コウ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/04 03:25 UTC 版)
攻め合いにおけるコウ
白がaとコウを取ってbに打ち抜くか、黒がコウに勝ってcと白を打ち上げるかの生死を賭けたコウ。コウのついた攻め合いの場合、外ダメを先に詰めてから、最後にコウを取る手順が得になる場合が多い。
コウのいろいろ
ヨセコウ
上図の場合、白からは、aにコウを取った後にbに打ち抜けばコウ勝ちだが、黒からは、白のコウダテに手を抜きcに詰めてからさらにdに打ち抜かねばならない。このように、一方が手を詰める必要のあるコウを「ヨセコウ」と呼ぶ。上の図は一手ヨセコウの例。黒がcにダメを詰めて、両者とも一手で解消できる状態になったコウは「本コウ」と呼ぶ。
上図のような形は、白はコウを取った後でaに打ち抜けばコウを解消できるが、黒からはb、c、dに3手詰めて白石を抜かなければ勝てない。これは「二手ヨセコウ」となる。
三手以上のヨセコウもあるが、ヨセる側が三手以上手をかけている間に他で大きく得をされるため、差が大きすぎるとみなされる。このため「三手ヨセコウはコウにあらず」という格言もある。
両コウ
上図のような場合、白がaに取ると黒はbに取り返すことができるため、どちらも全体が取られることがない。このため、双方ともセキ生きとして扱われる。両コウセキができると三コウの可能性が高くなる。
こうした形の場合は白がaに取ると黒がbに取り返せるため、白から黒全体を取る手段はない。逆に黒はb、cと打てば白を取ることができ、白からはこれを防ぐ手段がないため、このまま白が取られという扱いになる。ただしこの場合、白は無限のコウ材を持つことになるため、他でコウが発生すると黒には大きな負担になる。「両コウ三年のわずらい」という格言はこれを指す。
三コウ
盤上に同時に3箇所以上コウが発生した場合、この3箇所をお互いが順に打っていけば、永久に対局が終わらない。このような場合、両対局者が譲らない場合には「無勝負」とされ、打ち直しとなる。この3箇所のコウを三コウと呼ぶ。
左上は単独での三コウ。黒は全体がアタリなので1にコウを取ると、今度は白がアタリなので2に抜く。また黒がアタリなので3に取り返し、白が△の点にコウを取り……と繰り返し、両者が譲らない限り永遠に終わらない。
また右半分は、両コウがらみの三コウ。両者が右上の両コウをコウダテにして右下のコウを争うと、やはり無限に繰り返される。四コウなど、さらに多数のコウがからむケースも存在する。
二段コウ
この形では黒はaに打ち抜けば勝ちだが、白からはまずbのコウに勝ってcに取り、ここでもコウを勝ち抜いてdに打ち上げて初めて勝ちとなる。こうしたケースを二段コウと呼ぶ。
三段コウ
上図が三段コウと呼ばれる形。白からはeに抜けば勝ちだが、黒からはaのコウ、bのコウ、cのコウに勝ち、dに抜いてやっと解消できる形である。白は1手で解消できるが、黒は3手かけないと解消できないため、勝つことは難しい。
万年コウ
この形ではaに白がツゲば全体がセキだが、黒から解消しようと思うとまずaに取り、次いでbに詰めて決死のコウを挑まねばならない。白は他のコウ材の具合によってはbに詰めて比較的負担の軽いコウに持ち込むこともでき、選択権は白が持つ。こうした形を「万年コウ」と呼ぶ。1928年の瀬越憲作・高橋重行戦で発生して紛糾した。
上図のまま終局した(どちらからもコウを仕掛けず、白がツグこともしなかった)場合は、このままセキと扱われる(日本囲碁規約の場合[1])。
循環コウ
この図では、黒1のホウリコミに対し、白が3の点に抜くと黒5にコウを取られてアタリになってしまう。そこで白は2の点にホウリコミ返し、黒3の抜きに対して4に抜く。黒は5にコウを取ると、当初の黒白の立場が入れ替わった形になってしまっており、どちらかが譲らない限り無限にこの応酬が繰り返されることになる。この形を「循環コウ」と呼び、双方が譲らなければ無勝負となる。ただしこの形が実戦に生じた記録はなく、知名度も低いルールとなっている。
花見コウ
この図は、白にとっては負けると隅の大石が死んでしまう、非常に負担が重いコウである。逆に黒からは負けても△の3子を取られるだけの小さな損害しかなく「花見気分で争えるような負担が軽いコウ」であるため、花見コウと呼ばれる。
半コウ
上図aのコウは、コウを取り囲む石が白黒共に完全に生きているため、黒からも白からも2手かけて解消しても1目の価値があるだけである。1手あたり半目の価値であるため「半コウ」と呼ばれる。
その他のコウをめぐる用語
- 天下コウ - 盤面上どこにも引き替えとなるようなコウ材が存在しない、非常に大きなコウのこと。「天下利かずのコウ」の略。
- ソバコウ - コウを争っている石の近くに立てるコウダテのこと。例えば死活を争っているコウの際、包囲網を破ろうとするコウダテのような場合を指す。多くの場合、相手はそれに応じなければならない絶対のコウダテとなる。
- 損コウ - コウダテを打ち、相手が受けることによって自分が損をするようなコウダテのこと(たとえば、もともとセキであった所に自分からダメを詰め、取られに行くような手)。「損なコウ」ではなく「損なコウダテ」の意味で用いられる。どうしてもコウに勝ちたい時は損コウを打つしかないが、その分コウに勝つ価値は下がることになる。
- 無コウ - 手を抜かれても得をする手がない、無効なコウダテのこと。単語の中の「コウ」は「コウダテ」の意味で用いられている。
- コウ移し - 例えば黒がコウダテを打ち、白がそれに応じずコウを解消した後、黒がコウダテを打った場所に連打してコウが始まるような場合を指す。コウの場所が移るためこの名がある。
- コウ自慢 - コウダテが豊富にあり、コウが起これば有利に運べるという状態。
- コウ含み - コウになりうる場所があるが、すぐにはコウを仕掛けず、局面の展開を見ながら時期を伺う状態。
- 超コウ(スーパーコウ)ルール - 三コウなどの無勝負を避けるため、盤面全体の同形反復を禁止するルール。
- ^ “Ⅲ 死活確認例 死活例12 「万年劫」”. 日本棋院. 2016年5月10日閲覧。
- ^ 囲碁史最大の謎 手順解明 本能寺の変 直前対局 大珍事「三コウ」発生 出雲の桑本 棋士囲碁新聞で発表、関心呼ぶ 山陽中央新報デジタル 2022年1月25日 2022年1月27日閲覧
- ^ a b c “[時代の証言者]囲碁と生きる 趙治勲<2>前代未聞の「無勝負」”. 読売新聞オンライン (2020年12月10日). 2023年12月11日閲覧。
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- 2 コウの概要
- 3 攻め合いにおけるコウ
- 4 コウに関する格言
- 5 参考図書
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