ヘイト本
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海外の事例、議論
ヘイト本は日本特有の表現であるが、同じような分類の書籍は国によっても事情が異なる。 実際の問題として、反中・反共という基準に限って見れば、香港の銅鑼湾書店で販売されていた禁書に見られるように、独裁国家による人権侵害批判や体制批判などを含んだものが存在するからである[28]。なお、香港や台湾で出版された反中本や禁書の多くは、日本語での出版がなされていない[29][30]。香港では、中国政府からの締め付けや取り締まりが厳しくなる2010年代前半までは、中国大陸で出版が禁じられた書籍が流通する光景が見ることができた[31][32]。また、本のタイトルでは中国の民主活動家の余杰が書いた「卑賤的中國人」[33]は「愚かな中国人」、柏楊の「醜陋的中國人」は「醜い中国人」である。これには、中国人の考え方そのものが中国民主化を阻んでいるという批判が込められている[34]。
中国共産党によるオーストラリアへの浸透策について議論した"Silent Invasion: China's influence in Australia(『サイレント・インベージョン ~オーストラリアにおける中国の影響~』)"では、著者のクライブ・ハミルトンは、左派から人種差別とは言われないよう表現には気を使ったという。それでもなお、『見えない手 中国共産党は世界をどう作り変えるか』で語ったところによればハミルトンは人種差別主義者であると批判する声が挙がり[35][36]、EメールやTwitterでの攻撃やSNSのパスワードを盗み取ろうとする嫌がらせを受け、とくにそれが白人のオーストラリア人のものであったという。クライブ・ハミルトン自身が左派であり、中国が民主主義システムを妨害しようとすることへの批判から「目に見えぬ侵略」を書いたので、この反応には失望したという[37][38]。
アメリカも、国内における中国脅威論を背景として、ロバート・スポルディングの"Stealth War: How China Took Over While America's Elite Slept"や、マイケル・ピルズベリーの"The Hundred-Year Marathon"(邦題:China 2049[39])といった反中本が発売された。
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- ^ “【前編】『Will』花田紀凱編集長×ころから代表・木瀬貴吉氏の公開討論 ヘイト本かどうかはタイトルで決まるのか?”. 月に吠える通信 (2015年5月27日). 2021年4月30日閲覧。
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- ^ 永江朗▼嫌韓反中本「本と文芸」『現代用語の基礎知識 2019』自由国民社、2019年1月1日発行、雑誌 69949-64、ISBN 978-4-426-10137-4、785頁。
- ^ 永江朗 201, p. 28.
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- ^ “「綺麗なヘイト」増加に危機感”. 週刊金曜日 ONLINE. (2015年6月15日) 2021年4月29日閲覧。
- ^ “「嫌韓・ヘイト本」ブームを終わらせるのは誰?”. 版元ドットコム. (2014年5月7日)
- ^ 山野車輪『嫌韓道 <ベスト新書 474>』KKベストセラーズ、二〇一五年五月二〇日 初版第一刷発行、ISBN 978-4-584-12474-1、6頁。
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- ^ ギルバート 2019, p. 149-150.
- ^ a b 石橋毅史 (2020年2月20日). “韓国の書店で「日本ヘイト本」を探してみた結果”. PRESIDENT Online 2021年4月29日閲覧。
- ^ 私は本屋が好きでした──あふれるヘイト本、つくって売るまでの舞台裏 永江朗 太郎次郎社エディタス ヘイト本を「ヘイト本」とよぶのは適切か P28-P29
- ^ 書店と民主主義: 言論のアリーナのために 福嶋 聡 P6
- ^ 小笠原博毅, 福嶋聡『パンデミック下の書店と教室 : 考える場所のために』新泉社、2020年、46頁。ISBN 9784787720009。 NCID BC04120680。全国書誌番号:23468999 。
- ^ 二村知子 (2020年2月17日). “あふれるヘイト本、出版業界の「理不尽な仕組み」に声を上げた書店のその後”. www.businessinsider.jp. 2021年4月22日閲覧。
- ^ “「学習能力がない」図書館の"ヘイト本"排除を主張し始めたしばき隊に、図書館協会もあきれ顔”. 2020年11月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年7月23日閲覧。
- ^ 山野 (2015)、6~7頁。
- ^ 昼間たかし「政治屋に売りとばされた『表現の自由』の末路」『紙の爆弾』2020年9月号、089頁。
- ^ a b 新潮社が「新潮45」を休刊 LGBT表現巡り謝罪 2018年9月25日 日本経済新聞
- ^ 杉田水脈氏への批判は「見当外れ」 新潮45が掲載へ 高久潤 朝日新聞
- ^ 新潮45休刊「組織ぐるみ擁護に怒り」新潮社前でデモ 毎日新聞
- ^ 新潮社の看板に「あのヘイト本、」Yonda?とラクガキ 安藤健二 ハフポスト
- ^ 「あのヘイト本、Yonda?」 新潮社の看板に落書き 朝日新聞
- ^ 新潮社看板に「あのヘイト本、Yonda?」 「落書きの神髄」「器物損壊」評価は二分: J-CAST ニュース
- ^ INC, SANKEI DIGITAL (2020年4月25日). “香港の反中派「銅鑼湾書店」 台湾で営業再開”. 産経ニュース. 産経新聞社. 2021年4月22日閲覧。
- ^ 日本語未翻訳の香港、台湾の関連本。反中本。
- ^ 香港、台湾で売られる本とは(反中本から独自の本土歴史の本まで)
- ^ 香港の書店株主に懲役10年 禁書扱い違法情報提供罪
- ^ 中国で「禁書」土産の大人気 税関で没収追いつかず 香港の書店関係者失踪 習指導部は販売元へ圧力で対応
- ^ [香港的沉淪歷程:自甘墮落 - 立場新聞20210504閲覧]
- ^ 余杰:醬缸中的蛆蟲 不是醜陋 而是卑賤 上報 20210504閲覧
- ^ 'China influence' book proves divisive in Australia debate
- ^ The Soul of the Chinese People
- ^ 見えない手 中国共産党は世界をどう作り変えるか クライブ・ハミルトン まえがき P16-P17
- ^ 見えない手 中国共産党は世界をどう作り変えるか クライブ・ハミルトン 補論 「日本は目に見えぬ侵略」にどう対処するか P342-P345
- ^ China 2049 マイケル・ピルズベリー (著), 森本 敏 (解説), 野中 香方子 (翻訳) 日経BP
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