ブリストル ボーファイター 概要

ブリストル ボーファイター

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/25 10:19 UTC 版)

概要

本来は、長距離を飛行できる昼間戦闘機とすべく双発の重戦闘機として開発された機体。戦闘機とするには性能不足であったが、搭載量に余裕があったことからレーダーを装備した夜間戦闘機や戦闘雷撃機などとして多種多様な任務に使用された。

また、発動機も他機種の生産状況との兼ね合いによって空冷ハーキュリーズエンジンを搭載した型と液冷マーリンエンジンを搭載した型があるという珍しい機体である。

開発の流れ

ボーファイターの起源は、同じブリストル社が開発した双発雷撃機ブリストル ボーフォートと、全く別の試作戦闘機ブリストル タイプ 151にまで遡る。

ボーフォートを元にした計画はトーラスエンジンと20 mm機関砲を装備した重武装の昼間爆撃機を目指したものであったが、関係者が死去したことにより計画は中断されてしまった。

タイプ151の計画は、当初、ハーキュリーズエンジン装備の単発戦闘機であったが、後に空軍の仕様書F37/35に沿った、アクアリアエンジン装備の双発戦闘機に改められ、タイプ153、およびタイプ153Aと呼ばれた。しかし、この計画はウェストランド ホワールウィンドに敗れ、不採用となった。

その1年後、ブリストル社からの提案という形で新たな双発戦闘機の仕様書が空軍に提出されるが空軍の要求と合わなかったため、いくつかの仕様が検討され、結局、ボーフォートの機体を流用した、タイプ156が選択された。

この仕様はハーキュリースエンジンを2基、機首下にイスパノ Mk.II 20mm機関砲4門を装備しており、尾翼、外翼、降着装置をボーフォートと共通しているため、設計期間が短くて済み、生産転換も容易である点が特に評価された。

試作1号機は1939年7月に行われ、性能は思わしくなく各種改修を行っても最大速度は期待された539 km/hを下回る497 km/hしか出なかったが、機動性は概ね満足の行くものに仕上がっており、1940年7月に制式採用され、ごく少数機がバトル・オブ・ブリテンの昼間迎撃にも参加している。

夜間戦闘機としての運用もほぼ同時に始まり、レーダーを搭載したタイプが1941年ごろから夜間戦闘機の主力として大きな戦果をあげている。

対艦攻撃機としてのボーファイターは、1942年11月に最初の部隊が編成されている。索敵、機銃掃射、爆撃雷撃等、艦船攻撃用の複数の任務を1機種でまかなえる雷撃型ボーファイターの登場は、混成対艦攻撃の嚆矢となった。

各型

タイプ 156
試作機。ハーキュリーズ Mk.I-M / I-SM / IIエンジンなどを搭載。
ボーファイター Mk.I
Mk.ICとMk.IFの当初の名称。
ボーファイター Mk.IC
雷撃機型。Cは「沿岸部 (coast)」を表している。爆撃機としても運用された。ハーキュリーズ Mk.III / X / XIエンジンを搭載。
ボーファイター Mk.IF
複座の戦闘機型。ハーキュリーズMk.III / X / XIエンジンを搭載。
ボーファイター Mk.II
Mk.IIFの原型機。マーリン Mk.Xエンジンを搭載。
ボーファイター Mk.IIF
夜間戦闘機型。ハーキュリーズエンジンが1941年後半まで、スターリング爆撃機への供給が優先とされていたことから、大量生産のためにマーリン Mk.XXエンジンを搭載した。
ボーファイター Mk.III
試作機型。ハーキュリーズ Mk.VIエンジンを搭載。絞られた新設計の胴体に6門の機関砲と6梃の機関銃を装備した。生産ラインの変更に過大な支出がかかることが判明したため製造されず。
ボーファイター Mk.IV
試作機型。グリフォンエンジンを搭載。絞られた新設計の胴体に6門の機関砲と6梃の機関銃を装備した。Mk.IIIと同じ理由で製造されず。
ボーファイター Mk.V
戦闘機型。基本設計はMk.IFを踏襲し、1組の機首機関砲と翼内機関銃が操縦席後方の7.7 mm機関銃4梃を搭載したボールトンポール製の砲塔へ変更された。マーリン Mk.XXエンジンを搭載した。飛行機・兵器試験場(A&AEE)においで試験が行われたとき、R2274号機は19000フィートで302マイル/hの速度を発した。
ボーファイター Mk.VI
Mk.VICとMk.VIFの原型機。基本設計はMk.IFを踏襲しているが、ハーキュリーズ Mk.VIエンジンへと換装されている。
ボーファイター Mk.VIC
雷撃機型。Mk.ICに類似している。
ボーファイター Mk.VIF
AI Mk.VIIIレーダーを装備した夜間戦闘機型。
ボーファイター Mk.VI(ITF)
試作戦闘雷撃機型。
ボーファイター Mk.VII
ハーキュリーズ Mk.26エンジン搭載のオーストラリア製戦闘機型案。製造されず。
ボーファイター Mk.VIII
ハーキュリーズ Mk.XVIIエンジン搭載のオーストラリア製戦闘機型案。製造されず。
ボーファイター Mk.IX
ハーキュリーズ Mk.XVIIエンジン搭載のオーストラリア製戦闘機型案。製造されず。
ボーファイター TF Mk.X
複座戦闘雷撃機型。「トーボー (Torbeau)」と呼ばれた。クロップドスーパーチャージャーのついたハーキュリーズ Mk.XVIIエンジンを搭載し、低高度での運動性が良くなった。後期生産機には、画像のようにドーサルフィンが追加された。2,231機製造。
ボーファイター TT Mk.X
標的曳航機・練習機型。TF Mk.Xから改装されたものも含む。
ボーファイター Mk.XIC
偵察機型。Mk.Xから沿岸部隊向けに改められた機体だが、魚雷搭載装備は無い。
ボーファイター Mk.XII
長距離護衛戦闘機型案。Mk.XICを改修の上、落下式増槽を装備できる予定であった。製造されず。
ボーファイター TF Mk.XX / TF Mk.XXI (Mk.21)
オーストラリアの国営航空廠(DAP)がライセンス生産した戦闘機・練習機型。TF Mk.XXはニュージーランド向け、TF Mk.XXIはオーストラリア空軍向けの生産機。ハーキュリーズ Mk.XVIIエンジンを搭載し、機首に4門の20 mm機関砲、4梃の12.7 mm機関銃を装備し、130 mmの高速ロケット弾を8発、110 kg爆弾を2発、230 kg爆弾を2発と1基のMk.13魚雷を1発搭載できる。

  1. ^ Bridgman, Leonard, ed. Jane’s Fighting Aircraft of World War II. "The Bristol 156 Beaufighter". London: Studio, 1946. 110-111. ISBN 1-85170-493-0
  2. ^ 英海岸で砂に埋没の戦闘機残骸を発見、76年前に墜落”. CNN (2020年6月6日). 2020年5月30日閲覧。
  3. ^ WWII aircraft buried by sand discovered on English beach after 76 years”. CNN (2020年6月6日). 2020年5月30日閲覧。






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