糸魚川静岡構造線 地震活動歴と将来の活動

糸魚川静岡構造線

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/18 15:58 UTC 版)

地震活動歴と将来の活動

地震活動との関連性

古文書などの歴史上に残る活動記録が少なく、「内陸地震のため海溝型プレート境界地震による津波のような特徴的な痕跡が残らない」、「痕跡の由来が地震なのか気象現象による物なのかの判別が困難」などの理由から活動歴は不明点が多い。

多くの組合せの中から[31]「北部と中部」、「北部と中北部」、「北部と中部」など可能性が高いと考えられる幾つかの組合せの連動地震が想定されている。一方、1970年代から2000年代までに行われた歴史地震の調査結果からは、各々の断層の変位速度と活動歴には明瞭な違いがあり[21]、断層群毎に異なった活動間隔と変位速度で活動をしているとされている[32]。なお過去の地震活動で、これらの断層が連動して巨大地震を起こしたとする証拠は見つかっていない[24]が、遠田(2009)は証拠が見つかっていないだけで、発生しなかった証拠ではないとしている[32]

歴史に記録されている最古の地震は、北部区間での762年の小谷付近 M7.0 以上と考えられている[33]地震調査研究推進本部が発表している2016年から30年以内の地震発生確率は、北部区間で M7.7 程度が0.008-16%、中北部区間でM7.6程度が13-30%、中南部区間で M7.4 程度が0.8-8%、南部区間で M7.6 程度がほぼ0-0.1%であり、南部以外の3区間はいずれも「高い」に位置づけられている[34]。1847年の善光寺地震以降は20年から25年周期の活動がみられるが日本海東縁の地震活動と密接な関連がある[35]

線上で発生した主な地震

歴史に残る活動としては、繰り返しマグニチュード5-7 程度の地震の発生が見られる。

(出典:気象庁松代地震観測所資料[36]および理科年表による(前震、余震は除外。震源域の地名は現在のもの))

  • 762年 美濃・飛騨・信濃 - M7.0以上
  • 841年 松本、東経138.0° 北緯36.2°付近 - M6.5
  • 1714年4月28日 震源は白馬村付近、信濃小谷地震。東経137.85° 北緯36.7°、死者100。善光寺でも被害有り - M6 程度
  • 1725年8月14日 高遠・諏訪 東経138.1° 北緯36.0°付近 - M6.0 - 6.5
  • 1791年7月23日 松本市付近 東経138.0° 北緯36.2° - M6.7 程度 松本城で塀が壊れる。
  • 1855年3月18日 飛騨白河 東経136.9° 北緯36.25° - M6.7
  • 1858年4月23日 信濃北西部、大町市と白馬村の境界付近 東経137.9° 北緯36.6° - M5.7
    飛越地震(4月9日)で生じた常願寺川河道閉塞部の決壊による洪水の原因。
  • 1890年1月7日 15時43分頃。生坂村から長野市大岡樋ノ口沢付近、東経138.0° 北緯36.5° - M6.2
  • 1898年 山梨県身延町付近を震源 - M5.9
  • 1918年11月11日 『大町地震』2時59分 - M6.1 / 16時04分 - M6.5、震源は大町市南鷹狩山付近、東経137.9° 北緯36.5° 1858年の地震と区別するため、大正大町地震とも呼ばれる。
  • 1986年12月30日 9時38分 - 旧美麻村小川村信州新町の境界付近で糸魚川静岡構造線に長野盆地西縁断層及び千曲川構造線のそれぞれの延長がぶつかる地域において発生 - M5.9
  • 2011年6月30日 8時16分 - 長野県中部地震 長野県松本市 東経137°33.4′ 北緯35°49.5′ - M5.4
  • 2014年11月22日 22時8分 - 長野県神城断層地震[37][38]

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    2.地震の伝わり方と地球内部の動き
  3. ^ 糸魚川ユネスコ世界ジオパーク 糸魚川-静岡構造線
  4. ^ 糸魚川ジオパーク
  5. ^ 地球科学界唯一の文化勲章受章者 矢部長克 東北大学総合学術博物館
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  40. ^ 浅野陽一・武田哲也・行竹洋平・三好崇之・小原一成・笠原敬司、「糸魚川-静岡構造線断層帯における観測網整備によって明らかになった地震波速度構造と地震活動」『防災科学技術研究所 研究報告』 No.77, p.31-47, 2010
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