校正 概要

校正

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/19 06:21 UTC 版)

概要

校正は、編集の過程においては、出版すべき原稿をまとめた後、書籍雑誌などの印刷物の形で商品化する前の最終チェックにあたる。大きな出版社や新聞社では校正を専門とする部署があり、そこに所属する校正係が社の出版物の校正を全面的に請け負っている。一方で、中小の出版社などでは著者や編集者自身が校正者を兼ねていることもある。内職として在宅校正者(ホーム校正)の講座も開かれており、派遣職員やフリー校正者など業態はさまざまである。

校正の手順は、基本的にはまず著者の原稿を植字、もしくはデータを取り込んで試し刷りした「校正刷り」の内容を、原稿と突き合わせて確認することから始まる。校正刷りは、「ゲラ刷り」 (en:Galley proof) とも呼ぶ。ゲラ galley とは、活字を並べる枠箱をガレー船に喩えたもの(「組版」を参照)が転じて、刷ったものを表すようになり、さらに誤植をチェックする刷りものを指すようになった。ここでは、校正はあくまでも原稿に忠実に印刷されているかどうか確認することを原則としているが、時には著者の書き間違いや勘違いによる誤記を正したり、著者に確認を求めたりすることも必要となる(原稿との突き合わせを超えた部分に関しては「校閲」〈こうえつ〉と呼ばれる)。したがって、校正者にはその分野に対する専門的な知識が要求されることが多い[注釈 1]。校正作業に際しては、「校正記号」と呼ばれる独特の様式に従って、ゲラ刷りに赤字で注記を書き入れるというのが一般的である。

こうした校正によって判明した誤植は、印刷の原版の修正というかたちで反映され、差し替えられた刷り原稿が出てくる。そしてさらに校正がなされ(二校、再校)、慎重を期する時には三校以上が重ねられる。校正を終えて印刷にかかることを、「校了」と言う。校了前には必要に応じて著者自身による「著者校」もなされ、出版にあたっては誤植やその他の誤りを追放する努力が重ねられている。

しかし、どんなに綿密に校正を行っても、しばしば誤植を見落としたまま出版されることがあり、出版関係者を切歯扼腕させている。校正を少しでも怠ると出版物に数多くの誤植が発生するので、古くから「校正畏るべし」の警句が語られている。この語は『論語』の「後生畏るべし」をもじったものであり、一説には、明治時代の劇作家福地桜痴の述懐が初出だという。その福地が東京日日新聞の主筆であった頃、自分の俸給を削ってまで招聘した校正主任は市川清流という国学者・漢学者であり、清流が在社している間は「校正の宜しきを得た」と福地は満足した[2]


注釈

  1. ^ ヒキタクニオ『角』(光文社文庫、2005年)では角の生えた麻起子の上司が「日本語は我々潮光社校閲部が守る!」という気概をもっている設定だった[要ページ番号]
  2. ^ オノレ・ド・バルザックはしばしばこの段階で多大な変更を行ったので、十校以上にも及ぶことがあり、植字工・校正者泣かせであった[要出典]
  3. ^ フィルムから直接印刷することは、印刷の原理上できない。

出典

  1. ^ 色校”. 賢者の印刷用語集. ウイル・コーポレーション. 2024年1月15日閲覧。
  2. ^ 福地源一郎『『懐往事談』附録の「新聞紙実歴」』改造社(文庫)、1941年、197-200頁。 
  3. ^ 宮木あや子校閲ガールKADOKAWA、2014年、44頁。 
  4. ^ 責了”. 賢者の印刷用語集. ウイル・コーポレーション. 2024年1月15日閲覧。






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