七人の魔道師
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『七人の魔道師』(しちにんのまどうし)は、栗本薫のヒロイック・ファンタジーシリーズ『グイン・サーガ』の外伝第1巻。
概要
初出は『S-Fマガジン』1979年10月臨時増刊号で、全4話が一挙に掲載された(挿画:深井国)。解説本『グイン・サーガ・ハンドブック』所収の著者インタビューによれば、同年7月1日から8月22日にかけて執筆されたという。400字詰原稿用紙にして550枚の長さであり、これは、1巻当たり400枚を基本の長さとするグイン・サーガにおける、数少ない例外の一つとなっている[要出典]。その後、1981年2月15日にハヤカワ文庫JAより〈JA130〉として刊行された(ISBN 4-15-030130-1)。表紙、口絵はともに加藤直之。解説は鏡明。
『S-Fマガジン』2005年6月号掲載の著者インタビュー(正伝第100巻刊行時)によると、正伝が本書の時代に到達するのは第120巻前後であると予想されていた。実際には第125巻『ヤーンの選択』(著者最晩年の2009年刊行)で初めて本書のエピソードについて触れられた。また、栗本薫の逝去後に別著者によって書きつがれた正伝133巻『魔聖の迷宮』では、明らかに『七人の魔道師』よりも後の時系列の物語となっており、本作に登場した人物も登場している。
あらすじ
北の大国ケイロニアの首都サイロンに黒死の病が猖獗を極めていた。蔓延する死病を防ぐ方策を求め、ケイロニア王グインは旧知の魔道師イェライシャを訪ねて、多くの魔道師が集う、まじない小路へ赴く。魔道師アラクネーの蜘蛛に襲われていたところを救った踊り子ヴァルーサを伴い、イェライシャを訪ねたグインは、この災厄の影にグインの魂を手中にせんとする闇の力が働いているとの示唆を受ける。まもなくして黒死の病の流行はおさまる。が、代わって別の怪異がサイロンを襲う。サイロンの上空に、醜い矮人と、そして盲目の男の巨大な顔が浮かび、市中を見下ろし始めたのだ。グインは再びヴァルーサを伴い、王宮たる黒曜宮から急ぎ市中へと向かう。そこで彼を待ち受けていたのは、サイロンを、そしてグインを我が物にせんと野望を燃やす、五人の黒魔道師たちだった。サイロンを蹂躙する、黒魔道師たちの邪悪な魔道。容赦なく街を破壊していく、目に見えぬ巨大な馬のひづめ。グインは、自らが治めるサイロンの街を、そしてケイロニアの国を救うべく、圧倒的な闇の力に一人、立ち向かっていく。
登場人物
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- グイン
- ケイロニアの豹頭王。ケイロニア皇女シルウィアの夫。
- ヴァルーサ
- サイロンのまじない小路に住む魔道師アラクネーの踊り子。
- イェライシャ
- サイロンのまじない小路に住む白魔道師。〈ドールに追われる男〉。
- アルス
- サイロンのタリッド界隈を根城とする女衒。鼠のような風貌の小男。
- タミヤ
- ランダーギア出身の黒人の魔道師。〈黒き魔女〉。《古き神々》ラン=テゴスの使い女[注 1]。
- ルールバ
- キタイの占い師。〈闇の司祭〉グラチウスの弟子。〈石の目のルールバ〉。失われた両眼の替わりに、額に石のひとつ目を持つ。
- エイラハ
- ブダガヤの呪術師。ドールの祭司。〈矮人エイラハ〉。蛙のような容姿の醜い矮人。
- ババヤガ
- ノスフェラスの魔道師。〈長舌のババヤガ〉。全身を苔や茸類に覆われた隠者。
- イグ=ソッグ
- 《大導師》アグリッパの実験から生まれた人造生命。〈ひづめあるイグ=ソッグ〉。いくつもの動物を合体させたような、一つ目の怪物。
- ヤンダル・ゾッグ
- キタイの王。東方最大の魔道師。
- ハゾス
- ケイロニアのランゴバルド選帝侯。グインの右腕ともいうべき忠臣。
- シルウィア[注 2]
- ケイロニア皇女にして王妃。グインの妻。
正伝との矛盾
- ヤンダル・ゾッグは本書では、ドール教団の東方における最高司祭である魔道師であり、途方もなく年齢を重ねた老人(人間)として姿を現わすが、正伝に登場したときには(ドール教団とは無関係な)半竜半人の異星人ということになった。
- 正伝において、グインは、キタイに立ち寄った際、すでにヤンダル・ゾッグと邂逅し、敵対しているはずなのに、その後の物語である本書では何故か、ヤンダル・ゾッグとはじめて邂逅したことになっている[注 3]。
- 正伝において、ヤンダル・ゾッグのことを知っているはずのイェライシャが、本書では当初ヤンダル・ゾッグの名前すら思い出せない。
- 本書における「七人の魔道師」とはイェライシャとヤンダル・ゾッグを含めての人数であるが、正伝でイェライシャが7人の魔道師のことを紹介するときには、イェライシャ本人やヤンダル・ゾッグと別に7人の魔道師がいるように語っている。
イメージアルバム
グイン・サーガを題材とした、一連のイメージアルバム(詳細はグイン・サーガの関連作品 - イメージアルバムを参照)の中に、本書を題材とした作品が含まれている。本書に登場する7人の魔道師それぞれをテーマとした曲を間奏曲でつなぐという、『展覧会の絵』を模した形で構成されている。曲調はシンセサイザーを多用したプログレッシヴ・ロック調で、やや前衛的なものとなっている。
- 『グイン・サーガ 七人の魔道師』
- 発売日:1986年9月1日
