漸化式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/23 14:42 UTC 版)
安定性
高階線型漸化式の安定性
階数 d の線型漸化式
は特性方程式
を持つ。この漸化式の再帰性が(反復適用によって一定の値に漸近的に収束するという意味で)安定であるための必要十分条件は、固有値(つまり特性方程式の根)の全てが(実数か複素数かに関わらず)1 よりも小さい絶対値を持つことである。
一階線型漸化式の安定性
状態ベクトル x, 遷移行列 A をもつ一階の行列係数差分方程式
で、x が定常状態ベクトル x∗ に漸近的に収斂するための必要十分条件は、遷移行列 A の全ての固有値が(それが実数か複素数かに関わらず)1 より小さい絶対値を持つことである。
一階非線型漸化式の安定性
非線型一階漸化式
を考える。この漸化式は(不動点 x∗ の十分近くにある点は不動点 x∗ に収斂するという意味で)局所安定であるための必要十分条件は、x∗ の近傍で f の傾きの絶対値が 1 よりも小さいこと、つまり
が成り立つことである。非線型漸化式は複数の不動点を持つことができ、ある不動点は局所安定だが別の不動点は局所安定でないということも起こりうることに注意。f が連続なら隣接するふたつの不動点がともに局所安定となることはできない。
非線型漸化式は k > 1 なる k を周期とするサイクルをもつこともありうる。そのようなサイクルが(測度正の初期条件集合を吸引するという意味で)安定となる十分条件は、f の k 回合成
が上記と同様の判定条件
に従って局所安定となることである。ここで x∗ はサイクルの任意の点。
カオス的漸化式においては、変数 x がある有界領域に留まるが不動点にも吸引的サイクルにも収束しない。そのような方程式において任意の不動点やサイクルは不安定である。 ロジスティック写像、二進変換、テント写像なども参照。
- ^ Gilson, Bruce R. (2009). The Fibonacci Sequence and Beyond. CreateSpace. pp. 16 ff.. ISBN 978-1449974114
- ^ Discussion on s
- ^ Partial difference equations, Sui Sun Cheng, CRC Press, 2003, ISBN 9780415298841
- ^ Chiang, Alpha C., Fundamental Methods of Mathematical Economics, third edition, McGraw-Hill, 1984.
- ^ Papanicolaou, Vassilis, "On the asymptotic stability of a class of linear difference equations," Mathematics Magazine 69(1), February 1996, 34-43.
- ^ Sargent, Thomas J., Dynamic Macroeconomic Theory, Harvard University Press, 1987.
- 漸化式のページへのリンク