滑空 ソアリング(滑翔)

滑空

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/06/13 04:44 UTC 版)

ソアリング(滑翔)

グライダーは、機体の沈下速度より強い上昇気流の中では、位置エネルギーを獲得しながら何時間も空中に留まることが出来る[12]。通常の上昇気流の源は下記のものである。

  • サーマル :暖かい空気の上昇気流
  • 斜面上昇 :風が丘の面に吹き付け、上に吹き上げられるときに発生
  • ウエーブ(山岳波)の上昇 :大気中の定常波、流れの表面の漣のようなもの

グライダーは、斜面上昇では、その地形から600 m以上の高さまで上昇することは、ほとんど無い。サーマルでは、気候と地形にもよるが、平野では3,000 mに達し、山地ではもっと高く上昇する[13]。ウエーブ(山岳波)の上昇では、グライダーが15,447 mまで上昇した[14]

雲の中のような、コントロールできない空域まで上昇することを許す国もあるが、多くの国の場合は雲底に達する前に上昇を止めなければならない。

サーマル(熱上昇気流)

サーマルは、太陽に温められた地表の上で形成される上昇気流である[15]。空気が十分な水分を含んでいる場合は、上昇中に凝縮して積雲を作る。サーマルに遭遇したとき、パイロットは中に留まれるように旋回飛行を行い、高度を稼ぎ、それから脱出して次のサーマルに向かう。これが、いわゆるサーマリング(サーマル飛行)である。サーマルの上昇率は、条件によるが、通常は1秒に数 mである。

サーマルは風や地形によっては列状に形成される場合もあり、そのときは雲の列が出来る。このような場合は、上昇を続けながら直線飛行をすることが出来る。

空気の湿度が低い場合、あるいは気温の逆転によって暖かい空気が含んでいる水分が凝縮するほどの高度まで上昇しない場合は、サーマルが積雲を形成しない。パイロットが雲や砂煙(ダスト・デビル)などの目印抜きでサーマルを見つけるには、精密な昇降計、つまりグライダーの垂直の飛行速度を敏速に示す計器を使って、技能と運の限りを尽くさなければならない。

サーマルが見つかる場所の代表は、街の上・耕されたばかりの畑の上・アスファルト道路の上などといわれるが、どの様な地表の状態とも結びつかない場合もある。時として、火事や発電所の煙突の上にサーマルが発生する。

サーマルは熱せられた空気の上昇であるから、中緯度地方での利用期間は春から夏の終りまでの間であり、冬は弱い。斜面上昇やウエーブの上昇は寒い時期も有効である。

斜面上昇気流

斜面上昇気流は、丘の側面の上昇気流を利用するものである。斜面が太陽に面しているときは、斜面上昇はサーマルによって増強される[16]

定常風が吹き続ける斜面では、限りなく滞空が可能であり、滞空時間の記録挑戦の限界は疲労の限界への挑戦という危険な行為と同じである[17]

ウエーブ(山岳波)の上昇気流

山に発生する空気の波による強力な上昇 / 下降気流は、1933年にグライダー・パイロットのワォルフ・ヒルト(Wolf Hirth)によって発見された[18]。この波(ウエーブ)は極めて高い高度に達するので、利用するパイロットは酸欠を防ぐために酸素吸入を必要とする。

ウエーブ(山岳波)の上昇気流は、風と直角に長く横たわるレンズ雲を発生する[19]。2006年8月29日にアルゼンチンのエル・カラファテ(El Calafate)上空で樹立された現在の高度記録15,453 mは、ウエーブ上昇気流を利用したものである。パイロットは、スティーブ・フォセット(Steve Fossett)とアイナー・エネヴォルドソン(Einar Enevoldson)で、耐圧服を着用した[20]

また、現在の距離の世界記録3,008 km(2003年1月21日樹立)[21]もクラウス・オールマン(Klaus Ohlmann)が南アメリカのウエーブを利用した飛行である。

まれに生ずるウエーブ現象として「モーニング・グローリー」があり、巻雲が強力な上昇気流を発生する。オーストラリアカーペンタリア湾付近などで、春季に利用できる[22]

その他の上昇気流

2つの気団がぶつかる境界をコンバージェンス・ゾーン(Convergence Zone, 収束帯)と言い、海風が吹き込む地帯、あるいは砂漠地帯に出来る[23]。海風の場合、海から来る冷たい空気が陸上の暖かい空気にぶつかり、下にもぐりこんだ境界は浅い寒冷前線のようになる。この境界に沿ってグライダーを飛ばせば、斜面上昇と同じように高度を獲得出来る[24]。コンバージェンス・ゾーンは長い距離にわたって生じるので、直線飛行をしながら高度を稼ぐことが出来る。

ダイナミック・ソアリング」というテクニックも利用できる。これは水平速度が違う気団の境界を往復しながら力学的エネルギーを稼ぐ方法である。このように風速傾斜の大きい場所は通常は地表に近く、ミズナギドリなどの海鳥が波間を使ってこの飛行方法を行っているが、航空機であるグライダーが安全に利用することは出来ない。

動画 https://www.youtube.com/watch?v=uMX2wCJga8g

RC(ラジオ・コントロール)グライダーでは尾根を使ったダイナミック・ソアリング[25]によるスピード競技が行われている。地面効果#動物を参照。


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