滑空 滑空の概要

滑空

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/06/13 04:44 UTC 版)

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概要

技術的に言えば、上記の各機種はレクレーションのために滑空または滑翔(ソアリング)を行うグライダーの型式の差に過ぎず、海上の潮風の中でセールボートとウイングサーフィンが区分されているのと同じである[2]

滑翔(ソアリング)

滑翔(ソアリング)」とは、正確には、航空機が上昇気流によって高度または速度を増加する状況を指す。

本項において「滑空(グライディング)」という言葉は、グライダーのスポーツ目的の飛行だけを示す。

ソアリングを行う条件が充分に良いときには、熟練したパイロットならば、出発点から片道数100 kmの飛行を行い、帰還することが出来る。時として飛行距離は1,000 km以上に達する[3]。ただし、天候が悪化すると、どこかに着陸しなければならなくなるが、モーターグライダーならばエンジンを再始動すればそれを免れることが出来る。

グライダーパイロットの多くは単に飛行の達成感を満喫するだけであるが、競技派のパイロットは定められた周回コースの飛行を指向する。このような競技では、パイロットの飛行技術と同時に、気象条件を利用する技能が試される。

多くの国で、地区競技・全国競技が開催され、1年おきに世界滑空選手権が開催されている[4]

動力付き航空機(飛行機など)とウインチの2つが、グライダーを発航させる主要な手段である。モーターグライダーの自力発航を除き、上記及びその他の発航手段は、いずれもパイロット以外の要員の助力を必要とする。グライダークラブは飛行場と設備の区分利用と、新人の養成と、高度の安全性を維持するために設立されている。

歴史

重航空機の発達は、ジョージ・ケーリー卿の御者が飛行した1853年から、ライト兄弟に至る半世紀間に、主としてグライダーによって為された。

ヴェルサイユ条約

ただし、スポーツとしての滑空(グライディング)は、第一次世界大戦後に初めて、ヴェルサイユ条約が原因で始まったものである[5]

同条約は、ドイツに対して単座航空機の製造・飛行を厳しく制限した(ヴェルサイユ条約#軍事に関するもの)。その結果、192030年代には、世界各国の航空界が飛行機の性能向上を進めたのに対して、ドイツは効率の高いグライダーの設計や飛行の向上に努め、より遠く早く飛行するために自然力の利用を指向した。この活動は、将来の再軍備の布石として、時の政府に後押しされていた。後年、第三帝国ジュネーブ条約を破棄して第二次世界大戦準備に進んだとき、グライダーの研究と訓練は熟練した軍用機の航空要員の供給源となり、中にはエース・パイロットになった者が何人もいる。

1920年代

ドイツの第1回滑空競技は、1920年[6]ヴァッサークッペ(Wasserkuppe)で[7]、オスカー・ウルジヌス(Oskar Urusinus)の計画・指導の下に行われた。最高記録は2分間で、距離の世界記録2 kmを樹立した[6]

1930年代

10年の間に、滑空競技は国際的な行事になり、滞空時間や飛行距離は著しく向上した。1931年には、ギュンター・グレンホフ(Gunter Grönhoff)がミュンヘンからチェコスロバキアまで272 kmを飛行し、更に飛べる余裕があった[6]

1930年代には、滑空活動は世界各国に普及した。1936年夏季オリンピック(ベルリン)では、滑空はデモンストレーション競技になり、1940年(東京の予定)には正式競技になる計画であった[6]。ドイツでは、それに備えてオリンピック用のグライダーを開発したが第二次世界大戦によって中断した。

1939年までの主要なグライダーの記録は、ロシア人によって保持され、距離は748 kmに達した[6]

1940年代

1940年代、つまり第二次世界大戦中は、ヨーロッパにおける民間の滑空活動は、大部分が中断された。軍用グライダーによる作戦行動が行われたが、これらは滑翔ではなく、滑空スポーツとは無関係である。しかしながら、エーリヒ・ハルトマン(Erich Hartmann)をはじめドイツの戦闘機のエース・パイロットに、グライダー訓練の経験者が数人含まれている。

1950年代

1950年代には、多くの国々で、大勢の訓練を経たグライダー・パイロットが飛行を続けたがっており、その多くは航空技術者でもあった。彼らは、グライダーの飛行クラブと製作所を共に発足させ、その中には現在まで存続しているものもある。

この動きはグライダーと滑空活動を共に活性化し、アメリカ滑空協会のメンバー数を1,000名から現在の12,500名まで成長させた。グライダー・パイロット人口の増加・知識の拡大・技術の発展は、新記録の樹立に貢献し、戦前の高度記録は1950年までに倍増し、飛行距離1,000 kmの大台は1964年に突破された[6]

現代

ガラス繊維強化プラスチック炭素繊維強化プラスチックのような新素材は翼の平面形や翼断面を進歩させ、電子装備G.P.S.、天気予報が発達したので、従来は特別な例とされたような高い水準の飛行を、多くのパイロットが達成するようになった。2006年現在では500人ものパイロットが1,000 kmの飛行を行っている[8]

滑空スポーツの発祥の地であるドイツは、現在でも中心地であり、世界のグライダー・パイロット人口の30 %を擁し、3大グライダー・メーカーが存在する[9]。しかしながら、このスポーツは多くの国々にも取り入れられ、現在11万6,000名のパイロットが活動している[10]。これに加えて軍の教習生が存在するが、人数は不詳である。更に毎年多くの人々がグライダーの初飛行を体験している。

オリンピック競技

滑空競技は2つの理由によって、戦後になってもオリンピック種目に復活しなかった。一つ目は、戦後に残されたグライダーの機数の不足である。また、競技に使う単一の機種の選定に合意が得られなかったこともある。単一機種の指定は、新設計の発展を妨げるという意見もあった[6]

滑空競技などのエア・スポーツをオリンピック種目に復活させる提案は、F.A.I.(国際航空連盟)などの国際組織によって行われたが、一般の理解度が低いので否決されている[11]

世界滑空選手権大会

オリンピック競技に代わるものに、世界滑空選手権大会がある。第1回は、1937年にワッサークッペで開催された。第二次世界大戦以降は2年おきに開催されている[6]

同競技会には、男女を問わないオープン競技が6種目と、女性種目と2つのジュニア種目の計9種目が含まれている。


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  2. ^ Frequently asked questions about gliding (PDF)”. 2006年8月24日閲覧。
  3. ^ Gliding World Records”. 2006年12月21日閲覧。
  4. ^ Information about gliding competitions (PDF)”. 2006年8月24日閲覧。
  5. ^ History of gliding (PDF)”. 2006年8月24日閲覧。
  6. ^ a b c d e f g h Welch, Ann (1980). The Story of Gliding 2nd edition. John Murray. ISBN 0-7195-3659-6. 
  7. ^ Wasserkuppe, gliding and model gliding”. 2006年9月28日閲覧。
  8. ^ List of pilots who have flown over 1,000 km”. 2006年9月28日閲覧。
  9. ^ FAI membership summary”. 2006年8月24日閲覧。
  10. ^ FAI membership summary”. 2006年8月24日閲覧。
  11. ^ FAI the Olympics”. 2006年8月24日閲覧。
  12. ^ Visual explanation of soaring”. 2006年8月24日閲覧。
  13. ^ Mountain flying”. 2006年9月14日閲覧。
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  61. ^ Learning to glide”. 2006年9月18日閲覧。
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