ジョイセフ 歴史

ジョイセフ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/01 08:59 UTC 版)

歴史

ジョイセフ発足 前史 ~女性の解放運動と家族計画

20世紀に入り、米国では1912年にマーガレット・サンガーによる「Birth Control」運動が開始された。その影響を受けて日本では1920年代に加藤シヅエ等による産児制限運動が始まる。その後、第2次世界大戦などにより運動は中断。戦後、1952年に国際家族計画連盟(IPPF)が発足し、日本では受胎調節実地指導員制度が開始された。1954年には日本家族計画連盟と日本家族計画協会が設立され、国内の家族計画運動が始動。後にこの「中絶から家族計画(避妊)へ」の運動が日本社会に大きな影響を与え、人工妊娠中絶数は1955年の117万件から、2016年度には16万8千件へと減少した。

ジョイセフ発足 前夜 ~世界人口急増時代、国際社会から日本への期待

1950年代以降、急速に増加する開発途上国の人口が、国々の社会・経済の発展と世界の食糧、資源、環境への脅威であると認識された時代であった。一方で、戦後の困窮した時代を乗り越えた日本は経済成長の時期を迎え、同時に家族計画の成功や母子保健の向上が世界から注目され始めていた。

第1期 ジョイセフ創立・始動:1968 - 1973年

1967年にIPPF顧問ウィリアム・ドレーパーが来日し、途上国への日本の人口・家族計画分野の協力を訴えた。1968年、家族計画・母子保健分野の試験研究法人・技術協力機関として外務省・厚生省認可の財団法人家族計画国際協力財団(後の公益財団法人ジョイセフ)が設立される。当初からアドボカシー(政策提言)が重点事業のひとつであり日本政府の国際機関等への任意拠出金の増額を目指す機関としての役割を期待されていた。 この時代、多くの途上国で家族計画が人口抑制の手段となり、女性の人権が尊重されることなく「出生数」をコントロールする対象として見なされていた。その中でジョイセフの創設者である國井長次郎は、家族計画とは「自分の生活を守り、家族の幸せを願うこと、母と子の健康を守りたいという気持ち」からのもので、「人口問題の解決のためでも、国の経済発展の方法でもない」という哲学を持っていた。「人間的家族計画(Humanistic Family Planning)」そして「住民が主体」という國井の信念は、創立以来、女性と妊産婦の命と健康を守る活動を実施してきたジョイセフの思想であり、ジョイセフの活動の基本理念として、とぎれることなく受け継がれている。

第2期 家族計画・栄養・寄生虫予防インテグレーションプロジェクト(IP):1974 - 1993年

日本の経験とノウハウ、そして國井が提唱する「人間的家族計画」を基礎にした「家族計画・栄養・寄生虫予防インテグレーションプロジェクト(IP)」が1974年より開始される。IPは後にPHC(プライマリーヘルスケア)の好事例として国際的に認知度を高め、多くの国々で実施されるようになった。IPにより、家族計画は、人口抑制の手段ではなく、一人ひとりの人間の命や健康を守る戦略として国際的に広まった。20年後の国際人口開発会議(ICPD)英語版ではその理念が基盤となり、リプロダクティブ・ヘルス(RH)へと進化発展することになる。

第3期 リプロダクティブ・ヘルス(RH)国際的潮流へ:1994 - 2000年

1994年にICPDで提唱されたリプロダクティブ・ヘルス(RH)が国際的潮流となる。ジョイセフはRHを先導する日本生まれの国際協力NGOとしてその活動が認められ、この年、保健分野の国際協力NGOと外務省の対話の場である、後のGII/IDI懇談会の事務局となり、現在に至っている。また1995年に北京で開催された世界女性会議では、RH/Rは女性の基本的権利だと明記され、若者の性と健康を重視し、ジェンダーの平等、女性のエンパワーメントも重視されている。ジョイセフは永年の実績の上に、2000年に国連経済社会理事会(ECOSOC)特別諮問NGOの資格を得た。

第4期 ミレニアム開発目標(MDGs):2001 - 2015年

2001年にMDGsが始動。ジョイセフは日本のみならず国際NGOとしてセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRH/R)分野の牽引的な役割を担うことになる。また2001年には永年の功績により国連人口賞を受賞した。さらに2011年の東日本大震災をきっかけにジョイセフは日本国内においてもSRH/R分野、とりわけ「妊産婦と女性の命と健康を守る」NGOとしての支援活動を展開した。

第5期 持続可能な開発目標(SDGs)時代へ:2016年 - 現在

2016年にジョイセフのミッションがSDGs時代に合わせて改訂。海外のみならず、日本国内の課題にも注視することの意味を込めて、さらには「誰一人取り残さない」という信念を表し、対象を「すべての人々」とする。また国内において、SRH/Rの啓発を目的としたI LADY. (Love, Act, Decide Yourself.)キャンペーンを立ち上げる。2016年、女性へのフォーカスが強まり、G7サミット、TICAD Ⅵなどでは、ジョイセフはSRH/R分野のアドボカシー活動の先導的NGOとして活躍。この年、ジョイセフは「読売国際協力賞」を受賞、2017年には第1回「ジャパンSDGsアワード」(主催:SDGs推進本部/本部長・安倍首相)の特別賞「SDGsパートナー賞」を受賞した。








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