成13年1月6日経済産業省令第4号)」(最終改正:令和3年3月31日経済産業省令第35号)
  27. ^ 令和元年度 年次報告書(公務員白書) 「第1編第3部第6章:職員団体 - 資料6-2;職員団体の登録状況。2020年3月31日現在。
  28. ^  令和3年1月1日現在:53統計 (PDF)
  29. ^ 「2020年版不公正貿易報告書」及び「経済産業省の取組方針」
  30. ^ a b 経済産業省大臣官房情報システム厚生課厚生企画室「経済産業省庁舎の管理・運営業務民間競争入札実施要項(案) (PDF) 」(パブリックコメント 経済産業省庁舎の管理・運営業務 民間競争入札実施要項(案)に関するご意見の募集について 案件番号595210026) 電子政府の総合窓口e-Gov、2010年9月
  31. ^ 官庁営繕>経済産業省総合庁舎 国土交通省大臣官房官庁営繕部、2015年5月4日閲覧。
  32. ^ 経済産業省 幹部名簿/METI Officials List 2020/7/21 (PDF) 経済産業省
  33. ^ a b 森永卓郎 (2020年10月18日). “経産省、世紀の大失策…無茶苦茶なコロナ対策のせいで、日本は衰退へ もはや通産省時代の栄光にすがるのみ”. 現代ビジネス. 講談社. 2020年10月19日閲覧。
  34. ^ 日刊ゲンダイDIGITAL (2020年6月21日). “古賀茂明氏が経産省と電通の闇をズバリ指摘「元凶は3チャラ政治」”. @niftyニュース. 2020年8月6日閲覧。
  35. ^ やじうまWatch もはや風前の灯、毎月最終金曜日の「プレミアムフライデー」このまま自然消滅か?”. INTERNET Watch (2020年4月27日). 2020年8月6日閲覧。
  36. ^ a b 高辻成彦 (2020年6月15日). “元経産省職員が解説「霞が関が"丸投げ委託"を続ける根本原因」 なぜ電通との取引を優先するのか”. プレジデントオンライン(一部改変引用). プレジデント社. 2020年7月18日閲覧。
  37. ^ 実際には、国土交通省といわず、財務省外局国税庁(ないし日本税理士会連合会)を利用すれば、電通やパソナなどに委託するよりはるかに安全でスムーズに業務が行えたはずで、持続化給付金業務に適しているとは決して言えない電通などがうけとった769億円の事務委託費は、本来まったく不要なものであった。しかし、自分の縄張りを他省庁に取られることになるので、これは絶対にやらない…などと指摘されている(元国税が暴露。電通「中抜き」問題と官僚天下り問題との深い関係”. MAG2NEWS(一部改変引用). Gooニュース (2020年6月18日). 2020年11月19日閲覧。
  38. ^ 桐山純平、森本智之、皆川剛、大島宏一郎 (2020年6月26日). “「持続化給付金」再委託問題 浮かび上がった4つの論点とは”. 東京新聞(一部改変引用). 東京新聞社. 2020年8月24日閲覧。
    桐山純平 (2020年8月19日). “電通への再委託額は計1415億円 過去6年間で72件”. 東京新聞. 東京新聞社. 2020年8月24日閲覧。
  39. ^ 箱谷真司、新宅あゆみ、高木真也 (2020年7月26日). “テーマ特集:経産省の民間委託 民間委託で丸投げ、中抜き…経産省の独自ルールに問題か”. 朝日新聞デジタル. 朝日新聞社. 2020年8月1日閲覧。
  40. ^ 蛇足として、官界や大企業などでは、政策の間違いを間違いと認めない、認められない「無謬性神話」が蔓延っている点も従来より指摘されている(室伏謙一 (2019年5月28日). “【室伏謙一】霞ヶ関、永田町に蔓延る「無謬性の神話」が日本をダメにする”. 「新」経世済民新聞. 2020年11月19日閲覧。
    おときた駿 (2015年10月18日). “なぜ政治・政策はゆっくり・少しずつしか変わることができないのか? -官僚の無謬性神話-”. ハフィントンポスト. 2020年11月19日閲覧。
  41. ^ 三沢耕平 (2020年10月13日). “一般社団に支出1.3兆円、最多は電通系3708億円 支出元は経産省突出 15〜18年度予算”. 毎日新聞. MSNニュース. 2020年10月19日閲覧。
  42. ^ 経産省キャリア、省内で覚醒剤使用か 注射器を押収”. 朝日新聞 (2019年5月9日). 2020年12月5日閲覧。
  43. ^ 元経産省キャリアに猶予判決 覚醒剤使用で東京地裁判決”. 朝日新聞 (2019年9月11日). 2020年12月5日閲覧。
  44. ^ 阿曽山大噴火 (2019年8月20日). “文科省キャリア、覚せい剤事件。官僚を堕落させた省内の陰湿な職場イジメ【連載】阿曽山大噴火のクレージー裁判傍聴(4)”. FINDERS. 2020年12月5日閲覧。
  45. ^ 2018年年末には外務省外務省#国内問題や不祥事等参照)、2019年5月28日には文部科学省でも同種の薬物事件が起きた(文部科学省#不祥事や疑惑等参照)
  46. ^ 国会内の女性トイレで盗撮、経産省職員が犯行認める”. 東京新聞 2021年6月25日 18時33分. 2021年6月27日閲覧。
  47. ^ 経産省職員”盗撮”認める 国会トイレで…”. 日テレNEWS24 2021年6月25日 17:42. 2021年6月27日閲覧。
  48. ^ “コロナ対策給付金を詐取容疑、経産省キャリア2人逮捕”. 朝日新聞. (2021年6月25日). https://www.asahi.com/amp/articles/ASP6T5QW5P6TUTIL02V.html 2021年7月24日閲覧。 
  49. ^ 「相談してやった」 経産キャリア2人容疑認める―コロナ給付金詐取・警視庁”. 時事通信 2021年06月27日14時09分. 2021年6月27日閲覧。
  50. ^ 経産省キャリア2人を再逮捕 詐欺容疑、総額1千万円超”. 2021-07-19. 2021年7月24日閲覧。






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