声優 声優プロダクション

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声優

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/27 08:22 UTC 版)

声優プロダクション

声優プロダクションは、声優から手数料を徴収し、音響制作会社や放送局などに対して、アニメ・日本語吹替・ナレーションなど得意分野ごとに配置されたマネージャーが営業活動や声優の売り込みなどを行う。専門の養成所を持ったり専門学校と提携して新人の育成も行う。

もともと制作会社の関連会社に位置していて連携の強いプロダクションが存在し、特に2000年代は特に新たに創業される例が見られた[注 18]が、2010年代以降は制作会社の一部門として直営され、より連携が強固なプロダクションも存在する[注 19]。特定の制作会社との連携が強くとも、ほかの制作会社が手がける仕事も請ける。また、もともと音楽系のプロダクションでも声優のマネージメントを行う例が近年あり[注 20]、この場合は本業を生かして歌手活動も積極的に行われることが多い[注 21][注 22]。他分野中心の芸能プロダクションが声優部門に力を入れるようになる例も見られる[注 23]

経済環境

声優は所属事務所からの基本給というものは存在せず[注 24]、各人の仕事実績によるギャランティ(報酬金)が収入となる個人事業者である。所属事務所とは通常1年更新のマネジメント契約を締結し、売込みやマネジメントの対価として業界平均で出演料の約20%から30%を事務手数料として事務所へ支払い、源泉徴収も10%[注 25]引かれ[注 26]、この残りが声優の手取りの報酬となる[104]。歌手や俳優など、ほかの芸能の世界と何ら変わりない厳しい競争社会であり、経済的に自立できずに脱落していく者も多い。

日本語吹き替えが始まった1960年代には、声の仕事は顔出し出演の7割の出演料「顔出しの七掛け」とされ[105]、低い位置にある仕事とみなされ、舞台俳優がアルバイトのような形でやっていた。ただし、実写の仕事と比較して、吹き替えの仕事は拘束時間が少なくかけ持ち出演が可能だったため、一概に低収入とは言えなかった。

声優の賃金待遇改善については、声優の多くが日本俳優連合(日俳連)に所属しており、日俳連は音響制作会社の集合体である日本音楽制作者連盟(音声連)、声優のマネージメントを行う事業者で組織する日本芸能マネージメント事業者協会(マネ協)と「三団体実務小委員会」を設けて、出演ルールの改定や待遇の改善を申し入れて来た。ときにはストライキ1973年8月8日)や街頭デモ活動を行うなどして、1973年には報酬が約3倍アップ、1980年には再放送での利用料の認定、1991年には報酬が約1.7倍上昇するなどの成果を勝ち取ってきた。

業界に対してのみならず、1973年と2001年にはデモ行進1988年には永井一郎が『オール讀物』(文藝春秋)において『磯野波平ただいま年収164万円』と題して、アニメ出演料の安さを訴える記事を寄せて、世間一般への理解を求める行動を起こしている[106]

日俳連・マネ協・音声連による協議の結果、外画動画出演規定・新人登録制度・CS番組に関する特別規定・ゲーム出演規定などを締結した。アニメでは、放送局と、アニメ制作会社で組織される日本動画製作者連盟も加わって、団体協約が締結されている。これにより、仕事1作品あたりの報酬は作品のジャンル・放送時間帯・放送回数・ソフト化などによる2次利用、そして経験実績などの条件によって受け取る額が算出される方法を取られており、音響制作会社の一方的な言い値で手取りを決定されるということはない[注 27]

以上の協定は、声優・マネジメント事業者・音声製作事業者がそれぞれの団体に所属しなければ縛られることはない。たとえば、石原裕次郎は映画『わが青春のアルカディア』の出演料が1,000万円だったと言われている[107]。そのため組織率を高めるために、音声連が製作する作品に出演する人数について「日俳連に属さない出演者の数は全体の20%以内」とし、日俳連に属さない出演者については加盟を推奨することが音声連には課せられている。逆にマネ協・日俳連側は、音声連に入っていない製作会社へ音声連への加盟を奨めることとなっている。

