接着剤 概説

接着剤

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/09/07 01:03 UTC 版)

概説

一般に接着剤は樹脂のみによるものと考えられるケースが多い。しかしながら、基材と接着剤の熱膨張率が異なると耐久性が落ちる等の理由によって、高信頼性の接着剤ではシリカ等の固形物を混合する事が工業用では一般的である。他の理由としては、熱伝導率の向上、構造強度の向上、硬化時の発熱の低減、価格メリット等がある。

市販品においてはパテ等の名称で区別する場合がある。

「接着剤」の名称は、大正期にセメダインの社長であった今村善次郎が考案したといわれている。それまで「接合材」や「強力ノリ」などの呼称で呼ばれていたものに対して、今村が当時取引をよく行っていたのが文房具店のほかに薬局であったため、薬局で売りやすいように「材」でなく「剤」の文字を使うようになったとされる。(1920年代ごろの薬局は日用品や調味料などの販売を行い、万屋的側面が強かった。)

異種の物質がくっつく現象である英語のAdhesionは、接着、付着、密度、粘着、凝集などと訳される[2]。ただし、厳密には付着力と凝集力、付着力と粘着力は区別され、接着剤と粘着剤も区別される[2]。接着剤と粘着剤の大きな違いは、第一に粘着剤は接合している間も粘着剤自体は乾燥していないこと[2]。第二に粘着剤による接合は主に凝集力(同種分子の引き合う力)によるものであることである[2]

付着力の発生の仕組みはよくわかっていないが、吸着説、電気説、拡散説、さらに弱境界層説などが唱えられている[2]

接着剤の歴史

接着剤の歴史は人間が道具を使い始めた頃に始まった。石器時代にはを木の枝や竹に固定するためにアスファルトが使われた[1]。また、を使って修理された約6000年前の土器も見つかっている。

石油資源が豊富な中近東ではアスファルトが壁画制作や建築に利用された[1]。古代のバビロニアでは彫像の眼を固定するためにアスファルトが使われた。旧約聖書にはバベルの塔煉瓦接着や、ノアの方舟の防水処理用にアスファルトが使われたと書かれている。

また、狩猟が盛んなエジプト中国ヨーロッパなどでは獣類の皮や骨を煮出したにかわが利用された[1]。古代エジプトではにかわが家具パピルスなどを接着するために広く使われていた。12世紀頃のモンゴルで作られた高性能の弓は、動物のを薄く削った板を複数枚重ねてにかわで接着したものである。

肉食の習慣の少なかった日本などでは、漆(ウルシの樹液)や、米などを原料とするデンプンのりが主に利用された[1]。古代から使われていた漆喰石垣や煉瓦建築においてよく用いられ、デンプンのりは寝殿造で使われた障子を作る時に利用されてきた。

接着剤の大量生産は、18世紀のオランダに建設されたにかわ製造工場によって始まった。それ以後、天然ゴム・デンプン・カゼインなどの天然系接着剤が各国で製造され始めた。

20世紀に入ると合成系接着剤が続々と登場する。1915年に、初の合成樹脂のひとつフェノール樹脂を積層板製造時に接着剤として使用された事を皮切りに、化学工業の発展に伴って接着剤も開発された。1940年前後にはエポキシ樹脂系接着剤が金属接合に使われ始めた。以後、様々な種類の接着剤がいろいろな用途に使われるようになった。

接着接合の特徴

接合法のひとつにあげられる「接着」は、次のような特徴を持っている。

長所

  • 接着しようとする物(以下「被着材」)について、さまざまな種類に対応する。また、種類が異なる被着材同士を接合することもできる。
  • 大きさや厚みといった、被着材がどんな形をしているかに左右されない。
  • 面と面を接合させるため、応力を分散させることができる。
  • 軽く、仕上がりの美観が良い。
  • 接着剤は大量生産することができ、また接合作業を自動化することが簡単にできる。
  • 気密性・水密性があり、また接着剤の成分処方を変えることで様々な機能を加えられる。

など。

短所

  • 一般的に、耐熱性や耐寒性はあまり高くない。
  • 一般的に、可燃性のものが多い。
  • 被着材の種類に対応した接着剤を選ばなければならない。
  • 適切な接着条件を守らないと、その性能を充分に発揮できない。
  • 一般的に、一度接着した被着材同士を分離することが難しく、解体が非常に困難になる。
  • 被着材とは異なる物質を使うケースが多いため、リサイクルを阻害してしまう場合がある。
  • 溶剤を使用した接着剤(プラスチック用、ゴム系など)では使用中の換気を必要とし、悪用すれば有機溶剤中毒に陥る。

など。


  1. ^ a b c d e 化学はじめて物語”. 日本化学工業協会. 2020年2月10日閲覧。
  2. ^ a b c d e f 坪田実「塗膜の機械的性質」『色材協会誌』第62巻第3号、色材協会、1989年、 164-175頁、 doi:10.4011/shikizai1937.62.164ISSN 0010-180XNAID 1300049944072020年9月8日閲覧。
  3. ^ 雑貨工業品品質表示規程”. 消費者庁. 2013年5月23日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i 接着剤の知識”. 東リ. 2020年9月8日閲覧。
  5. ^ Nature's strongest glue could be used as a medical adhesive: IU News Room: Indiana University”. newsinfo.iu.edu. 2021年5月16日閲覧。
  6. ^ a b c d e f 5.接着剤の使い方”. セメダイン. 2020年9月8日閲覧。






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