モジホコリ 培養

モジホコリ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/12 06:02 UTC 版)

培養

モジホコリの培養には湿らせた紙や寒天培地を用いる。餌はオートミールが適している。培地の湿度や餌を適度に保つことで長期間の保持が可能である。光が当たるなどすると子実体への移行が起こるので、変形体を維持する場合には適温の暗所で保管する[4]

知性

モジホコリは単細胞生物ながら、状況により様々な「知性」を示す。

迷路の解決

中垣俊之らの研究グループは、モジホコリが迷路実験において餌までの最短経路を発見する能力を備えている事を見出し、ネイチャー誌に報告した[5]。これはモジホコリを 30cm 四方の迷路に餌を用いて誘い込み、ゴールの餌を目指して迷路を解決させるものである。中垣らはこの論文において、モジホコリがある種の原始的な知能を備えていると結論している。

通常、モジホコリの変形体は管状の仮足を広げてネットワーク[要曖昧さ回避]を作り、到達可能な平面を充たす。しかし迷路内の離れた2点に餌を置くと、変形体はその2点間を結ぶ経路に原形質を集約する。これは少ない原形質で効率良く餌を得るための戦略であると考えられている。このような挙動が2点間の最短経路を選択させ、効率的に迷路を解くことになる。

環境予測

中垣らはまたモジホコリの周囲の環境を変化させて変形体の挙動を観察した。寒天培地上を動く変形体に対し、毎時最初の10分間だけ低温や乾燥によりストレスを与えた。ストレスを与えている間、変形体は動作が鈍る。このようなストレス付与を3回行った後でこれを止め、変形体がパターンを学習したかどうかを観察した。すると、多くの細胞は再び来るであろうストレスを予測し、60分毎に運動を減縮した。しばらく安定な環境に変形体を置くと、細胞は動作の減縮をしないようになったが、再びストレスを与えると60分ごとの挙動の変化が再度見られるようになった。動作間隔は60分に限らず、30分から90分の間で任意に学習させることができるという[6]

粘菌コンピュータ

ブリストルにあるウエスト・オブ・イングランド大学(University of the West of England)の Adamatzky は、光と餌を使ってモジホコリの挙動を正確に制御できるとの考えを示した。モジホコリの変形体は同じ刺激に対しては同じように振舞うことから、生体コンピュータの材料として理想的な生物であると述べている(→粘菌コンピュータ[7][8]


  1. ^ Hausmann, Hulsmann, Radek, p. 29.
  2. ^ Moriyama Y, Kawano S (2003). “Rapid, selective digestion of mitochondrial DNA in accordance with the matA Hierarchy of multiallelic mating-types in the mitochondrial inheritance of Physarum polycephalum.”. Genetics 164 (3): 963-75.  PMID 12871907
  3. ^ Nakagaki T, Yamada H, Ueda T (1999). “Modulation of cellular rhythm and photoavoidance by oscillatory irradiation in the Physarum plasmodium.”. Biophys Chem. 82: 23-8. doi:10.1016/S0301-4622(99)00099-X. https://doi.org/10.1016/S0301-4622(99)00099-X. 
  4. ^ 変形菌と親しむ 変形菌の飼い方 - 国立科学博物館
  5. ^ Nakagaki T, Yamada H, Tóth A (2000). “Intelligence: Maze-solving by an amoeboid organism”. Nature 407: 470. doi:10.1038/35035159. 
  6. ^ Barone Jennifer (2008年12月9日). “Top 100 Stories of 2008 #71: Slime Molds Show Surprising Degree of Intelligence”. Discover Magazine. 2009年3月4日閲覧。
  7. ^ Andrew Adamatzky (2008年8月6日). “Steering plasmodium with light: Dynamical programming of Physarum machine”. arXiv. 2009年8月10日閲覧。
  8. ^ 世界初の菌類を使った生物ロボットの開発 - MAKE: Japan





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