フィッシャー・トロプシュ法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/19 13:30 UTC 版)
熱効率
石炭の持つ全ての化学エネルギーを石油に変換出来るわけではなく、排熱ロスが生じる[7]。
実際には石油に利用できるのは50%程度とされていて、残りは排熱となる。
排熱の原因としては
- 石炭を合成ガスに変換→熱効率76%
- 石油にならなかったガス(メタン)→合成ガスの12%を占め、さらにF-Tプロセスで10%生成、メタンの利用先がない場合再度合成ガスに変換する必要が有りそこでロスが生じる
- F-Tプロセスでの排熱→原料合成ガスの20 - 24%
などが挙げられる。
エネルギーを無駄なく使うためにはこれらの排熱を発電(コジェネレーション)に使うなどの工夫がいる。
環境問題への懸念
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合成燃料の製造に関して提起されている問題点として以下のようなものがある。すなわち、1次エネルギー使用量の大幅な増加、つまりガスや固体状の炭素を液体燃料に加工する工程自体がエネルギー消費を必要とする為、炭素分の環境への放出が増加するのではないかという懸念である。アメリカ国立再生可能エネルギー研究所 (National Renewable Energy Laboratory, NREL) の研究によれば、燃料サイクル全体として見た場合、石炭から製造した合成燃料の使用による温室効果ガスの放出は、石油を用いた場合の2倍近くなるとされている。同様に他の汚染物質の放出量も大幅に増加するが、それらの多くは製造過程で捕集することが可能であるとされる。温室効果ガス放出の緩和法として、二酸化炭素を海洋や植物に吸収させる炭素隔離 (Carbon sequestration) や二酸化炭素の地下埋設廃棄が提唱されている。しかしながら、一部では二酸化炭素の地下埋設廃棄実験は成功が報じられているものの、大規模な炭素隔離を行うための科学的・経済的基盤はいまだ確立されたものとはいえない。
- ^ a b c 森島 宏 (2009年4月). “「FT法」”. 石油・天然ガス資源情報 用語辞典. 石油天然ガス・金属鉱物資源機構. 2016年3月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年3月24日閲覧。
- ^ a b "欲しい液体燃料を選択的に合成する触媒技術". Nature ダイジェスト. 2018年12月. doi:10.1038/ndigest.2018.181239. 2020年6月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年6月5日閲覧。
- ^ “The Early Days of Coal Research”. アメリカ合衆国エネルギー省 (2004年2月18日). 2005年11月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2005年12月8日閲覧。
- ^ “GOVERNOR RENDELL LEADS WITH INNOVATIVE SOLUTION TO HELP ADDRESS PA ENERGY NEEDS; REDUCES DEPENDENCE ON FOREIGN SUPPLIES”. ペンシルベニア州 (2005年9月29日). 2005年12月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2005年9月30日閲覧。
- ^ “サマリー 合成燃料の現状と今後の動向について IEEJ: 2008 年 7 月掲載”. IEEJ. 2022年5月18日閲覧。
- ^ 兼子弘 (2006年01月号). “GTL 先進地、南アフリカを行く ~ペトロSA訪問記~”. 石油・天然ガスレビュー .
- ^ 藤元薫、功刀泰碩「スラリー式フィッシャー・トロプシュ合成展望望」『燃料協会誌』第62巻第677号、日本エネルギー学会、1983年、728–744頁、doi:10.3775/jie.62.9_728。
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