ネパール 経済

ネパール

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/16 07:47 UTC 版)

経済

首都カトマンズのストリート

中国とインドに挟まれ、経済的な自立が極めて困難ではあったが、1990年の民主化以降、急速に経済が成長。一人当たりのGNPは170ドル(1990年)から200ドル(2000年)[48]と緩やかではあるが、購買力平価で見ると1170ドル(2000年)とアフリカ諸国を上回るまでとなった[48]。それでもアジア最貧国の一つであることは変わらず、IMFの統計によると、2013年のネパールのGDPは193億ドル。一人当たりのGDPは693ドルであり、非常に低い水準である[49]2011年アジア開発銀行が公表した資料によると、1日2ドル未満で暮らす貧困層は2200万人と推定されており、国民の70%を超えている[50]国際連合による基準に基づき、後発開発途上国に分類されている[51]

主な産業は農業であり就業人口の約7割、GDPの26%(2016年)を占める。米や小麦、トウモロコシ、ジャガイモ、ジュートなどが主たる農産物である。それ以外の産業では、繊維産業観光業が主たる産業となっている。しかし耕地面積が小さいため農業も小規模である。また、国王派とマオイストとの闘争の影響で観光客は減少している。

ヒマラヤ山脈を利用して水力発電が行われており、ネパールの発電量のほぼ全てを水力発電が占める。しかしその発電量は不足しており、計画停電が行われている。計画停電は季節により時間帯が変わるが、毎日あり、夜の8時〜11時、朝の3時〜9時までが多く、毎日異なるため新聞に発表される(2012年現在)[52]

隣国であるインドとの結びつきが強く、輸出・輸入共にインドが最大の相手国である。

外国への出稼ぎ

近年の政情不安や、地理的に工業が発展しづらい経済環境などから、収入の向上を求めて、外国への出稼ぎする者が多く、隣国インドの他、中東、東南アジア、そして日本などで、肉体労働、低賃金などの職に就いている者が多い。 彼らからの母国への送金は、ネパールの貴重な外貨収入ともなっていると言われる。

日本でも、21世紀に入ってから中長期在留者と呼ばれる出稼ぎのための来日者は増えており、2018年現在の法務省のデータでは、留学生を除き、60,000人ほどが在住している。 コンビニや惣菜工場、飲食(日本のインド料理店の従業員はネパール人が大半を占めている[53])、流通倉庫、ホテル清掃など、日本人の労働人口減少の影響を受けやすい業務の職に就き、日本の産業を支えている。 生まれたばかりの子供をネパールの祖父母などの家族に預け、夫婦で長期滞在している者も多いほか、そのまま定住する者も少なくなく、農村地帯の高齢過疎化が進んでいると言われる。 ちなみに、ネパールでは日本への出稼ぎ者並びに出稼ぎ者の子供はジャパニとも呼ばれる。

データ

通貨

  • 通貨(コード): ネパール・ルピー (NPR)
  • 為替レート: ネパール・ルピー /米ドル - 不明(2007年), 72.446(2006年), 72.16(2005年)

データはすべてCIA World Factbook-Nepal

国家予算

  • 歳入: $11.53億
  • 歳出: $19.27億 (2006財政年度)

産業比率

  • GDP - 部門別割合:
    • 農業: 38%
    • 鉱工業: 20%
    • サービス業: 42% (2005年会計年度)

労働力

  • 労働力人口:1111万人(2006年推計)
    • 特記:熟練労働力は著しく不足している。
  • 産業別労働力人口の割合:
    • 農業: 76%
    • 鉱工業: 6%
    • サービス業: 18% (2004年推計)
  • 失業率:42% (2004年推計)
  • 貧困線以下の人口の割合:30.9% (2004年)

鉱工業

  • 鉱工業生産成長率:2.2% (2005財政年度)

エネルギー

  • 電力生産量:25.11億 kWh (2006年)
  • 電力消費:19.6 億 kWh (2006年)
  • 電力輸出:1.01億 kWh (2006年)
  • 電力輸入:2億6600万 kWh (2006年)
  • 石油生産高:0 bbl/1日 (2005年推計)
  • 石油消費量:11,550 bbl/1日 (2006年推計)
  • 石油輸出量:0 bbl/1日 (2004年)
  • 石油輸入量:11,530 bbl/1日 (2006年推計)
  • 石油備蓄量:0 bbl (2006年1月1日推計)
  • 天然ガス生産量:0 cu m (2005年推計)
  • 天然ガス消費量:0 cu m (2005年推計)
  • 天然ガス備蓄量:0 cu m (2006年1月1日推計)

