増幅回路 帰還

増幅回路

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/02/10 06:27 UTC 版)

帰還

実際の増幅回路では、回路の特性を改善する為に負帰還(NFB, Negative FeedBack)を掛けて用いる事が多い。負帰還とは、出力信号の一部を入力に戻し、入力信号と逆位相で合成する事によって、出力の振幅を抑えて増幅回路の特性を改善する事である。負帰還によって回路の増幅度は低下するが、広い周波数帯域にわたって均一な増幅度が得られる。増幅回路の増幅率が十分に大きければ、負帰還を行ったときの増幅率は帰還率によって正確に決まる。出力信号の全てを入力に負帰還させると、増幅率は1となる。

いま仮に、アンプ単体の増幅度が周波数により1000倍~100倍で、負帰還率を1/10とすると、全体の増幅度は10(=1/10-1)で一定となり、歪みは1/100~1/10(負帰還量)に抑えられるということだが、単体増幅度が帰還増幅度(この場合10)に近づく領域では歪み抑制効果がなくなり、位相回転で発振する条件もできる。

出力信号の一部を入力に戻し、入力信号と同位相で合成するものを正帰還(PFB, Positive FeedBack)と呼ぶ。出力信号が帰還されて入力信号を増大させ、それが増幅されて帰還され……を繰り返すので、正帰還はその量により発振を引き起こす(発振回路)。

用途による分類

増幅回路を扱う周波数で分類すると、次のように分類できる。

  • 高周波増幅器(可聴周波数より高い周波数域、RFアンプ・映像増幅・無線周波増幅とも)
  • 低周波増幅器(可聴周波数域、AFアンプ、音声増幅、オーディオ増幅とも)
  • 選択増幅器(特定の帯域のみを選択して増幅するようにしたもの)
    • 中間周波数増幅器(IFアンプ)(スーパーヘテロダイン方式などで。周波数帯としては通常高周波帯で、ラジオの受信周波数にかかわらず一定の周波数だけを増幅するもの)

直流までも増幅するアンプをDCアンプという。直流アンプの意味でもあり、入力トランスやコンデンサを通さず入力を直接受け取っている(Direct Coupled)という意味(en:Direct coupled amplifier)でもある。オペアンプはDCアンプである。

電圧、電流、電力のどれを重点的に増幅するかによって、電圧増幅器、電流増幅器などと呼ぶこともある。

それぞれに対してA,B,C級など別の分類もできるので、分類名を重ねてA級低周波電力増幅器などという。

増幅回路を扱う信号の大きさでの分類も場合により必要になる。主に小信号を入力対象にした増幅回路と大信号をそれにしたものである。微小信号の増幅については、主にSN比が問題になるため、増幅器自体の発生する雑音の少ない素子や回路を選択する。大振幅の信号を扱う増幅器は主に電力増幅器であり、発熱や消費電力を低減するために増幅器の効率が重視される。また、高調波歪、相互変調歪などの歪特性はいずれの場合も重要である。

多段増幅器とレベル配分

例えばラジオや通信型受信機は1μW以下の入力信号を数百mWオーダーまで増幅してスピーカに出力する必要があるが、増幅器1段で100万倍(60dB)もの利得を得ることはできない(送信機についても同様)。現実の増幅素子1個で得られる増幅率には限度があるからである。高周波で安定に動作するのは10数dB程度である。したがって、何段もの増幅器を直列に接続する必要がある。

その際、単に同一の増幅器を直列に接続すると、受信機の場合は小信号がノイズに埋もれたり、大信号で歪が発生する不具合が発生する。このため、初段と後段で増幅器の設計を変える。一般的に、初段では小信号用の低雑音アンプが使われ、後段では大信号用の低歪アンプが使われる。送信機の場合は、消費電流が初段と後段で大きく異なるため、初段では小信号用のアンプが使われ、後段では大信号用のアンプが使われる。そして、送受信とも各増幅器における信号レベルが適正になるように、レベル配分と呼ばれる設計を行う。

レベル配分は、要求仕様、消費電力、増幅器の能力、安定度、価格を勘案して設計者が決める。




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  1. ^ 『電子回路学』、p66、電気学会、2000年
  2. ^ 真空管でもトランジスタでもこの点は基本的に同様である。
  3. ^ 『電子回路学』、pp105-106、電気学会、2000年
  4. ^ 大出力が必要な場合、最終段が真空管やパワーMOSFETなど入力に電流を多く必要としない素子であれば基本的に電圧の増幅が中心で良いが、バイポーラの大電力パワートランジスタは一般に電流増幅率は低めであり、ある程度の電流も必要になる。
  5. ^ 『はじめてトランジスター回路を設計する本』(奥澤清吉 & 奥澤熙 2002)
  6. ^ 『電子回路』、p122、森北出版、1994年
  7. ^ 『電子回路』、pp123-125、森北出版、1994年
  8. ^ 『電子回路』、p125、森北出版、1994年
  9. ^ ラジオ技術』第6巻第12号(1952年11月号、通巻65号)pp. 68-75(目次には pp. 49- とあるが、目次が正しくない)「クロス・シャントPP回路を使った6A3BPPと6AR6PPの試作」島田聰(聡)
  10. ^ a b c Y.Takayama, "Fundamentals of Microwave High-Efficiency Amplifiers", MWE 2007 TL03-01, Nov 2007. (PDF)”. 2013年2月11日閲覧。
  11. ^ ポーラ変調とは - 電子部品 - Tech-On!”. 2013年2月11日閲覧。
  12. ^ ポーラ変調によるパワー・アンプの効率の向上 (PDF)”. 2013年2月11日閲覧。
  13. ^ a b c d e f M.Nakayama and T.Takagi, "Techniques for Low Distortion and High Efficiency Power Amplifier", MWE 2004 TL03-02, Nov 2004. (PDF)”. 2013年2月11日閲覧。
  14. ^ W.H.Doherty, "A new high efficiency power amplifier for modulated waves2, Proc IRE, vol 24, no.9, pp. 1163-1182, Sept. 1936.
  15. ^ a b K.Honjo, "Fundamentals of Microwave Amplifiers", MWE 2008 TL04-01, Nov 2008. (PDF)”. 2013年2月11日閲覧。
  16. ^ NXP、より電力効率に優れたRFベースステーションを実現する新しい3-way Dohertyリファレンスデザインを発表”. 2013年2月11日閲覧。





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