これらの協定を嫌う日本アドシステムズなどの製作者側もあり、日俳連に所属しない声優を起用するケースが1990年代半ばより増加したが、東映アカデミーラムズのように事業を停止したケースもある。音声連に属していない事業者としては神南スタジオや脱退した音響映像システム(現・サンオンキョー)などがあり、マネ協に属していない事業者としてはネルケプランニングなどがある[注 28]

ランク制

日俳連に所属する声優が、アニメと日本語吹き替え作品に声をあてる際の出演料についての規定で、この制度では報酬は、ランクと拘束時間によって算出され、演じる役のセリフ量にかかわらない。また、社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)に加盟するゲーム会社との間にも同様のランク制が設けられている。ランクの設定は毎年4月に更新され、人気が上がったりキャリアを重ねると、マネ協や音声連との協議のうえ、ランクが上がっていく。ランクが1つ上がるごとに出演料が1,000円ずつアップする。例外として、60歳以上の者はランクを上げることはできても下げることはできない。1991年に出演料が約1.7倍アップしたこともあり、予算の限られたアニメや吹き替えにはランクの高い(出演料が高い)ベテラン声優が起用されなくなる弊害が生じるようになった。それにより、2001年から2年の期間限定でランク下げを認める特例期間が設けられた。

30分枠作品の最低ランクの出演料が1万5,000円で、最高ランクが4万5,000円、その上に上限なしのノーランクが設定されており、これが基本出演料となる。またその基本出演料に「目的使用料」として、アニメは1.8倍が加算され、吹き替えは1.7倍が加算される。予告編のセリフをやった場合、基本出演料のランクをもとにしたギャラが加算される。放送時間枠が60分や120分の場合は「時間割増」となり、その分のギャラが支払われる。出演作品がソフト化されたり再放送された場合、規定に基づいて「転用料(2次使用料)」が支払われる。これらの合計が声優の総出演料となるのだが、そこから事務手数料や税金などで約30%から40%引かれる。

新人

声優学校や声優養成所を卒業して、日本芸能マネージメント事業者協会(マネ協)加盟の声優事務所のオーディションに合格した新人声優は、まず「預かり」という身分から声優業をスタートする。この時点ではまだ声優個人としての日本俳優連合(日俳連)への加盟はできない。預かりは声優業の最初のステップとして、ランク制の事実上の番外とでもいうべき存在である。預かり期間修了後はジュニアランクとなり、ジュニアランクでいられる期間は3年間ないし所定の起用率に到達するまでで、それを終了したあとは日俳連へ加盟し通常のランクの声優になる[108]

出演料が安すぎるという理由で1990年に一度新人(ジュニア)ランクを撤廃したことがあったが、1994年から新たな形で再び導入された。

預かりとジュニアランクの声優の出演料は1万5,000円で、ランクがついた声優とは違い、上述の「目的使用料」「予告編のセリフ代」「時間割増料」「転用料」は支払われない。

ベテラン

声優としてベテランになり日俳連のランクが高くなると、予算の関係からアニメ・ゲーム・吹き替えの仕事は自然とできなくなっていく。そういったことを補うのが、CMやテレビ番組などでのナレーションの仕事である。ナレーションは日俳連の協定によるランクの縛りがなく[注 29]、また、ギャラはアニメ・ゲーム・吹き替えよりもはるかに高額とされる。そのためか、新人・若手声優だったころはアニメに多く出演していたが、のちに中堅・ベテラン格になるにつれてアニメの仕事が徐々に減っていき、ナレーションが中心になるという傾向にある。

ベテラン声優の中には収入の少なさを補うために本業の傍ら、声優事務所の経営、声優の養成所や専門学校の講師、カルチャースクールの喋り方教室の講師、音響監督などといった副業をしている者もいる。また、ベテランになると、経済的にはむしろそのような副業のほうが本業という声優も珍しくないといわれている。