輸出入

色と面積で示したネパールの輸出品目
  • 輸出: $8億3000万 f.o.b.;注意 - 記録されていないインドへの輸出は含まず。(2006年)
  • 輸出商品: じゅうたん, 衣料, 革製品, ジュート製品, 穀物
  • 輸出相手国
  1. インド67.9%,
  2. アメリカ11.7%,
  3. ドイツ 4.7% (2006年)
  • 輸入:$23. 98 億 f.o.b. (2006年)
  • 輸入商品: 金, 機械・装備, 石油製品, 肥料
  • 輸入相手国
  1. インド 61.8%,
  2. 中国 3.8%,
  3. インドネシア 3.3% (2006年)
  • 経済援助 受給額:$42億7900万 (2005年)
  • 対外債務: $30億7000万(2006年3月)

貧困問題

山村の子供たち
屋外で学習をする山岳地帯の子供たち(ナガルコット)。
  • 干ばつや洪水で農作物が阻害を受けている。
  • 土地保有者の割合は少なく、国の衛生状態は極めて悪い。
  • 人口増加の影響により、食糧危機の状態にある。

家計

  • 家計収入の分配(ジニ係数):47.2 (2004年)
  • 消費者物価指数インフレ率:6.4% (2007年推計)

観光産業

観光はネパールにおいて最大の産業となっている。ヒマラヤ山脈を擁する同国では、山岳観光のほかネワール文化を今に伝えることの町並みやヒンドゥー教仏教寺院、ジャングルサファリ、ラフティングなどの観光が盛んであり、外貨収入の一翼を担っている[54]

主要な観光地

ヒマラヤ

ナガルコットから見るヒマラヤ山脈
  • トレッキング[54]
    • アンナプルナ山群 - ポカラから入山。ブーン・ヒル展望台や温泉の村タトパニ(=タトパニ温泉)を擁する。ジョムソンはチベット色の強い村である。2日間から1ヶ月までのトレッキングが行われている。
    • ソル・クーンプ山群 - エヴェレストの麓までトレッキングできる。サガルマータ国立公園になっており、ダイナミックな景観。治安はよい。
    • ランタン山群 - 世界で最も美しい渓谷とも称されるがトレッカーが少ない。カトマンズから北へ32km。ランタン国立公園を形成している。チベット・タマン族が住んでいる。シーズンは9月中旬から5月上旬。

カトマンズ

パタン - カトマンズの南、バグマティ川の向こう側に位置する古都。王宮をはじめとする建築群と町全体が古美術品のようなくすんだ色合いに包まれている[54]

  • ダルバール広場
  • ゴールデン・テンプル
  • クンベーシュワル寺院
  • マチェンドラナート寺院
  • パシュパティナート
  • マハボーダ寺院
  • チベット難民キャンプ

バクタプル

ナガルコート

キルティプル

ティミ - カトマンズから東へ10km、ネワール族の町。野菜栽培で有名。主にカトマンズへ出荷される。マッラ王朝以前の歴史を持つ。毎年4月のバイサーク・エクのころに行われるビスケート・ジャトラの行事は壮大なもの。

バネパ

パナウティ - パネパから南へ6km、2つの小さな川の合流点にある小さな町。歴史的、学術的に優れたネワール建築が数多くあり、旅行者よりも学者などの訪問が多い。

ドゥリケル - カトマンズから32km、標高1524mの町でヒマラヤ展望ができる。特に朝のヒマラヤが美しい。町には小さな寺院が多くある。


注釈

  1. ^ これらの王宮は現在のカトマンズにあったと推測されているが、詳しい位置はわかっていない。
  2. ^ a b c d ネパールのカーストの一つ
  3. ^ 現代ネパール語でのविक्रमの発音はビクラムだが、学術的にはサンスクリット語読みでヴィクラマ暦と書かれることもある。ネパールに関する項では原音主義に基づきビクラム暦とする。

出典

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  2. ^ a b c d World Economic Outlook Database, October 2020” (英語). IMF (2020年10月). 2021年1月27日閲覧。
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  4. ^ ネパール「7州連邦制」新憲法を承認・公布へ 大地震で非難受け加速も州区割りに火種 - 産経ニュース 2015.9.17 20:08
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  28. ^ レグミ最高裁長官,暫定選挙管理内閣「議長」就任- ネパール評論 2013年03月14日記事
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