委任 商行為の委任

委任

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/20 16:04 UTC 版)

商行為の委任

商行為に関する委任関係を商事委任といい、商事委任における受任者は委任の本旨に反しない範囲内で委任を受けていない行為もすることができる(商法第505条)。

行政法上の委任

権限の委任

  • 権限の委任(事務の委任)
    行政庁が他の行政機関にその権限の一部を委任すること。
    委任行政庁は、権限を失い、受任行政庁が自己の名において権限を行使する。
    行政法上の委任には、法律の根拠が必要である。また、権限の全部(例えば、知事が、その権限のすべてを副知事に委任)はできない。
    (例1)地方自治法(第153条、第167条、第171条)により、市町村長や都道府県知事は、副市長村長、副知事、福祉事務所長、教育委員会、建設事務所長、支庁長、会計管理者などの同じ地方公共団体の他の行政庁や自身の補助機関(一般の職員)に、権限を委任できる。
    (例2)地方教育行政の組織及び運営に関する法律(第25条)により、教育委員会は、教育長、教育委員会事務局の職員、所管する学校の職員、博物館等の職員に、権限を委任できる。
    (解説)これらの場合、委任をした市長村長や都道府県知事、教育委員会はその権限を失い、受任者は自らの名前と責任を事務を執行する。受任者が行政処分を行う場合は自己の名で処分を行うこととなり、自らが行政不服審査法の処分庁となる。ただし、行政不服審査法の審査庁は、処分庁に上級行政庁がいる場合は、その上級行政庁が審査庁となり、審査を行う。(行政不服審査法第4条)
    (例)市長から道路法の道路管理者の権限を委任された建設事務所長(処分庁)が、道路占用許可の不許可処分(行政処分)を行った。これに対し、不許可とされた住民が、建設事務所長の上級行政庁である市長(審査庁)に対し、行政不服審査法に基づく審査請求を行い、建設事務所長の不許可処分の取消を願い出る場合。この場合でも、市長は道路管理者の権限を建設事務所長に委任している立場であり、道路管理者としての権限は有していないため、その意味ではあらかじめの口出し(不許可処分はやめなさいということなど)はできない。審査請求が起き、たまたま委任した者が自らの補助機関だったので、上司である市長が事後に審査するもの。仮に委任した者が自らの部下(補助機関)でない場合は、審査請求の審査庁とはならない。
  • 内部委任との違い 内部委任(いわゆる専決権限を与えること)は、上記の委任とは名前は似ているがまったく異なるものである。(例)町長が、50万円以下の支出命令の権限を、部下である課長に専決権限を与えた場合は、課長は、町長の名において支出命令できる権限を有しているのみであり、課長自らが権限を委任されたものではない。「少額のものはやりきれないので、判断を君に委ねよう。ただし、対外的にはあくまで私(町長)が行ったものであるし、当然、責任も私が取るよ」という感じである。

法律の委任

  • 法律の委任(立法の委任)
    憲法法律が、自ら規定すべき事項を他の法形式で制定できるとすること。
    政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない(憲法第73条6項)。
  • 委任立法
    法律の委任に基づいて制定される法規。
  • 委任命令
    法律の個別具体的な委任に基づいて法律の内容を補充・具体化する規定を定める。法規命令に含まれる。

