国鉄400形蒸気機関車
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/19 06:21 UTC 版)
280形
1923年に日本車輌製造により2両(製造番号105, 106)が製造されたA8系で、北九州鉄道(現・筑肥線)形式2(2, 3)である。1937年10月に同社が買収されたことにより、国有鉄道に編入され、280形(280, 281)に改められた。
ボイラーの使用圧力を高め、その分シリンダの径を縮小したもので、弁装置はワルシャート式で、弁室はピストンバルブである。ランボードは、弁装置を避ける形で端梁直後から乙字形を描いて高められ、側水槽の前部3分の1の位置で再び乙字形を描いて元の高さに戻っている。側水槽は、北九州鉄道時代に前方へ762mm延長されている。
日本車輌製造では、他にも地方私鉄からの受注を期待したらしいが、こちらは全く期待はずれに終わっている。
280は、1942年に播丹鉄道へ譲渡され3(2代)となったが、1943年の戦時買収にともない、再び国有鉄道に編入され、1948年に廃車解体された。
281は1942年に五戸鉄道(後の南部鉄道)に譲渡されたが、1947年に土佐交通(後の土佐電気鉄道安芸線)に再譲渡され、電化とともに1951年廃車となった。この間番号は、一貫して281のままであった。
- 主要諸元
- 全長 : 9680mm
- 全高 : 3554mm
- 最大幅 : 2286mm
- 軌間 : 1067mm
- 車軸配置 : 2-4-2 (1B1)
- 動輪直径 : 1321mm (4ft4in)
- 弁装置 : ワルシャート式
- シリンダー(直径×行程) : 343mm×508mm
- ボイラー圧力 : 12.7kg/cm2
- 火格子面積 : 1.11m2
- 全伝熱面積 : 67.3m2
- 煙管蒸発伝熱面積 : 60.8m2
- 火室蒸発伝熱面積 : 6.5m2
- 小煙管(直径×長サ×数) : 44.5mm×2952mm×147本
- 機関車運転整備重量 : 36.01t
- 機関車空車重量 : 28.85t
- 機関車動輪上重量(運転整備時) : 19.35t
- 機関車動輪軸重(第1動輪上) : 9.70t
- 水タンク容量 : 4.5m3
- 燃料積載量 : 1.27t
- 機関車性能
- シリンダ引張力(0.85P): 4880kg
- ブレーキ装置 : 手ブレーキ、真空ブレーキ
400形系蒸気機関車一覧 | |||||||||||
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鉄道省 形式 |
鉄道作業局 形式 |
製造初年 | 両数 | 製造所 | 車軸配置 | 全軸距 (mm) |
シリンダ径(mm) | 動輪径 (mm) |
全伝熱面積 (m2) |
火格子面積 (m2) |
備考 |
400 | - | 1886年 | 4 | ナスミス・ウィルソン | 1B1 | 5944 | 343 | 1321 | 60.0 | 0.98 | |
500 | A8 | 1888年 | 61 | ダブス | 1B1 | 5944 | 356 | 1321 | 67.1 | 1.08 | |
600 | A8 | 1887年 | 78 | ナスミス・ウィルソン | 1B1 | 5944 | 356 | 1321[表注 1] | 67.3 | 1.11 | |
700 | A8 | 1888年 | 18 | バルカン・ファウンドリー | 1B1 | 5944 | 356 | 1321 | 67.3 | 1.07[表注 2] | |
280 | - | 1923年 | 2 | 日本車輌製造 | 1B1 | 5944 | 343 | 1321 | 67.3 | 1.11 | ワルシャート式弁装置 |
450 | - | 1897年 | 4 | ブルックス・ロコモティブ・ワークス | 1B1 | 5944 | 356 | 1321 | 67.3 | 1.11 | スチーブンソン式弁装置 |
480 | - | 1904年 | 2 | クラウス | 1B1 | 5944 | 356 | 1321 | 71.0 | 1.11 | |
490 | - | 1898年[表注 3] | 1 | ナスミス・ウィルソン | 1B1 | 5944 | 343 | 1321 | 60.0 | 0.98[表注 4] | |
800 | - | 1903年 | 2 | 汽車製造 | 1B1 | 5944 | 356 | 1321 | 67.1 | 1.11 | |
810 | - | 1904年 | 1 | 汽車製造 | 1B1 | 5944 | 356 | 1245 | 67.2 | 1.12 | |
850 | - | 1896年 | 1 | 山陽鉄道兵庫工場 | 1B1 | 5944 | 356 | 1321 | 58.8 | 1.06 | |
870 | - | 1897年 | 4 | ナスミス・ウィルソン | 1B1 | 5944 | 368 | 1372 | 74.3 | 1.21 | ベルペイヤ式火室 |
