確信犯 補足 - ドイツ語からの翻訳

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確信犯

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/24 01:00 UTC 版)

補足 - ドイツ語からの翻訳

ドイツ語の Überzeugung には「信念」「信条」の意味がある。中文圏では「信条犯」「信仰犯」といった字句で叙述する論文がみられる[11]

ラートブルフの文脈でÜberzeugungsverbrecherが登場するのは1923年の論文「確信犯罪者(der Überzeugungsverbrecher)」[12]であり、やがてのちに彼の価値相対主義のなかで確信行為者としてより一般化された。

ラートブルフの作成した刑法草案(1922年)の第71条は「行為者の決定的動機が、道徳上、宗教上又は政治上の信念にもとづき、その行為をなすべき義務ありと思ったという点に存するとき」には、そのような動機から行動に出た者を確信犯人として扱い、一般の不道徳な犯罪人とは異なった取り扱いをするというものであり、これはラートブルフの相対主義的世界観の必然的な帰結の集約であり、今日からみれば古典的な確信犯人の概念と言える[13]

ラートブルフは1920年から1924年までドイツ社会民主党の議員としてドイツ連邦議会の議員をつとめ1921年から23年にかけてシュトレーゼマン内閣の法務大臣を務め、1923年の刑法改正案において死刑廃止論の重要な根拠の一つとして確信犯罪の論点を提示した。しかしラードブルフの確信行為者の理論そのものは貫徹せず、教育刑や犯罪者の社会的更生の必要性に合意が得られたものであった。

なお、第二次大戦後の1949年にはドイツにおける死刑制度の廃止が実施されているが、ドイツ刑法典に確信行為者の法理は反映されておらず、テロリストは「国家との戦争状態に立っていることを盾に犯罪としてではなく捕虜として扱われることを欲していよう」とも「倫理的に等しい立場に立っている敵対者ではなく1人の低俗な犯罪者」として扱われる。ラートブルフの提示した確信的行動者の問題は、民主主義における内心の自由、良心の自由、思想信条の自由を含み、核心において抵抗権の問題として現代なお未解決の論点である[14]。ラートブルフの抵抗権論はケルゼンとともに宮沢俊義に影響を与えているとされる[15]

日本語ではÜberzeugungsverbrechenを「確信犯罪」とでも訳すところ「確信犯」が定着している。とくに法律を話題にしていない局面で、故意に酷いことをおこなう人物を非難する成句として用いられる場合がある[4]。犯罪に該当しない行為に対しても確信犯と呼ぶことがある[16]


注釈

  1. ^ ここでは「慣用句等の意味の理解(において)意味を誤って理解(すること)」を指す[4]

出典

  1. ^ 「明鏡 第2版」(平成22年・大修館書店)「確信犯」②<俗>の解説による。
  2. ^ 「日本国語大辞典 第2版」(平成12~14年・小学館)「確信犯」②の解説による。
  3. ^ a b 「確信犯」の意味”. 文化庁月報 連載「言葉のQ&A」. 文化庁 (2012年5月). 2020年6月29日閲覧。
  4. ^ a b c 平成14年度(2002年度)「国語に関する世論調査」の結果について”. 文化庁 (2003年6月). 2015年6月15日閲覧。
  5. ^ 過失犯に対置される用語で、罪を犯す意思をもってした行為によって成立する犯罪のこと。殺人犯、窃盗犯など。精選版 日本国語大辞典「故意犯」による。
  6. ^ ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「確信犯」、平凡社百科事典マイペディア「確信犯」[1]
  7. ^ 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)「確信犯」名和鐵郎
  8. ^ a b 「確信犯」の意味 - 言葉のQ&A - 文化庁月報 平成24年5月号(No.524)”. 文化部国語課. 文化庁 (2012年5月). 2015年6月15日閲覧。
  9. ^ 自由国民社法律用語辞典P2759「確信犯」[2]
  10. ^ 川端博ユストゥス=クリュンペルマン「錯誤の刑法上の取り扱い」」『法律論叢』第52巻第6号、明治大学法律研究所、1980年3月、125-145頁、ISSN 0389-5947 
  11. ^ [3][リンク切れ][4][リンク切れ][5][リンク切れ]
  12. ^ アルトゥールカウフマン & 上田健二 2008, p. 66
  13. ^ 宮沢浩一「ラートブルフの刑法論 (二・完)」『法學研究 : 法律・政治・社会』第41巻第9号、慶應義塾大学法学研究会、1968年9月、25頁、ISSN 0389-0538 
  14. ^ アルトゥールカウフマン & 上田健二 2008, p. 75
  15. ^ 永尾孝雄「法と正義 : 思想史的考察」『アドミニストレーション』第6巻第2-3号、熊本県立大学総合管理学会、2000年2月、72-88頁、ISSN 2187-378X 
  16. ^ 例えば
    大原康男「"確信犯"吉田茂の靖国参拝を見習え--総理大臣の靖国参拝に関する一考察」『正論』、産経新聞社、2004年9月、62-71頁、NAID 40006322656 
    「絶好調マツモトキヨシは「今がピーク」だ--社長の「確信犯的経営」に敵も多い」『月刊テ-ミス』第13巻第2号、テ-ミス、2004年2月、60-61頁、NAID 40006072114 
    宮本岳志「郵政ぐるみ選挙を問う--"確信犯"小泉首相の責任は免れない」『前衛』、日本共産党中央委員会、2001年11月、47-56頁、NAID 40002200464 
    「4色印刷ならではの版ズレ確信犯 (特集 福田美蘭(みらん)名画をわれらに!) -- (複製「名画」花ざかり)」『芸術新潮』第50巻第8号、新潮社、1999年8月、12-15頁、NAID 40000935805 
    佐々木ベジ「<敗軍の将,兵を語る>佐々木ベジ氏(フリ-ジア・マクロス前社長)「確信犯」でバブルに賭けたが…」『日経ビジネス』、日経BP社、1997年10月27日、115-117頁、NAID 40002806733 


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