マトリックス支援レーザー脱離イオン化法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/13 06:41 UTC 版)
利用
いわゆるプロテオミクスの現場では、MALDIは通常のSDS-PAGEや二次元電気泳動による分離操作と組み合わせて用いられる。ペプチドマスフィンガープリンティング(PMF)は利用の代表例である。
通常のMALDIは高真空条件下でイオン化を行うので、クロマトグラフィーと連結した自動解析には向かない。前処理としてクロマトグラフィーを用いる場合は、分離した試料を手作業で分取してMALDIにかけるという操作が必要になる。
MALDIの発展
AP-MALDI
AP(atmospheric pressure、大気圧)の名の通り、大気圧下でイオン化が可能なMALDIである。イオン化部が高真空を要求しない事で、接続可能な前処理用の分離装置や質量分析部の種類が増え、多彩な分析系の構築が可能となる。
IR-MALDI
通常のMALDIには前述の通り窒素レーザーが用いられるが、IRレーザーによるイオン化も実用化が進んでいる。IRによるイオン化は窒素レーザーのようなUVと比較して多価イオンやクラスターイオンが生成されやすく、分解能が落ちる傾向がある。しかしながらIR-MALDIでは選択可能なマトリックスの種類が多く、通常使用されるものの他にコハク酸、グリセリン、尿素、あるいは水などを用いる事ができる。また、多価イオンが生じやすい一方でフラグメントイオンの生成が抑えられるので、UV-MALDIでは分解してしまうサンプルもIR-MALDIで分析できる可能性がある。
参考文献
- Karas M, Bachman D, Bahr U, Hillenkamp F (1987). “Matrix-Assisted Ultraviolet Laser Desorption of Non-Volatile Compounds”. Int J Mass Spectrom Ion Proc 78: 53-68.
- Tanaka K, Waki H, Ido Y, Akita S, Yoshida Y, Yoshida T (1988). “Protein and polymer analyses up to m/z 100000 by laser ionization time-of flight mass spectrometry”. Rapid Commun.Mass Spectrom 2: 151-3.
- Arakawa R, Okuno S, Wada Y (2004). “Recent Developments in Soft Laser Desorption / Ionization Mass Spectrometry”. J Mass Spectrom Soc Jpn 52 (1): 33-8.
- これならわかるマススペクトロメトリー 志田 保夫 ほか著 化学同人 (2001) ISBN 4-7598-0863-9
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