カールグスタフ (無反動砲) 設計

カールグスタフ (無反動砲)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/06 14:53 UTC 版)

設計

カールグスタフM3を砲尾側から見たところ
砲弾が装填されていないため、砲身にはライフリングが刻まれているのが見え、ノズルのみで尾栓のない閉鎖器部の構造がわかる
向かって右下の突起には撃発機構が内蔵され、これが薬莢側面の雷管を叩くことで発射が行われる

個人運用可能な携行無反動砲であり、本体は砲身、グリップ、照準器、チークピース、肩当、脚、撃発装置、閉鎖器を兼ねた砲身後部ノズルからなる。前方の砲口部にラッパ状の縁があるが、これは砲身の破損変形を防ぐための部品で、射撃時には外される。

発射方式は無尾栓型のクルップ式であり、弾薬底の破砕部が尾栓を兼ねる方式(砲自体には砲尾を完全に閉鎖する機構を持たない)で、特殊鋼製の砲身には24条右回りのライフリングが刻まれている。

使用弾薬は対戦車榴弾のHEAT 751(タンデム弾頭)、HEAT 551、多目的榴弾のHEDP 502、榴弾のHE 441B、照明弾のILLUM 545、発煙弾のSMOKE 469B、周辺防御用弾頭のADM 401といった多様な砲弾が用意されている。対戦車榴弾にのみ、弾頭を加速させるため砲弾にロケットモーターと安定フィンが付属する。雷管薬莢の側面に配置され、装填の際に撃発装置との位置決めを行う必要があるため、薬莢底部のリム(起縁)には砲側の突起と噛み合わせるための切欠きが設けられている。

無反動砲という特性上、発射時には強力な後方爆風が発生するため、射手の後方に爆風を遮るものがないよう、発射する場所や環境には制限がある。

使用弾薬

各種カールグスタフ用弾薬の展示用見本。向かって右手前の弾薬(ASM509、建造物破壊用弾頭)の薬莢リムに位置決め用の切り欠き、またその向かって左上の薬莢側面に雷管が写っている。
  • HEAT 751 対戦車榴弾(タンデム弾頭
    有効射程:>600m、装甲貫徹力:ERA+500mm以上のRHA、翼安定・ロケット推進
  • HEAT 551 対戦車榴弾
    有効射程:>700m、装甲貫徹力:>400mm、翼安定・ロケット推進
  • HEDP 502 多目的榴弾
    装甲貫徹力:>150mm、遅延信管
  • HE 441B 榴弾
    有効射程:>1,000m、機械式時限信管及び着発信管、鋼球800発を内蔵
  • ILLUM 545 照明弾
    燃焼時間:>30秒、光度:>650,000cd、照明範囲:>400-500m
  • SMOKE 469B 発煙弾
  • ADM 401 フレシェット弾(1,100発を内蔵)
    有効射程:>100m、散布密度:>距離100mにおいて1m2あたり5-10発
  • GMM 多目的誘導弾
    有効射程:>2,500m

注釈

  1. ^ "Granatgevär"とはスウェーデン語で“擲弾銃(擲弾発射筒)”を意味する。
  2. ^ つまりは製造メーカー名に因むものであり、本砲の他にも“カールグスタフ”の通称および正式名称を持つスウェーデン製の兵器は多種類が存在する。
  3. ^ Ch・D・バーニー准男爵、“バーニー砲”の名で知られる独自機構の無反動砲の設計・開発で著名。
    バーニー卿は無反動砲に関する自身の理論を本銃の開発で実証した後、その結果を基に作動形式・構造を発展・改良させ、本国イギリスで“バーニー砲(Burney Gun)”の名で呼ばれる各種の無反動砲を開発した。
  4. ^ ただし、パンツァーシュレックは「携帯式対戦車ロケット弾発射筒」であり、本砲のような無反動砲ではない。
  5. ^ M2-550は射撃精度が大幅に向上したが、「標準的な交戦距離からして過剰な装備である」「高価で複雑なため野戦での運用に難がある」と実用面からはそれほど評判は芳しくなく、FFV550は重くかさばるものであったため「本砲のメリットである簡便性を損っている」として開発側が予想したほどの需要がなく、1990年代にM3型が開発されるとメーカーのラインナップから削除された。
  6. ^ これにより大幅な軽量化が達成されたが、砲身命数(砲身寿命)は低下している(ただし、1993年に行われたアメリカ陸軍の研究所による耐久テストでは2,380発までの耐用年数があり、メーカーの保証値の4.5倍の実用命数があるとされている)。
  7. ^ この新型砲身の命数は1,000発とされている。
  8. ^ FFV597は分離装薬式で、砲尾から装薬(発射薬)が充填された薬莢を、砲口から外装式の弾頭を、それぞれ別個に装填する必要があった。このため、迅速な射撃準備と連続発射が困難だった。

出典

  1. ^ 井上孝司 (2017年6月3日). “軍事とIT 第195回 特別編・カール・グスタフ無反動砲”. マイナビニュース. https://news.mynavi.jp/article/military_it-195/ 2019年9月23日閲覧。 
  2. ^ Marius Zgureanu (2017年7月7日). “Super-munitii pentru Karl Gustav” (ルーマニア語). Romania Military. 2019年9月25日閲覧。
  3. ^ a b 毒島刀也『陸上自衛隊「装備」のすべて』 ソフトバンククリエイティブ、2012年、ISBN 978-4-7973-5807-0、pp.54-55
  4. ^ 奈良原裕也、「ソ連戦車の脅威に対応!「高精度・大威力化」」『軍事研究』(株)ジャパン・ミリタリーレビュー、2017年5月号、196-206頁、ISSN 0533-6716
  5. ^ SAAB社プレスリリース”. 2023年10月21日閲覧。
  6. ^ 令和5年度 月別契約情報/随意契約(基準以上)2023年10月10日契約、防衛装備庁。2024年1月27日閲覧。
  7. ^ 清谷信一 (2024年1月25日). “「旧式」装備を大人買いする防衛省の無責任さ 無反動砲に見る「ずさんな装備調達」の実態”. 東洋経済オンライン. 2024年1月27日閲覧。
  8. ^ 防衛省・自衛隊:予算の概要”. www.mod.go.jp. 2022年9月19日閲覧。
  9. ^ 契約に係る情報の公表(中央調達分)防衛装備庁。2024年1月27日閲覧。





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