位置的頭蓋変形症
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/11 06:11 UTC 版)
沿革
欧米と日本では、沿革に大きな違いがある。
欧米
欧米では、うつ伏せ寝が乳幼児突然死症候群の危険因子であることが判明したため、うつ伏せ寝の文化から仰向け寝の文化へと一大転換が図られた。しかし、その結果として乳幼児の頭蓋変形が飛躍的に増加し[1]、頭蓋変形に対する医学的な研究が発展するとともに社会的な意識も高まった。
日本
他方、日本では、そもそも仰向け寝の文化であったことに加えて[2]、下記のような誤解が蔓延しているため、頭蓋変形に対する意識が高まらず、現在に至っている。
- 「頭の形は遺伝で決まる」という誤解
- 「頭の歪みは自然に治る」という誤解[3]
- 「いびつ頭は健康に影響しない」という誤解
種類
頭位性斜頭症(変形性斜頭症)
「頭位性斜頭症(とういせいしゃとうしょう、英:positional plagiocephaly)」または「変形性斜頭症(へんけいせいしゃとうしょう、英:deformational plagiocephaly)」とは、非対称な頭蓋の状態のこと[4][5]。多くの場合、片側性の後頭部の平坦化と対側の前頭部の突出により菱形の頭蓋となる[4][5]。
頭位性短頭症(変形性短頭症)
「頭位性短頭症(とういせいたんとうしょう、英:positional brachycephaly)」または「変形性短頭症(へんけいせいたんとうしょう、英:deformational brachycephaly)」とは、頭長幅指数が81%以上の状態 (客観的)または前後径が幅に比較して短い状態(主観的)のこと[4][5]。後頭部扁平を併発することが多い[4][5]。
頭位性長頭症(変形性長頭症)
「頭位性長頭症(とういせいちょうとうしょう、英:positional dolichocephaly)」または「変形性長頭症(へんけいせいちょうとうしょう、英:deformational dolichocephaly)」とは、頭長幅指数が76%以下の状態(客観的)または明らかに頭の前後径が横径に比較して増加している状態(主観的)こと[4][5]。
後頭部扁平
後頭部扁平(こうとうぶへんぺい、英:flat occiput)とは、後頭部の曲率半径が減少している状態のこと[4][5]。俗に「絶壁頭(ぜっぺきあたま、英:flat head)」と呼称される。短頭症に伴うことが多いため、区別されないことが多い[4][5]。ただし、両者は区別すべきだとされる[4][5]。
疫学
日本
日本では、生後1カ月から7カ月までの正常乳児の75%に位置的頭蓋変形がみられた[6]。
アメリカ
アメリカでは、1歳未満の乳児の16~48%に位置的頭蓋変形がみられた[7]。
カナダ
カナダでは、生後7から12週までの健康な新生児の46.6%に頭位性斜頭症がみられた[8]。
- ^ a b c Laughlin, J.; Luerssen, T. G.; Dias, M. S.; Committee On Practice Ambulatory Medicine (2011). "Prevention and Management of Positional Skull Deformities in Infants". Pediatrics. 128 (6): 1236–41. doi:10.1542/peds.2011-2220. PMID 22123884.
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- ^ 高槻病院 赤ちゃんの頭の形外来参照
- ^ a b c d e f g h Elements of morphology: Standard terminology for the head and face
- ^ a b c d e f g h 日本小児遺伝学会「国際基準に基づく小奇形アトラス 形態異常の記載法 ―写真と用語の解説」
- ^ 川口幸義・松下明成・河合尚志・古田千事「斜位乳児のハンドリングの指導について」
- ^ PMID 18678803
- ^ PMID 23837184
- ^ Choices, NHS. "Plagiocephaly and brachycephaly (flat head syndrome) - NHS Choices". www.nhs.uk. Retrieved 2016-05-30.
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- ^ PMID 16404269
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- ^ a b c d e 医院紹介 - AHS Japan
- ^ 藍原康雄「乳幼児における位置的頭蓋顔面変形症に対するMolding Helmet治療の有用性」(医学のあゆみ 243(10): 916 -917 2012)
- ^ 阪下和美『正常ですで終わらせない!子どものヘルス・スーパービジョン』(東京医学社、2017/4/15、ISBN 978-4885632761)pp89‐90。
- ^ Cleveland Clinic(クリーブランド・クリニック)"Repositioning Techniques for Infants"
- ^ a b PMID 20880942
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- ^ https://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/pdf13/K133397.pdf
- ^ a b PMID 24784879
- ^ 日本生まれの完全オーダーメイドなヘルメット アイメット - アイメット(Aimet)
- ^ 赤ちゃんの未来まで|日本製頭蓋矯正ヘルメット クルム - クルム(Qurum)-
- ^ “赤ちゃんの頭の形を治療する頭蓋形状矯正ヘルメット ベビーバンド”. ベビーバンド(babyband) - 頭蓋形状矯正ヘルメット. 2022年12月10日閲覧。
- ^ スターバンド - AHS Japan
- ^ http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1651-2227.2010.01872.x/full
- ^ 「ヘルメット」 - 秋山莉奈オフィシャルブログ
- ^ 「頭の形外来」 - 大渕愛子オフィシャルブログ
- 1 位置的頭蓋変形症とは
- 2 位置的頭蓋変形症の概要
- 3 診断
- 4 日常生活への影響
- 5 脚註
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