周波数変調 FMステレオ方式

周波数変調

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/22 15:40 UTC 版)

FMステレオ方式

和差方式

モノラル放送との互換性を保つため、和差方式が一般的に用いられる。この和差方式は、FMステレオ受信機を用いればステレオを聞くことができ、ステレオに対応していないFM受信機では、右・左の和であるモノラル音声のみを再生するので互換性が保たれる。主信号を左右の和であるL+R信号とし、副信号は可聴周波数よりも十分に高く設定した副搬送波を差信号のL-R信号で変調したものとする。この主信号と副信号とを合成したコンポジット信号で放送の主搬送波(基本搬送波)を変調する。モノラルの受信機しか有さない場合、主信号のL+R信号のみを再生すれば左右の偏らない放送を聞くことができる。ステレオを再生する場合、主信号のL+Rと副信号のL-Rの両方を再生した後、それぞれの和と差を取れば、(L+R)+(L-R)=2L、(L+R)-(L-R)=2R、となり、左右の信号が再生される。FMステレオ放送の場合、副搬送波を振幅変調するか周波数変調するかにより方式が異なってくる。

AM-FM方式

AM-FM方式ステレオ変調の原理
AM-FM方式ステレオ復調の原理
和差方式
右・左の差信号で38kHzの副搬送波を平衡変調して副信号とする。その信号と19kHzのパイロット信号とを右・左の和信号に多重して放送の搬送波を変調する。ステレオを再生する場合は、19kHzのパイロット信号を2逓倍し38kHzの副搬送波を生成することで副信号をAM復調してL-R信号を再生し、FM復調した、主信号であるL+R信号との間で和差を取ることにより左右を分離する。送信側で差信号を平衡変調した結果FM変調のスペクトルには38kHzの副搬送波は含まれておらず、受信側で19kHzのパイロット信号を頼りに生成する必要がある。送信側で取り除いた副搬送波を受信側で生成するという手間を踏む理由は、FM変調の際に変調度のほとんどを音声信号に割り当てるための工夫である(副搬送波のパワースペクトルを変調に割り当てない)。こうすることでS/N比が高い送信波が得られる。日本におけるFMステレオラジオ放送方式として用いられている。
スイッチング方式
38kHzのスイッチング信号により、左右の信号を切り替えてコンポジット信号を生成する。再生する場合はこの逆で、コンポジット信号を38kHzのスイッチング信号で同期を取って左右に分離する。原理上は同期検波と同じである。ここで、スイッチング方式により得たコンポジット信号を分析すると、L+Rの信号と、L-Rの包絡線で38kHzを変調したDSB波との合成であることがわかる。したがって、スイッチング方式で変調したコンポジット信号は和差方式でも再生することができる。また、和差方式によりコンポジット信号を生成する際に、副信号を特定のレベルに合わせればスイッチング方式のコンポジット信号と等価な信号が得られる。したがって和差方式で変調したコンポジット信号をスイッチング方式で再生することも可能になる。実際にはスイッチング方式の方が回路の構成が簡単なため、FMステレオの再生はスイッチング方式またはスイッチング方式に準じた同期検波が使われる。

FM-FM方式

第二音声または差信号で副搬送波を周波数変調した信号とパイロット信号とを主信号または和信号に多重して周波数変調するもので、日本におけるテレビ音声多重放送(二か国語音声・ステレオ音声)方式として用いられている。ステレオの再生方法は和差方式である。

その他のFMステレオ方式

  • FM-PM方式
  • FMXステレオ方式

注釈

  1. ^ 一般にFMが多用されるVHF帯であるが、地上の航空管制官と上空の飛行機との間で通信する航空無線が「あえて振幅変調を使っている」のは、この特性により、無線通信が不可能になるのを防ぐためである。

出典

  1. ^ 第一級陸上特殊無線技士無線工学試験 JZ16B
  2. ^ a b 高木利弘『スマートTVと動画ビジネス 次世代メディアをデザインするのは誰か?』2012年、インプレスジャパン、205頁
  3. ^ a b 高木利弘『スマートTVと動画ビジネス 次世代メディアをデザインするのは誰か?』2012年、インプレスジャパン、206頁
  4. ^ a b c d e f g h i 日本ラジオ博物館「FM放送の始まり」


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