箱の中の気体 具体例

箱の中の気体

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/28 05:28 UTC 版)

具体例

以下ではいくつかの具体例を示す。

質量のあるマクスウェル=ボルツマン粒子

この場合は、

エネルギー分布関数を積分しNについて解くと、

これらを元々のエネルギー分布関数に代入すると、

これは古典的なマクスウェル=ボルツマン分布から得られる結果と同じである。 その他の結果は理想気体を参照。

質量のあるボース=アインシュタイン粒子

この場合は、

ここで  

エネルギー分布関数を積分しNについて解くと粒子数が得られる。

ここでLis(z) は多重対数関数、Λは熱的波長である。 多重対数関数の項は正かつ実でなければならず、これはが0から1に増加すると多重対数関数の項は0からζ(3/2)になることを意味する。 温度が0まで下がっていくとΛは増加していき、最終的にはz=1で臨界値Λc に行き着き、次のようになる。

ここでリーマンゼータ関数を表す。 Λ=Λcでの温度は臨界温度である。 臨界温度以下では、上記の粒子数についての方程式は解を持たない。 臨界温度はボース=アインシュタイン凝縮が起こり始める温度である。 上述の通り、連続体近似の問題点は基底状態が無視されていることである。 しかし上記の粒子数についての方程式は、励起状態のボース粒子の数はかなりうまく表現していることがわかり、よって

ここで付け加えられた項は基底状態の粒子数である(基底状態エネルギーは無視されていた)。 この方程式は温度0まで成立する。 その他の結果はボース気体を参照。

質量のないボース=アインシュタイン粒子(黒体放射など)

質量のない粒子では、前述した質量のない粒子についてのエネルギー分布関数を用いなければならない。 この関数を振動数分布関数に変換すると便利である。

ここでΛは質量のない粒子の熱的波長である。 このときエネルギースペクトル密度(単位体積あたり単位振動数あたりのエネルギー)は、

その他の熱力学的パラメータは、質量のある粒子の場合と同じように導出される。 たとえば振動数分布関数を積分し、Nについて解くと粒子数が得られる。

最も一般的な質量のないボース気体は黒体における光子気体である。 黒体の空洞を箱と考えると、光子は壁によって断続的に吸収・再放出される。 この場合、光子の数は保存されない。 ボース=アインシュタイン統計の導出において粒子数の制限が取り除かれると、これは化学ポテンシャル(μ)が0である状況と実質的に同じである。 さらに光子は2つのスピン状態をもつので、fの値は2である。 このときエネルギースペクトル密度は、

これはまさに黒体放射のプランクの法則におけるエネルギースペクトル密度である。 この手続きを質量のないマクスウェル=ボルツマン粒子で実行すると、プランクの法則を高温や低密度で近似したヴィーンの放射法則が得られる。

ある状況では、光子を含む反応により光子数が保存される(たとえば発光ダイオードや「白い」空洞)。 これらのケースでは、光子分布関数は非ゼロ化学ポテンシャルを含んでいる(Hermann 2005)。

その他の質量のないボース気体として、熱容量におけるデバイ模型がある。 このとき箱の中のフォノン気体を考えるが、フォノンの速度は光速より小さく、箱の各軸で波長に最大値が存在する点でフォトンの場合とは異なる。 これは相空間にわたる積分を無限の範囲まで実行することができないことを意味し、多重対数関数の代わりにデバイ関数で表されるようになる。

質量のあるフェルミ=ディラック粒子(金属中の電子など)

この場合、以下が適用される。

エネルギー分布関数を積分することで、

ここでもLis(z)は多重対数関数で、Λはド・ブロイの熱的波長である。 そのほかの結果はフェルミ気体を参照。




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