ハッタジュズイミミズ 分布要因論

ハッタジュズイミミズ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/10/21 01:04 UTC 版)

分布要因論

本種が八田村には多産するのに、当初はそれ以外の日本から発見されないことに関して、畑井は本種が帰化種であるからではないかとの推定を示した。彼によると本種の含まれる属の種は本種以外は熱帯産であることから人為分布の可能性が高い。しかもこの種の拡散を嫌って農家がイネ苗のやりとりをしなかったとの話はあるにせよ、それでも分布は拡大してゆくものだから、分布域の狭さはその移入が古くないことを示す。後述するように本種については地域にその出自に関する伝説があり、これはこのミミズがこの村に突然出現したこと、それがさほど古いことでないものを示すものだとしている。彼はさらに加賀の豪商と伝えられる銭屋五兵衛をも持ち出し、彼は藩の内諾を得て南蛮貿易をしていたのではないか、その際に東南アジアのどこかから本種を持ち込んだのではないか、ともしているという[22]

さらにその後に琵琶湖周辺から本種が発見された折りにも畑井はこれを「河北潟と琵琶湖の間にひんぱんな行き来があったと想像される」としている[23]

それに対して、渡辺(2015)はその後に3カ所で発見されたことをもって日本土着の種と『確信した』と述べている[24]

ミトコンドリアDNAの解析によると琵琶湖周辺域の方が変異の幅が広く、河北潟のものにはその一部のもののみが見られた。このことから河北潟のものは琵琶湖域からの分布拡大による可能性が考えられる[25]。またこのような多様性が存在することは本種が日本在来種であることを支持するものと考えられる[26]

生息環境

半水性のミミズで水田に多く見られる[27]。後述のように畦に穴を開ける被害があるため、現在では畦をコンクリートにすることが多くなっているが、ハス田などでは非常に多数個体を見ることが出来るという[28]

習性

の中に潜っており、表面に糞塊を出す。水田に水を張ると泳ぎ出てきて、水が引くと畦に潜るという[29]。水田の畦には複数種のミミズがおり、それらも糞塊を出すが、本種のそれはやや棒状のものが積み重なって直径が10センチメートルを超え、これを見れば本種の生息が確認できる[30]

水田の泥に潜るとき、明らかではないが頭を下にしてほぼ垂直に潜っているらしい。その状態での長さは30センチメートル程度と思われる[31]

一度の観察で様々な大きさのミミズが見つかることから、その繁殖がかなり長期にわたることが推定される[32]。琵琶湖では5月、河北潟では8月に卵包が発見されている。卵包は最初は白くて柔らかく、後に硬化して褐色から黄色になるとの報告があり、また渡辺自身は『ルビー色の鮮やかな赤』と表現している。大きさは径1センチメートルほどの球形から楕円形で、両端がややとがる。1個の卵包から幼生が2から3個体出てくる。小型個体は6-8月に見られる。生活史等の詳しい情報はないが、元今津中学校での飼育例では4-5年は生きていたと言い、フトミミズ類よりは長命と見られる[33]

また、このミミズは採集時によく切れ、つまり自切する。フトミミズ類もよく自切し、その後も生きているが長さは戻らず、つまり再生力はない。それに対して本種の場合、長さも元に戻るような再生をするかもしれない[34]


  1. ^ みずすまし通信no.6/滋賀県
  2. ^ 以下、主として内田他(1979),p.210
  3. ^ 以下、原記載に関しては渡辺(2003),p.33
  4. ^ 渡辺(2015),p.30
  5. ^ 渡辺(2003),p.33
  6. ^ これは粘液を分泌してミミズの体表を湿らせる働きを持ち、陸生ミミズにはあるものだが、本群はそれがないのを一つの特徴とする(渡辺(2015),p.27-28)。
  7. ^ 例えば石塚・皆越(2014)
  8. ^ 渡辺(2003),p.30
  9. ^ 渡辺(2003),p.46
  10. ^ ここまで渡辺(2015),p.54
  11. ^ 渡辺(2015)p.99-104
  12. ^ 渡辺(2015),p.108
  13. ^ 石塚・皆越(2014),p.136
  14. ^ 内田他(1979),p.210
  15. ^ 石塚・皆越(2014),p.134
  16. ^ 渡辺(2015),p.65
  17. ^ 渡辺(2015),p.7
  18. ^ 渡辺(2015),p.61
  19. ^ 渡辺(2015),p.90-91
  20. ^ 渡辺(2015),p.105-106
  21. ^ 渡辺(2015),p.108
  22. ^ 渡辺(2003),p.36-37
  23. ^ 渡辺(2003),p.37
  24. ^ 渡辺(2015),p.7
  25. ^ 渡辺(2015)p.132-133
  26. ^ 高橋他(2012),p.2
  27. ^ 渡辺(2003),p.34
  28. ^ 渡辺(2003),p.34
  29. ^ 渡辺(2003),p.35
  30. ^ 渡辺(2015)p.122-124.
  31. ^ 渡辺(2015)p.128
  32. ^ 渡辺(2003),p.38
  33. ^ 渡辺(2015)p.124-126
  34. ^ 渡辺(2015)p.127
  35. ^ 渡辺(2003),p.30-31
  36. ^ 渡辺(2003),p.35
  37. ^ 渡辺(2015),p.44
  38. ^ 渡辺(2015),p.60
  39. ^ 渡辺(2015),p.81-82
  40. ^ 渡辺(2015),p.82-83
  41. ^ 渡辺(2015),p.107
  42. ^ 渡辺(2003),p.36
  43. ^ 渡辺(2003),p.34-35
  44. ^ 渡辺(2003),p.37
  45. ^ 渡辺(2015),p.63


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