ヘンリー・カットナーのクトゥルフ神話 1:クラーリッツの秘密

ヘンリー・カットナーのクトゥルフ神話

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/29 14:12 UTC 版)

1:クラーリッツの秘密

クラーリッツの秘密』(クラーリッツのひみつ、原題:: The Secret of Kralitz)は、WT1936年10月号に掲載された。

イオドの初出であり、簡単な言及がある。東雅夫は「ラヴクラフト『魔宴』の中世ドイツ版といった趣」と述べた[1]

1あらすじ

クラーリッツ男爵は、修道院を焼き払い修道士を皆殺しにする。大修道院長は絶命の間際、男爵に呪いをかける。

クラーリッツ城に住む一族の間では、呪いの性質が秘密になっていた。わたしフランツは、病床の父にどのような秘密であるかを尋ねるも、父は知らせることができないと述べるのみ。父は、自分からは秘密を突き止めようとはしないよう警告し、いつか秘密の番人が現れ彼らに案内されて地下の洞窟で秘密を知ることになるだろうと説明する。最後の言葉を口にするや、父は息を引き取る。

わたしが第21代目クラーリッツ男爵を継承してから、何年もの時間が経過する。あるときわたしが熟睡から目覚めると、黒装束の男が2人、無言で立ち尽くしていた。このときを待ち望んでいたわたしは、彼らにいざなわれ、生まれ育った城の薄暗い廊下を進む。わたしも知らなかった隠し階段をくだりつづけ、石の扉を開けると、長い矩形のテーブルに20人の人物が着席していた。遠くからはくぐもった唸り声や甲高い金切り声が聞こえ、靄のような影のような実体の確かならぬ生物たちの気配も感じ取れる。

わたしは恐怖しながらも恍惚を覚え、未知の場所ながら心の底では理解し受け入れる。わたしの口からは、どういうわけか易々と古ドイツ語が流れ出て、彼らに己が第21第クラーリッツ男爵であることを告げる。顎鬚に傷のある大男が、古いドイツ語でわたしを歓迎すると言い、乾杯が行われる。わたしは大男の顔が創始者の肖像画と同じであることを視認し、自分が祖先たちと食事をしていることを悟る。邪悪な歓喜をおぼえて大笑いするわたしに乗じて、怪生物たちも騒ぎ立てる。クラーリッツ城の地下には地獄があり、この世ならぬものたちによる宴が行われている。

わたしたちは部屋を出て、地底湖にかかる橋に行き、名状しがたい生物たちを目撃する。わたしはユゴス菌類生物海底都市クトゥルーに傅く巨大生物、鱗に覆われた地下のヨグ=ソトースを信奉する者たちの異様な寒気について学び、また始原のイオドが銀河の彼方で信じがたい方法で崇拝されていることも知る。[3]

それら地獄の闇は、まさしく笑いを覚えるほどに愉悦な情景であった。やがて宴は終わり、男たちは階段を上っていく。わたしはいつの間にか、初代と二人きりで、クラーリッツ家の歴代男爵たちが葬られている納骨所に来ていた。わたしは、人間でないものと化した彼らが、夜になると起き上がり地下へとくだって饗宴をあげていることを理解する。わたしは地上に戻ろうとするが、行く手を遮られる。いぶかしむわたしに対して、初代はわたしの傍らにある物を指し示す。そこには、第21代クラーリッツ男爵フランツと刻まれた棺が置かれていた。わたしはようやくクラーリッツの呪いの秘密を理解し、自分がすでに死んで葬られていたことを悟る。

1登場人物

  • 初代クラーリッツ男爵 - 顔に傷跡のある大男。修道院を焼き、修道士たちを皆殺しにした。
  • 大修道院長 - 初代男爵の宿敵。死の間際に男爵と子孫に呪いをかけた。
  • 2人の案内者 - 秘密の番人。
  • 父 - 20代目男爵。
  • フランツ - 語り手。21代目。

1収録

  • クト10、東谷真知子訳

1関連作品







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