ボロジノの戦い 背景

ボロジノの戦い

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/31 09:50 UTC 版)

背景

1812年6月23日、ナポレオンのロシア遠征が始まった。ロシア軍総司令官バルクライは、焦土戦術を実行しつつ、数回にわたって防衛陣地の構築を試みたが、大陸軍の侵攻速度が余りにも早く、退却を余儀なくされた。バルクライは戦うべきだとする政治的圧力に押されて総司令官職を解任され、後任にクトゥーゾフが就任した。

だがクトゥーゾフも、大陸軍との早急な決戦で無益な犠牲を蒙ることの愚かさを理解していた。そこで、クトゥーゾフは大陸軍をモスクワ西方100kmまでひきつけ、スモレンスクからモスクワに至る街道上の町ボロジノで迎え撃つこととした。ロシア軍は9月3日から陣地構築を開始し、「ラエフスキー角面堡」と「バグラチオン突角堡英語版」を構築して大陸軍を待ち構えた。

シェヴァルジノ角面堡の戦闘

ナポレオン軍の予定進路(現在のスモレンスク幹線道路A100号線に相当)の南側に拡がったロシア軍の初期位置は、その左翼をシェヴァルジノ角面堡[2](シェヴァルジノ村[3]付近で五角形に土を盛り上げた角面堡)で固定されていた[4]。ロシアの将軍たちは、左翼が敵に露出し過ぎて脆弱であることをすぐに認識した[5]。そこでロシア軍は前線を後退したが角面堡に守備兵を残した。これはクトゥーゾフが大陸軍の進軍を単に遅らせるために角面堡を守備すべきと主張したのである。

歴史家のドゥミトリー・ブトゥルリンロシア語版英語版は、角面堡は大陸軍の進路を決定するための観測点として利用されたとしている。多数の歴史家[6]によれば当時の火砲の有効射程外であったにもかかわらず、角面堡は大陸軍右側面の脅威に備えるためであったとされる[4]

ロシア第1軍の参謀長アレクセイ・エルモロフロシア語版英語版は回想録の中で、ロシア軍左翼は大陸軍が想定より早く到着した時点で、転進中であったと語っていた。このようにシェヴァルジノの戦いはロシア軍左翼の配置転換を安全に行なうための時間稼ぎになった[7]。角面堡の構築とその目的に関しては今日に至るまで歴史家の間で論争が続いている[8]

戦闘は9月5日、ジョアシャン・ミュラ王の大陸軍と、ピョートル・コノヴニツィンロシア語版指揮下のロシア軍との大規模な騎兵戦で衝突して始まった。ロシア軍は側面を脅かされて、結局コロツキー修道院ロシア語版[9]の線まで撤退した。戦闘は翌9月6日に再開したがコノヴニツィンは総督ウジェーヌ・ド・ボアルネの第4軍団が到着すると、側面を脅かされたので再び撤退した。ロシア軍はシェヴァルジノ角面堡に後退し、そこで激しい白兵戦が演じられた。ミュラ王はナンスティ[10]の第1騎兵軍団とモンブリュン[11]の第2騎兵軍団を率いていた。それらの騎兵軍団は角面堡に対面していたダヴ―の第1歩兵軍団の内コンパン[12]の師団によって支援されていた。同時にポニャトフスキの歩兵部隊が南方からその陣地を攻撃した。ロシア軍はクトゥーゾフが個人的に命じるまで撤退を拒否したので戦闘は激しく、極めて猛烈になった[5]。死傷、大陸軍4,000~5,000人、ロシア軍6,000人の犠牲の上に大陸軍がシェヴァルジノ角面堡を占領した。[13]。小さな角面堡は破壊され、両軍の死傷者で覆い尽くされた[14]

西方からの予期せざる大陸軍の進軍とシェヴァルジノ角面堡の陥落によってロシア軍の陣形は壊乱した。防御陣地の左側面が崩壊したことによって、Utitsa村(現在のru:Утицы[15]を中心とする新陣地を築きつつ、ロシア軍は東へ退却した。このようにロシア陣地の左側面は側面攻撃の格好の餌食となった。








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