100 | - | 1896年 | 1 | ナスミス・ウィルソン | 1B | 3810 | 305 | 1219 | 60.0[表注 5] | 0.93 | |
220 | - | 1891年 | 2 | ダブス | 1B1 | 4827 | 330 | 1219 | 46.5 | 0.77 | ワルシャート式弁装置 |
860 | A9 | 1893年 | 1 | 逓信省鉄道庁神戸工場 | 1B1 | 5944 | 381/572[表注 6] | 1346 | 71.5 | 1.15 | 複式機関車 |
230 | A10 | 1902年 | 41 | 汽車製造 | 1B1 | 5944 | 356 | 1245 | 67.2 | 1.11 | |
注釈
- ^ Nasmyth, Wilson & Co. Ltd., Bridgewater Foundry
- ^ 車軸配置C1のタンク式機関車であるB6系(鉄道省2120形など)も前向運転すると第1動輪のタイヤとレールの摩耗が多く、逆向運転を定位として使用された[3]。
- ^ この分類は機関車研究家の金田茂裕が1953年に日本で最初に公表したものであるが、一方で鉄道史研究家の鶴岡秀基が1984年にこれを正式なものでないとする説を発表し、金田茂裕も「たとえトレビシックの個人的な分類であっても、それが実在したことは間違いないと思う」としてこの分類が公式のものかについて明言はしていない[6]。
- ^ 日本鉄道は開業後、保線や運行は官設鉄道が行なっており、1885年に運行や車両の修繕、保線を日本鉄道で行うこととなったが、その後運行と車両の修繕が再度鉄道作業局に委託され、保線と運輸も鉄道作業局の監督の下に行われていた[8]。
- ^ 1891年の日本鉄道の上野駅 - 青森駅間全通を機に、全事業を日本鉄道で実施するよう指導がなされた[8]。
- ^ Dübs & Co., Glasgow Locomotive Works
- ^ Vulcan Foundry Co., Ltd.
- ^ 原因は業績不良のためと推定されている。
- ^ 528, 530号機のうち1両とする文献[18]もある。
- ^ 528, 530号機のうち1両とする文献[18]もある。
- ^ クラウスの記録では1.12m2
- ^ クラウスの記録では71.13m2
- ^ クラウスの記録では64.4m2
- ^ クラウスの記録では6.53m2
- ^ クラウスの記録では37.2t
- ^ クラウスの記録では27.8t
- ^ クラウスの記録では20.8t
- ^ クラウスの記録では10.4t(第1・第2動輪上)
- ^ クラウスの記録では5.50m3
- ^ クラウスの記録では1.00t
出典
- ^ 『形式別 国鉄の蒸気機関車I』pp.11-56
- ^ a b 『鉄道技術発達史 第1篇』p.30
- ^ 『鉄道技術発達史 第4篇』p.172
- ^ 『形式別 国鉄の蒸気機関車I』p.33
- ^ 『機関車の系譜図 1』p.50
- ^ a b 「”形式別・国鉄の機関車”補遺」『形式別 国鉄の蒸気機関車別冊 国鉄軽便線の機関車』p.ii
- ^ a b 『機関車の系譜図 3』p.302
- ^ a b 『鉄道技術発達史 第1篇』p.2
- ^ 『形式別 国鉄の蒸気機関車I』p.38
- ^ 『形式別 国鉄の蒸気機関車 正誤表』p.3
- ^ 『機関車表』 p.23
- ^ 『芝浦工業大学附属中学高等学校へ403号機関車の寄贈が決定』(プレスリリース)芝浦工業大学、2022年4月11日 。
- ^ “403号機関車、ついにお披露目!明治期の姿に復元し豊洲で一般公開”. 鉄道チャンネル. (2022年11月12日). p. 2
- ^ 『403号蒸気機関車が芝浦工業大学附属中学高等学校にて一般公開を開始』(プレスリリース)芝浦工業大学、2022年11月14日 。
- ^ 『豊洲にSLがやってきた』(プレスリリース)芝浦工業大学附属中学高等学校、2022年11月14日 。
- ^ a b c 『機関車表』p.22
- ^ 『機関車表』p.537, 551
- ^ a b 『機関車表』p.551
- ^ 『機関車表』p.552
- ^ 『形式別 国鉄の蒸気機関車I』p.51
- ^ 『形式別 国鉄の蒸気機関車I』p.11
- ^ 『形式別 国鉄の蒸気機関車I』p.46
- ^ 『機関車表』pp.550-551
- ^ a b 『機関車表』p.20375
- ^ a b c d e 「私鉄車両めぐり(83) 近江鉄道 上」p.90
- ^ 中川浩一「セミナー車両調査」『私鉄車両めぐり特輯』1(鉄道図書刊行会、1977年)
- ^ a b 『形式別 国鉄の蒸気機関車I』p.43
- ^ 『地方鉄道及軌道一覧 : 昭和18年4月1日現在』(国立国会図書館デジタルコレクション)
- ^ 川崎車両(和田岬駅)『地方鉄道及軌道一覧. 昭和18年4月1日現在』(国立国会図書館デジタルコレクション)
- ^ 芳村伸夫「僕の勿来物語」『とれいん』No.178
- ^ 日立製作所『地方鉄道及軌道一覧 : 昭和18年4月1日現在』(国立国会図書館デジタルコレクション)
固有名詞の分類
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