脚注

出典


  1. ^ a b c 近江幸治著 『民法講義Ⅴ 契約法 第3版』 成文堂、2006年10月、260頁
  2. ^ a b c d 川井健著 『民法概論4 債権各論 補訂版』 有斐閣、2010年12月、303頁
  3. ^ a b c d e 大島俊之・下村正明・久保宏之・青野博之著 『プリメール民法4 第2版』 法律文化社〈αブックス〉、2003年3月、131頁
  4. ^ a b c d 川井健著 『民法概論4 債権各論 補訂版』 有斐閣、2010年12月、304頁
  5. ^ a b 内田貴著 『民法Ⅱ 第3版 債権各論』 東京大学出版会、2011年2月、289頁
  6. ^ 遠藤浩・原島重義・水本浩・川井健・広中俊雄・山本進一著 『民法6 契約各論 第4版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、1997年4月、251頁
  7. ^ a b 内田貴著 『民法Ⅱ 第3版 債権各論』 東京大学出版会、2011年2月、290頁
  8. ^ a b c d 改正債権法の要点解説(9)” (PDF). LM法律事務所. 2020年3月14日閲覧。
  9. ^ a b 近江幸治著 『民法講義Ⅴ 契約法 第3版』 成文堂、2006年10月、263頁
  10. ^ a b c 大島俊之・下村正明・久保宏之・青野博之著 『プリメール民法4 第2版』 法律文化社〈αブックス〉、2003年3月、133頁
  11. ^ 川井健著 『民法概論4 債権各論 補訂版』 有斐閣、2010年12月、306頁
  12. ^ http://jss.ca/contpowerofattorneyforproperty/ |title=財産管理の為の継続委任状
  13. ^ a b c 内田貴著 『民法Ⅱ 第3版 債権各論』 東京大学出版会、2011年2月、291頁
  14. ^ a b 近江幸治著 『民法講義Ⅴ 契約法 第3版』 成文堂、2006年10月、261頁
  15. ^ a b c d 川井健著 『民法概論4 債権各論 補訂版』 有斐閣、2010年12月、305頁
  16. ^ a b 川井健著 『民法概論4 債権各論 補訂版』 有斐閣、2010年12月、309頁
  17. ^ a b c 内田貴著 『民法Ⅱ 第3版 債権各論』 東京大学出版会、2011年2月、300頁
  18. ^ 川井健著 『民法概論4 債権各論 補訂版』 有斐閣、2010年12月、307-308頁
  19. ^ a b 内田貴著 『民法Ⅱ 第3版 債権各論』 東京大学出版会、2011年2月、293頁
  20. ^ 川井健著 『民法概論4 債権各論 補訂版』 有斐閣、2010年12月、308頁
  21. ^ a b 川井健著 『民法概論4 債権各論 補訂版』 有斐閣、2010年12月、314頁
  22. ^ 近江幸治著 『民法講義Ⅴ 契約法 第3版』 成文堂、2006年10月、264-265頁
  23. ^ 内田貴著 『民法Ⅱ 第3版 債権各論』 東京大学出版会、2011年2月、294頁
  24. ^ a b 川井健著 『民法概論4 債権各論 補訂版』 有斐閣、2010年12月、315頁
  25. ^ a b 近江幸治著 『民法講義Ⅴ 契約法 第3版』 成文堂、2006年10月、265頁
  26. ^ a b 川井健著 『民法概論4 債権各論 補訂版』 有斐閣、2010年12月、316頁
  27. ^ a b c d 大島俊之・下村正明・久保宏之・青野博之著 『プリメール民法4 第2版』 法律文化社〈αブックス〉、2003年3月、134頁
  28. ^ 近江幸治著 『民法講義Ⅴ 契約法 第3版』 成文堂、2006年10月、270頁
  29. ^ a b c d 不動産関連取引実務に対する 民法改正の影響(7)” (PDF). ARES不動産証券化ジャーナルVol.32. 2020年3月14日閲覧。
  30. ^ a b c 川井健著 『民法概論4 債権各論 補訂版』 有斐閣、2010年12月、317頁
  31. ^ 内田貴著 『民法Ⅱ 第3版 債権各論』 東京大学出版会、2011年2月、299頁
  32. ^ 大島俊之・下村正明・久保宏之・青野博之著 『プリメール民法4 第2版』 法律文化社〈αブックス〉、2003年3月、138頁
  33. ^ a b 川井健著 『民法概論4 債権各論 補訂版』 有斐閣、2010年12月、318頁






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