現状

声優を目指す人々は増加傾向にあるが、職業としての声優として第一線で活躍できる者は少ない。オーディションでほかの声優との競争に勝てず、仕事がもらえずに無名のまま脱落し、経済的に自立できずにわずかな期間でやめる、またはプロダクションから「今後、第一線級の声優として売れる見込みがない」と判断されて契約を解除されるという新人・若手声優が多いという[109][110]。実際、一例として内田彩は、2015年9月のインタビューにて「声優の仕事一本で食べていけるようになる2、3年くらい前まで、声優の仕事が空いているときは派遣のアルバイトをやっていました」と打ち明けている[111][注 30]内山夕実のように(家の都合で)一度引退後に復帰するケース[112]もある。

1996年発売のキネマ旬報刊『声優名鑑』には約2,400人の声優が掲載されていたが、このうち声優としての地位が確立されている者は約300人だけで、しかもそのうち声優業だけで食べていける者は約半数であるという[113][注 31]

ある程度の知名度、出演本数、活動年数があったにもかかわらず、声優業で生計を立てていくことが難しいという理由で引退した者も少なくなく、継続して仕事を維持するのも厳しい世界である[110]

脚注

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注釈

  1. ^ ただし、これは無声映画作品に声をつけたものとして放送されており、本格的なラジオドラマとは質が異なる。
  2. ^ 後述するように『読売新聞』では1926年の時点で「声優」という言葉が使われていた。
  3. ^ 村田美弥子(当時は村田美禰子)、村田竹子(いずれも女優・村田嘉久子の妹)とともに「スター」として取り上げられていた[7]
  4. ^ 第1期生の加藤道子が死去した際、読売新聞は「声優の草分け」と紹介[10]
  5. ^ 初の日本語吹き替え作品は1931年の米映画『再生の港』だが、起用された在米邦人の広島訛りが不評で後が続かなかったという[16]
  6. ^ 2007年に、BS11による『アニメ+』が創設されて以後、この傾向が年々顕著になってきている。
  7. ^ 但し、古くは昭和では古谷徹鶴ひろみ冨永みーな笠原弘子など、平成でも沢城みゆき平野綾神木隆之介など、過去に10代で主役を演じたベテラン声優は多数存在する。
  8. ^ 他には、ANIMAX MUSIX(2009年開始)、リスアニ! LIVE(2010年開始)など。
  9. ^ ただし、アニメ・日本語吹き替え・ゲームのナレーションはランク制の対象となる。
  10. ^ 特に「ラブライブ!」から生まれたμ'sは、2016年3月31日・4月1日に声優ユニットとしては初めて東京ドームでの単独コンサートを開催し、両日とも満席であった。
  11. ^ 2016年にも東京ドームでの単独コンサートを開催したほか、同じ年には声優だけでなくソロ歌手としても初となる阪神甲子園球場でのコンサートを実現している。水樹は阪神タイガースファンとして知られており、甲子園球場でのコンサートは自身の念願の一つでもあった。
  12. ^ 水樹はその後も毎年出場を続け、2009年から2014年の計6回にわたり連続出場した。
  13. ^ 声優ユニットのμ'sが2015年に、水樹に次いで声優2組目となる紅白出場を果たした。
  14. ^ まれに普段使用している声優名のままでクレジットされていることもある。
  15. ^ 文学座こまつ座などで俳優としての活動はしていた。
  16. ^ 作品限定の声優ユニット活動を行うこともある。
  17. ^ アイドルマスターシリーズTHE IDOLM@STERアイドルマスター シンデレラガールズアイドルマスター ミリオンライブ!アイドルマスター SideM)、ラブライブ!シリーズμ'sAqoursWake Up, Girls!プリパラi☆Risなどの例がある。特に「ラブライブ!」シリーズのキャストは歌唱力やダンス力を重視したオーディションにより、 それまで声優経験が皆無であった(女優などの他業種出身のメンバーに加えて、芸能界での活動経験自体がなかったメンバーもいる。楠田亜衣奈降幡愛などがこれに該当)出自を持つ起用者も多くいる。
  18. ^ エイベックス・プランニング&デベロップメント(旧アクシヴ。声優プロダクションとしては縮小化したのち、グループ再編でエイベックス・ピクチャーズの1部門となった)、KADOKAWAプロダクション・エースアニプレックスボイスアンドハート(廃業の後、アニプレックスから独立)、ドワンゴアーティストプロダクション(ドワンゴ プランニング アンド ディベロップメント。現在のMAGES.となるAG-ONEへ会社統合の後、廃業)など。
  19. ^ MAGES.-アミュレート(ドワンゴアーティストプロダクションの事実上承継先)、学研プラス-office EN-JIN(2019年に所属者が居なくなり事実上の事業終了)、エイベックス・ピクチャーズ(エイベックス・プランニング&デベロップメントから一部受け入れ)、ポニーキャニオン-スワロウ、ブシロード系の制作子会社による
  20. ^ ミュージックレイン株式会社S、ポニーキャニオンアーティスツ(現在は取扱なし。声優・アニメ関連を社内別組織マネージメント組織「スワロウ」へ分割した後、2019年7月より親会社のレコード会社ポニーキャニオンに統合)。
  21. ^ 『声優兼アーティスト』枠で所属オーディションを開催するなどしている。
  22. ^ 歌手志望者を声優として(も)デビューさせる例があり、株式会社S(現在はディファレンスに移籍)の新田恵海のように、歌手志望として所属オーディションに合格するも事務所の方針で最初は声優としてデビューし、合格から5年半を経て歌手デビューを果たすという例もあり、また、ポニーキャニオンアーティスツ(現スワロウ)の遠藤ゆりか(2018年6月、芸能活動引退)のように、歌手デビュー後に声優としてもデビューするという例もある。
  23. ^ 一例として、ホリプロ(現在は関連会社のホリプロインターナショナルに移管)、ソニー・ミュージックアーティスツスペースクラフトなど。
  24. ^ 例外的に、ホリプロのような月給制を基本としている事務所もある。
  25. ^ 平成25年度以降の25年間は復興特別所得税が加算されるため、10.21%となる[1]
  26. ^ ただし、年収が少ないため結果的に源泉徴収税を納めすぎとなっているという者は、翌年の確定申告で還付を受けることができる。
  27. ^ 一概には言えないが、日俳連は基本的に土日祝日のゴールデンタイムに放送される番組に最も高いクラスの報酬を設定している。
  28. ^ ただし、現在ではスタッフの移籍がより増えたため実質的に加盟している状況の会社もある。
  29. ^ アニメ・ゲームのナレーションはランクの縛りがある。
  30. ^ 声優として2008年にデビューして以後、『キディ・ガーランド』(2009年。アスクール役)で主演を務めるなど、出演本数を積み重ねてはいたが、メインキャラクターとしての出演が増えたのは2012年以後のことであった。
  31. ^ なお、『声優グランプリ』2018年3月号の別冊付録である「声優名鑑2018女性編」で収録されている女性声優は800人、同雑誌の2018年4月号の別冊付録である「声優名鑑2018男性編」で収録されている男性声優は560人(つまり合計で1360人)であった。

