ダイコン 食材

ダイコン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/05 03:48 UTC 版)

食材

大根やぐらに吊るされたダイコン

大根おろしやサラダで生食したり、煮たり漬物にして食べたりと馴染みのある野菜で、肥大した根茎は淡色野菜、葉は緑黄色野菜に分類される[14]。野菜としてのは11 - 3月で、特に冬の大根は甘味が増す[14]。大根は皮に傷がなくて光沢があるものが良品とされ、葉は鮮やかな緑色でみずみずしいものがよい[14]。栄養面では、ビタミンC、カリウム、カルシウム、食物繊維のほか、デンプンを分解する消化酵素を含む[14]

調理法で、大根の皮を剥くときには皮の下の筋が固いため、やや厚めに剥く[7]。煮物にする場合には下茹でをすると苦味が取れ、とぎ汁か米を加えた熱湯で茹でると色が白く仕上がる[7]。大根料理の幅は広く、刺身つま、大根おろしにして天ぷらや焼き魚などに添えたり、煮物、酢の物、汁の実などあらゆる料理に向いている[7]。葉は漬物や炒め物に、皮は天日干しして炒め煮などに利用する[7]

主に生食または加熱調理される。保存用に漬け物、乾物とされるほか、辛みを生かして香辛料ともなる(辛み成分はアリルイソチオシアネート といい、からしマスタードと同じ成分である)

品種によって一概には言えないものの、たとえば青首大根は部位によって味わいが違うといわれ、クビとよばれる葉に近い部分は汁が多くて甘味があり、サキとよばれる先端部分は汁が少なく辛味がある[18]。このため好みにもよるが、クビの部分は生でサラダや大根おろしに、中央部は固いことからおでんやふろふき大根などの煮込み料理に、またサキは炒め物や味の濃い料理、刻んで汁の実などというように、部位によって特質に合わせた使われ方もなされている[18]

日本橋大伝馬町のべったら市(2009年10月20日撮影)
  • 漬け物 浅漬けたくあんべったら漬け福神漬け、さくら漬け、いぶりがっこなど。かつては秋に収穫される越冬野菜の典型として、冬季間の食卓に供される重要な保存食だった。
  • 乾物 切って干したものは切り干し大根、立て四つに割って干したものは割り干し大根、茹でて干したものはゆで干し大根などと呼ぶ。戻して煮物にしたり、漬物、酢の物などに用いる。
  • 加工品 広東料理の一種で、台湾などでは大根を刻んで他の材料を混ぜて焼いた「蘿蔔糕(大根餅)」として食されている。
  • 香辛料 辛味の強い辛味大根は、ざる蕎麦うどんなどの薬味、付け汁(おしぼり)として用いる。長野県産で、小ぶりの大根に長い尻尾がついた「ねずみ大根」などが知られる(前述)。
  • 茨城県水戸市には、0.2ミリメートル程の薄さで剥いた大根を、立体的な花(牡丹アヤメ)のように見せる「大根むき花」という民芸が、江戸時代の水戸藩以来伝わっている[43]

畑で育っているダイコンの葉

栄養価が高く、春の七草スズシロ(清白)でもある。おひたし、味噌汁の具、漬物として用いられる。炒め物にして食べると栄養の吸収が良いといわれる。また、カブの葉同様、刻んで飯に炊き込んだものは菜飯となる。

日ごとに葉が枯れてきてしまうため、入手できたら新鮮なうちに切り落として調理する方がよい[18]灰汁(アク)があるため、細かく刻んだら水につけてアクや青臭みを抜いて調理する[18]

  • 間引き菜(まびきな) 発芽から数週間で間引きした苗
  • 大根菜(だいこんな) 一ヶ月ほど経ち10〜20cm程度に根が発達した幼植物。これを野菜として利用するための品種もある。
  • 大根葉(だいこんば) 収穫期の葉でかつては広く利用されたが、現在は流通の都合や消費者の嗜好により原則として捨てられ、まれに葉付きダイコンと称して販売されている。成長した葉柄には棘状の突起があるので、生食には適さず加熱調理する。
  • 干葉(ひば) 根と同様に干して保存性を高めたもの。緑黄色野菜の少ない季節の貴重な保存食とされた。

