予備選挙 概要

予備選挙

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/09 21:58 UTC 版)

概要

一般論としては、候補者選定を党の有力者によって決定する方式に比べて、情実を排除し人気のある候補を選出することができる。一方で、予備選挙投票者は本選挙投票者に比べて熱心な活動家の比率が多いため、本選挙の鍵を握る中間層から敬遠されるような極論を唱える候補に有利に働くことや、候補者選出に選挙管理組織や候補者陣営に多くの費用がかかることなどのデメリットも存在する。

また予備選挙の選挙運動や選挙戦へのマスメディアの関心が本選挙に向けてのPRともなる一方で、選挙戦が過熱しネガティブ・キャンペーンが行われたり修復困難な亀裂が生じたりすることにより本選挙に悪影響を与える可能性もある。

アメリカ合衆国

アメリカ合衆国大統領選挙や連邦議会議員選挙や州知事選挙等に先立ち、政党公認候補を決める予備選挙(Primary election)が州政府による公営選挙として実施される。州ごとに、秘密投票を行う狭義の予備選挙の場合と、集会の場で公開投票を行う党員集会の場合があるが、両者を総称して予備選挙と呼ぶことも多く、ここではそのように用いる。

有権者が、あらかじめ所属を届けている党の候補者にのみ投票できる州と、政党登録にかかわりなく任意の党の候補者に投票できる州がある。一つの州の中では二大政党の予備選挙投票が同一日に行われることが多いが、各州の予備選挙投票日はまちまちである。そのため大統領選挙予備選挙の場合、終盤において投票が行われる州の予備選挙を待たずして党公認候補が事実上確定してしまうこともある。正式には予備選挙で選ばれた各州の党代表が、党大会の場でそれぞれの持ち票を推薦候補に投じ、最多数の指名票を受けた者が党公認大統領候補となる。

特に大統領選挙では、二大政党以外から立候補する際の要件が厳しい州も多いため、予備選挙を経ずに本選挙に出馬しようとしても、立候補の段階から困難を伴う。議員選挙では、稀に無所属での当選例がある。

現職者であっても、改選に際して再び党の候補者指名を受けるためには、改めて予備選挙で勝利する必要があることが一般的である。現職者は予備選挙で勝利することが多いものの、稀に敗北して再選断念に追い込まれることもある。

連邦議会議員において政党公認候補を決める予備選挙は注目されることは少ないが、2021年アメリカ合衆国議会議事堂襲撃事件に絡んでドナルド・トランプ元大統領への弾劾に賛成した共和党下院議員10人について、共和党支持者層に影響のあるトランプは予備選挙で当該現職議員10人を次回選挙での当選を阻止すべく親トランプ派新人候補を支援した。10人中4人が次回選挙への不出馬を表明する中で、連邦議会襲撃事件に絡む下院特別委員会副委員長を務める共和党内の反トランプの急先鋒であるワイオミング州選出のリズ・チェイニーら4人[注釈 1]が予備選で親トランプ派新人候補に敗退し、予備選で親トランプ派の新人候補に勝利した現職候補は2人[注釈 2]だったことが大きく報道された。

イギリス

保守党

イギリス保守党では党首が欠けた際に党首選挙を行うが、20名以上の党所属下院議員の推薦を得た候補が3名以上いる場合、党所属下院議員による「Stage 1」の投票によって候補者を2名に絞る。このStage 1の投票は「Primary」という呼称ではないが、予備選挙に相当する。Stage 1では、得票数が30票未満の候補と最下位の候補が落選となり、候補者が2名になるまで投票を繰り返す。Stage 1で選ばれた2名の候補は「Stage 2」に進み、両者のうち一般党員による投票で多数を得た候補が党首に当選する[1]

なお、下院議員公認候補の選定は党機関が行うことが一般的だが、一部の選挙区で予備選挙(Primary)を用いた事例もあった。


出典

  1. ^ Leadership elections: Conservative Party イギリス下院図書館(2022年)

注釈

  1. ^ チェイニーの他の3人は、ワシントン州選出下院議員のジェイミー・ヘレラ・ビュートラーとミシガン州選出下院議員のピーター・メイヤーとサウスカロライナ州選出下院議員のトム・ライス。
  2. ^ ワシントン州選出下院議員のダン・ニューハウスとカリフォルニア州選出のデビッド・ヴァラダオ。


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