マグナム (実包)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/10 02:27 UTC 版)
解説
酒類の増量ボトルを指す「マグナム」を語源としている。一般に、弾丸にはすでに存在している製品を用い、ケース(薬莢)を通常より長くしたりネックの角度を強くしたりすることで薬莢の内容量を増加させて、より多くの火薬が入るようにしている。
ハンドガン用のマグナム弾の場合、火薬がライフル弾に使用されるような遅燃性ではなく、拳銃の短いバレルでも弾頭に十分なパワーを伝えるために散弾銃のものとは異なる拳銃弾薬独自の速燃性のものを大量に用いたり、ライフル弾に使用されるような(同一ではない)遅燃性ガンパウダーを用いる等、マズルエネルギーを増やすよう工夫された弾薬も多い。他の銃種であっても、より威力を発揮できる方向に装薬の種類を最適化する場合もある。
火薬量だけ見ればホットロードと似ているが、ホットロードでは既存の弾丸・薬莢を用い、発射薬だけを増やして強装弾とするのに対し、マグナムでは既存の弾丸と拡大型の薬莢を組み合わせ、当初からそれだけの火薬を使用できるようデザインされている点で異なる。事実、大部分のマグナム弾はメーカーにより作成されたファクトリーロードの弾薬である。ただしマグナム弾の規格自体が通常の弾薬よりも強度面などでパワーアップに有利な側面を持つため、マグナム弾をさらにホットロード化した弾薬も製作される事がある。
実包の開発経緯によっては、マグナム弾でなかったものがマグナム相当の物になってしまう事がある。例を挙げれば.308ウィンチェスター(7.62mm×51)は元々.30-06スプリングフィールド(7.62mm×63)の短縮版であるため、.308から見れば.30-06はマグナム弾に相当するし、.30-06から見れば.308はカービン弾となる。同様の例は.45ACP(11.43mm×23)を短縮した.45GAP(11.43mm×19)がある。
ガンスミス(Gunsmith)によって開発されたものの、量産されていない銃弾及びカスタム・カートリッジをワイルドキャットと呼ぶ。また、.45ロング・コルトを延長した.454カスールのように、実質的にはマグナム弾だがマグナムの名を冠さないものも存在している。
ことアメリカにおいては、大口径のマグナム弾使用拳銃は大威力を好む愛好家向けの商品と見られる場合が多い。それはたしかに一面の真実ではあるが、ライフルなどの大型銃器が必要だった用途の一部を拳銃で代替することが可能となるため、単なる個人的な好みとは別に実用品としての需要もかなりの比率で存在している。具体的には、グリズリー生息地域での護身用がわかりやすい例と言える。熊を倒せるだけの最低限の威力と持ち運びの容易な軽量さを兼ね備え、しかも発砲する機会は滅多に無いため、多少の扱い難さや反動の大きさは問題にならない。このような用途では、.44マグナム以上のリボルバーが最良の選択とされている。
- ^ Barnes, Frank C., ed. by John T. Amber. ".22 Remington Jet", in Cartridges of the World, p.148, . Northfield, IL: DBI Books, 1972. ISBN 0-695-80326-3.
- ^ 小橋良夫『拳銃大全科』秋田書店、東京都千代田区〈大全科シリーズ〉、1980年6月25日。ISBN 4-253-00800-3。
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