- 発売元:日本コロムビア
- 作・編曲:淡海悟郎
- 演奏:淡海悟郎と怨霊楽団
- 収録曲
- 前奏曲:ようこそ まじない小路へ(Prelude: Welcome to the Magic Alley)
- 妖艶なるタミヤのダンス(Thamia’s Dance)
- 間奏曲:サイロンの悪夢(Intermezzo: Nightmare of Cylon)
- エイラハの哄笑(Eyraxa)
- 間奏曲:グラッグの闇の馬(Intermezzo: Horses from the Underground)
- ルールバの顔(Luhrba in the Sky)
- 間奏曲:ヴァルーサ(Intermezzo: Valusa)
- イグ=ソッグ、ひづめある者(Igg-Soggue the Hoofed)
- 間奏曲:悲しみのサイロン(Intermezzo: Cylon in Grief)
- 長舌のババヤガ(Babaiagah of the Long Tongue)
- 間奏曲:皇女シルヴィア(Intermezzo: Heartless Sylvia)
- ドールに追われる男イェライシャ(Yelaisha: Fugitive from Dor)
- 間奏曲:黒魔殿(Intermezzo: Monolith)
- ヤンダル・ゾッグ(Jandar-Dzogg)
漫画
本書を原作[注 4]とする、柳澤一明の作画による漫画が描かれている。『コミックフラッパー』誌(メディアファクトリー発行)2000年7月号から2003年1月号まで断続的に連載されたのち、単行本化された。
- 『グイン・サーガ 七人の魔道師 1』(メディアファクトリー MFコミックス)(2001年3月1日発行、ISBN 4-88991-775-6)
- 『グイン・サーガ 七人の魔道師 2』(メディアファクトリー MFコミックス)(2002年1月31日発行、ISBN 4-8401-0404-2)
- 『グイン・サーガ 七人の魔道師 3』(メディアファクトリー MFコミックス)(2003年1月31日発行、ISBN 4-8401-0478-6)
また、以下の翻訳版も発売されている。
- 香港中文版
- 訳:楊釗汶
- 『七人之魔道師 壱』(玉皇朝出版集團 JD COMICS)(2002年6月1日発行、ISBN 962-997-832-6)
- 『七人之魔道師 貳』(玉皇朝出版集團 JD COMICS)(2002年7月1日発行、ISBN 962-997-833-4)
- 『七人之魔道師 參』(玉皇朝出版集團 JD COMICS)(2003年7月1日発行、ISBN 962-8821-88-1)
- 台湾中文版
- 訳:吳傳賢
- 『豹頭王傳說 七個魔道師 1』(東立)(2003年10月22日発行、ISBN 986-11-2887-5)
- 『豹頭王傳說 七個魔道師 2』(東立)(2003年10月22日発行、ISBN 986-11-2888-3)
- 『豹頭王傳說 七個魔道師 3』(東立)(2004年5月10日発行、ISBN 986-11-4056-5)
- タイ語版
-
- 『เดชราชันเสือดาว [มหากาพย์ กวิน] เล่มที่ 1』(วิบูลย์กิจ)(2004年4月2日発行)
- 『เดชราชันเสือดาว [มหากาพย์ กวิน] เล่มที่ 2』(วิบูลย์กิจ)(2004年9月26日発行)
- 英語版
- 訳:Ishmael Arthur
- 『THE GUIN SAGA Manga Vol.1 The Seven Magi』(VERTICAL)(2007年12月発行、ISBN 978-1-932234-80-0)
- 『THE GUIN SAGA Manga Vol.2 The Seven Magi』(VERTICAL)(2008年1月発行、ISBN 978-1-934287-07-1)
- 『THE GUIN SAGA Manga Vol.3 The Seven Magi』(VERTICAL)(2008年3月発行、ISBN 978-1-934287-08-8)
- 韓国語
- 訳:장은아(チャン・ウナ)
- 『구인사가 칠인의 마도사 1권』(아이큐점프 코믹스) (2005年9月発行、ISBN 89-532-6567-3)
- 『구인사가 칠인의 마도사 2권』(아이큐점프 코믹스) (2005年9月発行、ISBN 89-532-6726-9)
脚注
注釈
- ^ クトゥルフ神話の要素が入っている。
- ^ 本書での表記は「シルウィア」であるが、この表記が用いられているのは本書を初めとする一部であり、正伝の大部分では「シルヴィア」と表記されている。このことについて作者は、『S-Fマガジン』1982年12月増刊号所収のエッセイ「豹(グイン)より若き友への手紙」の中で、「どっちの語感も好きで、一方をえらぶのがイヤ」だからだ、と述べている。その後、正伝17巻『三人の放浪者』あとがきにおいて、シルヴィアで統一することを宣言した。
- ^ ただし、正伝ではヤンダル・ゾッグと最初の邂逅より後にグインの記憶喪失が発生しているため、本作における邂逅がグインの記憶上ははじめての邂逅と見做せないこともない。
- ^ 連載途中から原案となっている。
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