分散ファイルシステム 分散ファイルシステムの概要

分散ファイルシステム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/14 15:02 UTC 版)

クライアントノードはファイルシステムを構成している二次記憶装置に直接アクセスすることはできないが、通信プロトコルを使ってネットワーク経由でやり取りする。その通信プロトコルがどう設計されているかにもよるが、アクセスリストまたはケーパビリティに基づいてクライアントとサーバの双方でファイルシステムへのアクセスを制限することも可能である。

これに対してクラスタファイルシステム英語版では、全ノードがファイルシステムを構成しているストレージ全体に一様に直接アクセスできる。その場合、アクセス制御はクライアント側の責任となる。

分散ファイルシステムには一般に、透過的レプリケーションフォールトトレラント性に関する機能がある。すなわち、ファイルシステムを構成するノード群の一部がオフラインになっても、データを失うことなくシステムとして機能し続ける。

分散ファイルシステムと分散データストアの違いはあいまいだが、分散データストアは一般にLANでの利用に特化していることが多い。

歴史と具体例

このようなファイルサーバは1970年代に開発された。1976年、DECDECnet Phase II の一部である Data Access Protocol 実装として File Access Listener (FAL) を開発したのが、世界初の広く使われたネットワークファイルシステムとなった。1985年、サン・マイクロシステムズが世界初の広く使われる Internet Protocol ベースのネットワークファイルシステムとなる Network File System (NFS) を開発した。他のネットワークファイルシステムとしては、Andrew File System (AFS) や Apple Filing Protocol (AFP)、NetWare Core Protocol (NCP)、Server Message Block (SMB)がある。

透過性

分散ファイルシステムは透過性を備えていることが多く、プログラムやユーザーから見ればネットワーク経由のファイルがローカルディスク上のファイルと全く同じに扱える。サーバや記憶装置の多様性と分散は隠蔽される。ファイルの配置やデータ転送はファイルシステムに任されている。

性能

ネットワークファイルシステムでは、処理にかかる時間も重要な課題である。通常のファイルアクセスならば、これはディスクアクセス時間と少しのCPU処理時間に相当する。ネットワークファイルシステムでは、分散構造であるが故の余分なオーバヘッドが必要となる。このオーバヘッドには、サーバに要求を届けるまでの時間、応答をクライアントまで戻すのにかかる時間などが含まれる。どちらの方向も情報転送時間だけでなく、通信プロトコルソフトウェアの実行にかかるCPU時間が含まれる。ネットワークファイルシステムの性能もある意味でネットワークファイルシステムの透過性の一部と言える。すなわち、理想的なネットワークファイルシステムの性能はローカルなディスクアクセスと同程度になる。

同時ファイル更新

ネットワークファイルシステムは複数のクライアントプロセスが同じファイルを同時に更新できるようにしなければならない。あるクライアントのファイル更新によって別のクライアントの参照や更新が妨害されてはならない。そのため並行性制御ロックをファイルシステムに組み込むか、追加プロトコルに組み込む必要がある。


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