ボストン絞殺魔事件 犯人逮捕

ボストン絞殺魔事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/30 13:24 UTC 版)

犯人逮捕

アルバート・デザルボ英語版

この絞殺魔事件の一方で、1964年から約9か月間にわたり、マサチューセッツ州を含む広範囲で約300件の連続婦女暴行事件が起きており、警察は犯人と思しき者の服の色から「グリーンマン(緑の男)」と呼んでいた。同年11月6日、グリーンマン事件の犯人としてアルバート・デザルボ英語版[注 1]が逮捕され、精神疾患の疑いから翌1965年に精神病院に収容された。ここで同室となった殺人犯ジョージ・ナッサー英語版[注 2]、彼を絞殺魔事件の犯人として弁護士に密告。ナーサーによれば、会話内容から彼を絞殺魔と直感したとのことであり、弁護士がデザルボに面会したところ、彼は自分が絞殺魔であることを認めた。当時の警察は「グリーンマン事件」と「ボストン絞殺魔事件」を同一犯によるものとは見なしておらず、捜査上のミスといえた[14]。彼の告白により、当時の警察が同一犯と見なしていなかった犯行が2件加わり、一連の事件の被害者は以下の13人と判明した。

# 犯行日 被害者 没年齢
1 1962年 6月14日 アンナ・スレッサーズ 55
2 6月28日 メアリー・マレン 85
3 6月30日 ニーナ・ニコルズ 68
4 6月30日 ヘレン・ブレイク 65
5 8月19日 ジェーン・サリバン 75
6 8月20日 アイダ・ジューガ 67
7 12月5日 ソフィー・クラーク 20
8 12月31日 パトリシア・ビセット 23
9 1963年 3月9日 メアリー・ブラウン 69
10 5月6日 ビバリー・セイマンズ 23
11 9月8日 エブリン・コービン 58
12 11月23日 ジョアン・グラフ 23
13 1964年 1月4日 メアリー・サリバン 19

デザルボの告白で初めて明らかになった被害者は、2人目のメアリー・マレンと9人目のメアリー・ブラウンである。前者は襲われた際に心臓発作で死亡したと見られ[14]、当初は自然死と見なされていた[8]。後者は死因が絞殺ではなく刺殺の上、当時の状況から押し込み強盗と見なされていたのである[8]

デザルボは本事件の詳細を熟知しており、警察の公表していない事柄はおろか、警察が把握していないことまで熟知していたことから、捜査陣は彼をほぼ確実に絞殺魔と断定した。しかし当時は有力な物的証拠がなく、彼の告白のみが唯一の証拠であった。そこで法廷での妥協案として、検察は彼をグリーンマン事件のみで訴追するという司法取引が行なわれた[15]。結果、法廷では絞殺魔事件について触れられることはなく、デザルボはグリーンマン事件の犯人として終身刑が宣告された[6][16]

1973年11月26日、デサルボは収容先のマサチューセッツ州ウォルポール刑務所の独房で刺殺体となって発見された。所内の麻薬密売にまつわるトラブル[1]、または囚人同士の言い争いの末によるものとも見られたが、犯人は不明である[16]


  1. ^ 日本語では「アルバート・デザルヴォ[13]」、「アルバート・デ・ザルヴォ[6]」などの表記もある。
  2. ^ 日本語では「ジョージ・ナーサー」との表記もある[13]
  1. ^ a b c d e f g h i j k l 清原編 2009, pp. 21–23
  2. ^ Bidgood, Jess (2013年7月11日). “50 Years Later, a Break in a Boston Strangler Case”. The New York Times (New York City: New York Times Company). https://www.nytimes.com/2013/07/12/us/dna-evidence-identified-in-boston-strangler-case.html 2013年10月16日閲覧。 
  3. ^ “Remains unearthed of confessed Boston Strangler”. USA Today. Associated Press (Mclean, Virginia: Gannett Company). (2013年7月12日). https://www.usatoday.com/story/news/nation/2013/07/12/boston-strangler-remains-desalvo/2513931/ 2013年10月13日閲覧。 
  4. ^ DNA confirms Albert DeSalvo's link to 'Boston Strangler' killing of Mary Sullivan: authorities. NY Daily News archive, retrieved October 17, 2015.
  5. ^ a b 省心書房 1995, pp. 364–367.
  6. ^ a b c d レーン他 1995, pp. 122–124
  7. ^ a b c d e f g h 省心書房 1995, pp. 370–375
  8. ^ a b c d e ウィルソン 1983, pp. 50–51
  9. ^ 省心書房 1995, p. 387.
  10. ^ a b c d 省心書房 1995, pp. 378–381
  11. ^ 越智啓太『犯罪心理学がよ~くわかる本』秀和システム〈Shuwasystem Beginner's Guide Book〉、2009年、144頁。ISBN 978-4-7980-2220-8 
  12. ^ a b c d e f g h i j k 省心書房 1995, pp. 368–369
  13. ^ a b c d タイム・ライフ編 1993, pp. 101–105
  14. ^ a b 省心書房 1995, pp. 385–389
  15. ^ ウィルソン 1983, p. 52.
  16. ^ a b c d 省心書房 1995, pp. 392–395
  17. ^ a b ファイドー 1993, p. 244
  18. ^ 省心書房 1995, pp. 376–377.
  19. ^ ファイドー 1993, p. 242.
  20. ^ “1960年代に全米を震撼させた「ボストン絞殺魔事件」の監督候補にマーク・ロマネク!”. シネマトゥデイ. (2014年1月21日). https://www.cinematoday.jp/news/N0059538 2014年9月3日閲覧。 
  21. ^ “ケイシー・アフレックが「ボストン絞殺魔」を題材にした映画を製作!”. シネマトゥデイ. (2012年12月8日). https://www.cinematoday.jp/news/N0048446 2014年9月3日閲覧。 
  22. ^ Grobar, Matt (2023年1月3日). “Boston Strangler Premiere Date, First Look: Keira Knightley-Led True-Crime Thriller From 20th Century Studios To Be Accompanied By ABC Audio Podcast”. Deadline Hollywood. 2023年1月3日閲覧。
  23. ^ “リドリー・スコット製作×キーラ・ナイトレイ主演 連続殺人鬼を追う記者を描く「ボストン・キラー」3月17日から配信”. 映画.com. (2023年2月24日). https://eiga.com/news/20230224/18/ 2023年2月25日閲覧。 


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