接着剤
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/13 06:54 UTC 版)
接着剤の性状による分類
接着剤は液体状の塗布タイプと固体状の感圧・感熱タイプの接着剤に分けられる[4]。
液体状の接着剤
液体状の接着剤は塗布タイプと呼ばれており、塗布、圧着、硬化の過程を経て接着力を得られるタイプのものである[4]。
- ラテックス形・エマルション形(Latex & Emulsion)
- 初期状態は高分子の固形分を水中で重合させた懸濁水溶液。コロイド状態の天然または合成ゴムが主体の場合にはラテックス系接着剤、本来水に溶解しない高分子が保護コロイドでエマルジョン化されて水に溶けることができる状態となっているものはエマルジョン系接着剤と分類される。これらは特性を付与するために異なる高分子成分を混合する場合もあり、物性を設計する上での自由度が高い。貯蔵性に優れるが凍結させると分解し本来の機能を発揮しなくなってしまう。常温で接着するが低温の環境では充分に固化せず白化した状態となるため、最低造膜温度(Minimum Film Forming Temperature)上での作業が求められる。
- 接着過程は乾燥固化型で接着剤の水分が蒸発することで硬化して接着する[4]。
- 接着後の体積変化が反応形などに比べて大きい[4]。
- アクリル樹脂系エマルション形やゴム系ラテックス形がある[4]。
- 溶剤形
- 初期状態は合成樹脂やゴムなどの高分子固形分が有機溶剤などの溶媒に溶け込んだ液体状。
- 酢酸ビニル樹脂系溶剤形、ビニル共重合樹脂系溶剤形、ゴム系溶剤形がある[4]。
- 接着後の体積変化が反応形などに比べて大きい[4]。
- 接着過程は乾燥固化型で接着剤の溶剤が揮発することで硬化して接着する[4]。
- 反応系(Reactive adhesives、モノマー・オリゴマーなど)
- 初期状態は化学反応を起こす前の成分を主体とする液体または固体。光や熱などのエネルギーを与える事で熱硬化を開始する。エネルギーの与え方は明示的である場合とそうでない場合(常温反応)があり、前者はオーブンや硬化炉等を用い、後者は常温にて自然に硬化する。なお、後者を用いた場合においても過剰なエネルギーを与える事によって、硬化反応を促進させる、硬化後の物性を変化させる、といった事が一般的に可能である。
- 化学反応は、高温高圧等の条件においては、官能基を持つ一つの化学種で事足りる(単独重合させる場合)が、一般に接着剤を用いる局面ではそのような環境の使用が困難であるため、二種以上の化学種を併用する事が多い。そのため製品としては、使用の直前に混合するもの(2液タイプ)と、工場出荷時に既に混合されているもの(1液タイプ)が存在する。前者は2液に分かれているため保存安定性は良いが、後者は保存安定性と反応性(硬化性)を両立させるために、様々な工夫が用いられる。例としては、冷凍保存、硬化剤・触媒のマイクロカプセル化、硬化温度の高温化などが挙げられる。このため一般に高価であり、ごく一部の市販品を除きほとんどは工業用、特に電子部品用途に用いられている。
- シアノアクリレート系の瞬間接着剤は水を触媒とする特殊なものであり、1液ではあるが上記に当てはまらない。
- 反応系接着剤は硬化の前後において、密度の変化と若干の揮発以外には体積を減じる可能性が低いという特徴を持っている。
固体状の接着剤
固体状の接着剤は感圧・感熱タイプと呼ばれる[4]。
- ^ a b c d e “化学はじめて物語”. 日本化学工業協会. 2020年2月10日閲覧。
- ^ a b c d e f 坪田実「塗膜の機械的性質」『色材協会誌』第62巻第3号、色材協会、1989年、164-175頁、doi:10.4011/shikizai1937.62.164、ISSN 0010-180X、NAID 130004994407、2020年9月8日閲覧。
- ^ “雑貨工業品品質表示規程”. 消費者庁. 2013年5月23日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i “接着剤の知識”. 東リ. 2020年9月8日閲覧。
- ^ 魚膠. コトバンクより。
- ^ “Nature's strongest glue could be used as a medical adhesive: IU News Room: Indiana University”. newsinfo.iu.edu. 2021年5月16日閲覧。
- ^ a b c d e f “5.接着剤の使い方”. セメダイン. 2020年9月8日閲覧。
接着剤と同じ種類の言葉
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