呉偉業
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詩風
梅村の特徴として、先朝の滅亡を悲しみ、過去に傷心したことがあげられる。そのことが詩の作風にも大きく影響しており、彼の詩は祖国が滅んだことへの嘆き、自分が祖国を裏切ったことへの怨みなどによる哀歌が多い。特に明から清への交替は、明からすれば異民族に征服されたことになる。それ故に彼の明への追悼、清への怨みはとても大きく、強く作品に反映されている。また、幼少期から才能が開花し、若くして朝廷に召され地位を手に入れた梅村であるが、その後明朝はどんどん傾いていき、輝かしい人生は明朝とともに崩れ落ちていった。全体的に梅村の作品に暗い印象があるのは、これらの激動の人生が理由である。しかし、彼の作品のすべてが亡国を嘆いたものであるわけではなく、若い頃の作品は華やかな才能が輝き出るものであった[14]。また、彼が生み出した叙事詩型は梅村体(體)と名付けられて後世に大きく影響した[15]。
梅村は詩に関しては唐を模範とし、文においては唐宋を模範とすると主張するものの、論理性はあまり見受けられない[16]。そして典故を多用する[17]。さらに風刺のさいには曖昧な表現を用いるので、注釈を見ながら読んでも意味を理解できないことがある[18]。(風刺の曖昧な例として、「巻七曇陽観に文学博介石を訪う」という作品がある。これは明が滅亡した際にあからさまに明への思いを詩にすることができなかったため、舜の伝説を用いることで雲南で殺された桂王を表現したものである[19]。)
また、梅村は艶詩でも有名である。しかしその艶詩はただ華やかなだけではなく、亡国の悲しさが込められている。艶詩に亡国の悲哀を織り交ぜることにより哀感を加えるというのは、梅村の得意とするところである[20]。
秋風落日、長笛哀歌、江湖放舟等を愛用するが、これは唐代の詩の慣用句を組み合わせて使っているものであり、復古派の特徴でもある[21]。
梅村体の重大な欠陥は一つの詩の中に同じ文字を何度も使うことである。「鴛湖曲」という詩を例に挙げると、湖が五回、煙と風がそれぞれ四回、柳、雨、樹がそれぞれ三回、さらに草、月、驕、船、桃、天、葉が二回ずつ用いられている。しかし梅村の詩はこれらの文字の重複を気づかせないほどに美しく構成されており、この欠点に気付けないほどである[22]。
梅村の詩の総数は、本により異なっている。康熙初年に刊行された二十巻の無注本の配列によった集覧、箋注いわく詩は千三十首、詩余九十二首とされている。梅村の詩集、注は以下のとおり。
1.梅村集四十巻 康熙七、八年刊(現存する以下の文集の基盤となっている。弟子の編集という形をとっているが、本人の編集だという説がある[23]。)
2.梅村家蔵稿五十九巻年譜四巻 宣統三年刊(この本には通行本に含まれない詩が比較的多く載っているものの、それでもすべてを網羅しているわけではない[24]。)
3.梅村先生編年詩集十二巻 程穆衡注 民国十八年刊
4.呉詩集覧二十巻 靳栄藩注 乾隆四十年刊
5.呉詩箋注十八巻 呉翌鳳注 嘉慶十九年刊
以上の文集を確認してみても、除外された作品が多く存在することがわかる。これは対清戦争をうたったもの、清朝に対する批判をうたったものを削除したのではないかと考えられる[25]。また、そのような理由ではなく削除された作品もあり、それらは梅村自身満足のいっていない作品であったからと考えられている。自分の身に危険が及ぶであろう作品、満足のいっていない作品を梅村自身が削除したことで、文集から消えた作品がうまれたのである[26]。
梅村の親友であった陳子龍は、梅村の詩を「はなはだ李頎に似たり」と称している。これは、李頎の七律が王世貞から高く評価されていたからではないかとされている[27]。
- ^ 福本雅一『中國詩人選集二集 第12巻 呉偉業』12、岩波書店〈中國詩人選集二集〉(原著1962年6月22日)、初版、2頁。ISBN 4001005328。
- ^ 福本雅一『中國詩人選集二集 第12巻 呉偉業』12、岩波書店〈中國詩人選集二集〉(原著1962年6月22日)、初版、5頁。ISBN 4001005328。
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