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  92. ^ 声優・内田真礼がイケメンとイチャつく三菱地所レジデンスの新CMに反響 「なんだこの神CM」「めちゃめちゃ可愛い」”. ねとらぼ. 2018年4月30日閲覧。
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  107. ^ アニメージュ編集部・編『劇場アニメ70年史』徳間書店、1989年、93頁。
  108. ^ 野村道子『しずかちゃんになる方法 めざすは声優一番星』リブレ出版、2009年、pp.148-149
  109. ^ 第044話 彼女の決断 : それが声優!WEB 浅野真澄畑健二郎 2013年12月21日閲覧。
  110. ^ a b 実録 生き残れるのは一握りと言われる「声優」の収入と生活の現実”. ファイナンシャルフィールド. 2018年4月28日閲覧。
  111. ^ 【魅力発見・動画付き】 アニメ「ラブライブ!」で大ブレークの内田彩 声優やりながら肉体労働も”. 産経新聞. 2018年4月28日閲覧。
  112. ^ 声優未来予想図 第9回 内山夕実さん”. 声優グランプリweb (2012年2月6日). 2018年10月1日閲覧。
  113. ^ 市原光敏 『声優になれる本 - あの声優がすべてを明かす!』 世界文化社、1996年、101頁。ISBN 4418965084 





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