機殿神社 御衣奉織行事

機殿神社

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/04 16:25 UTC 版)

御衣奉織行事

毎年5月と10月の初旬、両機殿の八尋殿で皇太神宮正宮と別宮の荒祭宮での神御衣祭に供える御衣を奉織する。地元で「おんぞさん」と呼ばれるこの行事は戦国時代に中絶となり、皇大神宮の神職による形式的な祭祀のみが行なわれ、愛知県で奉織された和妙や、奈良県奈良市月ヶ瀬で奉織された荒妙などが神御衣祭に供えられていた。

大正3年5月に愛知県木曽川町(現在の一宮市木曽川町)の職人により機殿での奉織が再興されたが、地元の住民はこれを無様と感じ機織りの技術を習得し、伝承することにした。1967年昭和42年)以降、和妙は祖父らから継承された女性が奉織することになったが、荒妙は現在も男性が奉織している。松阪市は1975年(昭和50年)9月27日、和妙と荒妙の奉織を「御衣奉織行事」として無形民俗文化財に指定した。

ただし地元住民による両機殿での奉織は神御衣祭に必要な和妙36疋(正宮24疋、荒祭宮12疋)と荒妙120疋(正宮80疋、荒祭宮40疋)のうちの各1疋のみで、残りの和妙・荒妙は他に必要とされる頚玉(くびたま)・手玉(てだま)などと合わせて木曽川町と奈良市月ヶ瀬の専門の業者に奉織を委託している。

祭祀

両機殿では神御衣奉織始祭(かんみそほうしょくはじめさい)と神御衣奉織鎮謝祭(かんみそほうしょくちんしゃさい)が行なわれる。

神御衣奉織始祭

神御衣奉織始祭は奉織を始める前に清く美わしく奉織できるように祈る祭で、毎年5月と10月の1日、下機殿では午前8時、上機殿では午前9時から行なわれる。奉織作業に従事する地元住民は先だって境内の斎館で潔斎し、予め身を清める。白衣白袴を着てから御塩で清め、八尋殿の内部を清掃する。機織りの道具を準備し、御糸を納める。神職の拝礼ののちに奉織が開始される。織子は夕方に帰宅するが、神宮から参向する神職はこの祭の前日に斎館に入り潔斎し、神御衣奉織鎮謝祭まで斎館に滞在する。織子は翌2日以降の朝に出向き身を清め、白衣白袴を着て八尋殿に入り、完了するまで奉織を行なう。

神御衣奉織鎮謝祭

神御衣奉織鎮謝祭は奉織が無事に終わったことを感謝し幣帛を奉る祭りで、毎年5月と10月の13日の午前8時から両機殿神社で行なわれる。 この祭ののちに御衣を2つの辛櫃(からひつ)に納め、約20km離れた内宮まで運搬する。昭和30年代から自動車での運搬に変更されているが、それ以前は午後9時ころに出発、参宮街道を夜通し歩いて宮川を船で渡ったのちにまた歩き、外宮で仮眠し、14日の午前5時ころに内宮到着であった。警護のために衛士2名が前を歩き、権禰宜と宮掌が随行していた。

神服織機殿神社

神服織機殿神社
所在地 三重県松阪市大垣内町
位置 北緯34度34分44.8秒 東経136度36分24.7秒 / 北緯34.579111度 東経136.606861度 / 34.579111; 136.606861
主祭神 神服織機殿鎮守神
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神服織機殿神社全景
和妙の奉織

神服織機殿神社の祭神は近年は神服織機殿鎮守神とされることが多いが、服部の祖先の天御桙命(あめのみほこのみこと)と天八千々姫(あめのやちぢひめ)とする伝承がある。

和妙の奉織

和妙は神服織機殿神社境内の八尋殿で奉織される。女性の織子は毎朝8時に出勤する。白衣白袴が基本であるが、細い絹糸を見やすくするために黒い布を膝に掛ける。指先が荒れていると糸をうまく扱えず作業性が低下するため、織子は指先を荒らさないように留意する。

絹糸は現在も愛知県の三河産の赤引の糸を使用する。4本の単線維を1本の絹糸とし、36本の絹糸を1あざりとし、67あざりの縦糸で幅1尺5寸(約45cm)の和妙を織る。4 x 36 x 67で9,648本の単線維を使用することになるが、絹単線維の長さは有限であるから、糸を繋ぐ作業が必要である。糸を繋ぎ織機に縦糸を取り付けるだけで3日程度必要になるため、近年は予め専門家が繋いだ糸を使用することで奉織期間を短縮している。横糸は予め水に浸けておき、7-9本の単線維を1本として糸巻き機で巻き取ってから使用する。

4丈(約12.1m)の和妙を織るのに通常4-5日、乾燥にさらに数日を要する。乾かした和妙は箱に入れ、神御衣奉織鎮謝祭まで棚の上に安置される。




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