清教徒 (オペラ)
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音楽的特徴
和声とオーケストレーションにおいて『清教徒』はベッリーニの最も洗練されたオペラである。これがパリの聴衆のために書かれたことの直接の結果であることは疑いない。主題の回想が非常に多いと言う点も、同じ理由に帰することができるだろう。と言うのも、この手法は当時のフランス・オペラに共通する特徴だからである。ベッリーニはまたゆったりとした時間のスケールを作り上げようとした。このことは拍をまたいだ遅い三連符がこれ見よがしに続く導入部にはっきりと見てとれる。この点においてベッリーニはワーグナーとも接点を持っていたと言える。エルヴィーラの役はロマン主義的狂気の極致を示すもので、病的な状態と言うよりも、か弱い女性の、一部は抒情的で、一部はヴィルトゥオーソ的な変容として構想されている。このような女性像はドニゼッティの『ランメルモールのルチア』に反響を見出すことになるであろう[15]。
ベッリーニはある時は独立した部分に分けられた古典的構成を取り入れ、またある時は〈規則に縛られない〉巨大な構築を思わせる構成をとっている。後者の例である『清教徒』においては幾つかの場面区切れることなく展開されるのである。さらに、彼の見事な旋律は長い労苦の末に生み出された者であり、ドラマの感情内容をより良く声に託すためにベッリーニは和声とオーケストレーションを絶えず純化してその贅肉の一切を削ぎ落しているのである[16]。
D・J・グラウトによれば「1830年代のイタリア・オペラで、ベッリーニはスタイルの純粋さ、しばしば悲歌的な憂いを含む比類のない優雅な旋律で、まったく独立した地位を占めている。彼はピアノにおけるショパンと同じくオペラにおける貴族主義者であった。ショパンに対するベッリーニの影響[注釈 4]は実際によく指摘されている。二人は旋律的なスタイルが似ているだけでなく、時にはなかなかドラマティックな表現を発揮することや、正しく演奏するためには、技術的に優れた真の理解力のある解釈者を必要とする点でも共通している。この時代のイタリア・オペラを論じる際には、すべてが歌手に依存していることを忘れてはならない。作曲者はほとんどの場合、ある特定の歌手を念頭においてパートを書いた[17]。さらに、ベッリーニの作品には、ロッシーニ、ドニゼッティの場合と同じく、しばしば合唱が現れる。特に、ベッリーニがグランド・オペラのスタイルとスケールに迫ろうと試みた『清教徒』では著しい[18]。
注釈
- ^ 主要な資料ではグランド・オペラとは分類していない。但し、『最新名曲解説全集18 歌劇1』のP378には「『清教徒』は特に彼がグランド・オペラとして書いた作品」という記述がある。
- ^ 『海賊』、『異国の女』『夢遊病の女』といったベッリーニの主要作品は既にここで上演されていた[6]。
- ^ 1835年のパレルモでは『エルヴィーラとアルトゥーロ』、1836年のローマでは『エルヴィーラ・ヴァルトン』とされた[1]。
- ^ 「ベッリーニの『清教徒』の行進曲に基づく変奏曲」(Variations on a March from Bellini's "I Puritani")と言う短い曲を残している。
- ^ このため、資料により、「幕」ではなく「部」と記載されている場合がある。
- ^ この曲はベッリーニの名作の一つに数えられ、これほど感動的な愛の歌もそう多くはない[22]。
- ^ 単独で独唱として歌われる場合もある[22]。
- ^ 本オペラのハイライトとなるソプラノの見せ場。
- ^ 有名なガエターノ・ドニゼッティ作曲の『ランメルモールのルチア』と共に知られ、華麗なコロラトゥーラ技巧と抒情性はベッリーニ特有のものとされる[24]。
- ^ これは1840年代のリソルジメントの精神を先取りするものである[25]。
出典
- ^ a b c d e スタンリー・セイディP364
- ^ a b 『ラルース世界音楽事典』P 918
- ^ 岸純信(著)、『簡略オペラ史』P65
- ^ 永竹由幸(著)、『オペラ名曲百科 上 増補版』P154
- ^ 福原信夫P378
- ^ ウィリアム ・ウィーヴァーP83
- ^ a b ウィリアム ・ウィーヴァーP94
- ^ 岸純信(解説)、『清教徒』フリードリヒ・ハイダー指揮によるDVDの解説書P9
- ^ 岸純信(解説)、『清教徒』フリードリヒ・ハイダー指揮によるDVDの解説書P11
- ^ 戸口幸策P238
- ^ a b ジョン・ウォラックP 344
- ^ 昭和音楽大学オペラ研究所 オペラ情報センター
- ^ 岸純信(解説)、『清教徒』フリードリヒ・ハイダー指揮によるDVDの解説書P7
- ^ 岸純信(解説)、『清教徒』フリードリヒ・ハイダー指揮によるDVDの解説書P8
- ^ スタンリー・セイディP367
- ^ 『ラルース世界音楽事典』P 1557
- ^ D・J・グラウトP514
- ^ D・J・グラウトP516
- ^ 河野典子P213~214
- ^ 岸純信(解説)、『清教徒』P 18
- ^ 西原稔P299
- ^ a b 福原信夫P 381
- ^ a b 岸純信(解説)、『清教徒』フリードリヒ・ハイダー指揮によるDVDの解説書P14
- ^ 福原信夫P 382
- ^ スタンリー・セイディP366
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