種子

栄養価

だいこん 根 皮つき 生[44]
100 gあたりの栄養価
エネルギー 75 kJ (18 kcal)
4.1 g
食物繊維 1.4 g
0.1 g
飽和脂肪酸 0.01 g
多価不飽和 0.02 g
0.5 g
ビタミン
チアミン (B1)
(2%)
0.02 mg
リボフラビン (B2)
(1%)
0.01 mg
ナイアシン (B3)
(2%)
0.3 mg
パントテン酸 (B5)
(2%)
0.12 mg
ビタミンB6
(3%)
0.04 mg
葉酸 (B9)
(9%)
34 µg
ビタミンC
(14%)
12 mg
ミネラル
ナトリウム
(1%)
19 mg
カリウム
(5%)
230 mg
カルシウム
(2%)
24 mg
マグネシウム
(3%)
10 mg
リン
(3%)
18 mg
鉄分
(2%)
0.2 mg
亜鉛
(2%)
0.2 mg
(1%)
0.02 mg
マンガン
(2%)
0.04 mg
セレン
(1%)
1 µg
他の成分
水分 94.6 g
水溶性食物繊維 0.5 g
不溶性食物繊維 0.9 g
ビオチン(B7 0.3 µg
硝酸イオン 0.1 g

廃棄部位: 根端及び葉柄基部
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。

大根(根茎部)は、約95%が水分で、炭水化物が少量含まれるだけで、タンパク質脂質もわずかで、熱量は100グラムあたり18キロカロリー (kcal) と極めて少ない[45]。ごく少量の炭水化物には、ブドウ糖蔗糖果糖などの甘味成分が含まれていることから、加熱調理すると辛味が消えて、わずかな甘味を感じることができる[45]。ビタミン・ミネラル類は、脂溶性ビタミン(ビタミンAビタミンDビタミンEビタミンK)を除けば、全体的にバランスよく含んでいて[45]、皮を剥かないですりおろしたものであればビタミンCカリウム食物繊維を豊富に含む[46][14]。特にクビに近いところでは、ビタミンCや食物繊維が豊富である[13]。また一方では、取り立ててたくさん含んでいる栄養素は見当たらず、食物繊維もそれほど多くはないが、冬場はたくさん食べる機会が多い食材であるから、食物繊維はとてもよい供給源になっているという評価もされている[45]

根茎には消化酵素であるアミラーゼ(別名:ジアスターゼ)、タンパク質を分解するプロアテーゼを多く含み[13]、アミラーゼはデンプンの消化促進に役立つ[46][47]。アミラーゼは消化不良を解消し、胃酸の出を調整して胃もたれや胸焼け防止の働きがあるといわれる[14]。これら栄養素は、加熱や酸化に弱い性質があるため、大根おろしやサラダなどにして、生ですぐに食べる方が効果的に摂取できる[14][13]

葉の部分は緑黄色野菜で、β-カロテン、(ビタミンA)、ビタミンC、カルシウム、カリウム、鉄分などが豊富に含まれている[46][14][13]。カルシウム、鉄、カリウムなどのミネラル類は、根茎部の2 - 10倍も含んでおり、ビタミン類では根には全く含まれていないカロテンが、ホウレンソウと同じくらい含まれている[45]。野菜から摂りにくいとされるビタミンEも豊富で、ビタミンCも根茎部の数倍になる[45]

加工品である切り干し大根は、100グラムあたりの栄養素量が多いところから「栄養の塊」と紹介されることがあるが、水分量が少ないためそのように見えるだけで一度にたくさん食べる機会がないので、過剰な期待はしないほうがよいとも言える[45]。また、大根の芽を摘んだ貝割れ大根の場合では、ビタミン、ミネラルが豊富な緑黄色野菜であり、洗えばすぐに食べられるので、手軽で栄養補給に役立つ食材といわれる[45]

保存

葉付き大根はそのまま置くと、葉に養分がとられて栄養価が下がり、水分が失われ根にスが入る[注釈 1]ので、すぐに茎の根元(クビ)から葉を切り落として、根は切断面をラップで密封して冷蔵庫に立てて保存するとよい[18]。葉は、その日のうちに水にさらすか、茹でるなどして、水気を切ってから保存袋に入れて冷蔵保存する[18]

大根はの多い地域では雪中貯蔵も行われており、垂直に置く貯蔵法や雪中傾斜置き貯蔵などがある[48]


注釈

  1. ^ 根菜の中身がスカスカな状態になることを、俗に「スが入る」という。

出典

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  3. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Raphanus sativus L. var. longipinnatus L.H.Bailey” (日本語). BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2020年7月9日閲覧。
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