カタパルト 各国のカタパルト

カタパルト

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/11 10:24 UTC 版)

各国のカタパルト

アメリカ合衆国

当初は単に形式番号を付していたが、1923年12月より、AタイプやPタイプ、Cタイプといった細分類が導入された[15]

F Mk II
フライホイール&クラッチ式。レキシントン級水上機発艦用。
A Mk 3
圧搾空気式。2,700kgの機体を103km/hまで加速させる能力。
H Mk I
油圧式。2,500kgの機体を74km/hまで加速させる能力。
H Mk II
油圧式。全長19m。2,500kgの機体を137km/hまで加速させる能力。「レンジャー」、ヨークタウン級用(1942年中に撤去)。
H-2-1
油圧式。全長28m。5,000kgの機体を144km/hまで加速させる能力。空母「エンタープライズ (CV-6)」へ1944年再装備。
H Mk IV
油圧式。7,200kgの機体を137km/hまで加速させる能力。軽空母、護衛空母用。
H-4-B
油圧式。全長32m。8,165kgの機体を144km/hまで加速させる能力。エセックス級用。
H-4-1
油圧式。全長50m。12,700kgの機体を144km/hまで加速させる能力。ミッドウェイ級用。
H-8
油圧式。全長63m。7,030kgの機体を194km/hまで加速させる能力。エセックス級のうちSCB‐27A近代化を施されたものが装備。
C Mk 7
当初は火薬式の予定だったが、途中で蒸気式に再設計された。全長250–275 ft (76–84 m)。40,000 lb (18,000 kg)の機体を148.5ノット (275.0 km/h)まで、もしくは70,000 lb (32,000 kg)の機体を116ノット (215 km/h)まで加速させる能力。フォレスタル級で装備化されたが、当初は同艦のボイラーの性能面の限界のために蒸気圧力600 lbf/in2 (42 kgf/cm2)で運用されており、後に圧力1,200 lbf/in2 (84 kgf/cm2)に対応したバージョンが開発された[15]
C-11
蒸気式。全長203 ft (62 m)。39,000 lb (18,000 kg)の機体を136ノット (252 km/h)まで、もしくは70,000 lb (32,000 kg)の機体を107.5ノット (199.1 km/h)まで加速させる能力。イギリスの蒸気式カタパルトBXS-1をもとに、より高圧の蒸気を使用するように変更したモデル[15]。エセックス級のうちSCB‐27C近代化を施された艦、SCB-110及びSCB-110A近代化を施されたミッドウェイ級が油圧式から換装。
C-11-1
蒸気式。エセックス級のSCB-125近代化を施された艦のうち、最後に改装された「オリスカニー」が油圧式から換装。
C-13
蒸気式。C-7の後継と位置づけられており、全長250 ft (76 m)のモデルと310 ft (94 m)のモデル(Mod 1)がある。250フィートのモデルは、78,000 lb (35,000 kg)の機体を160マイル毎時 (260 km/h)まで加速させる能力[15]
キティホーク級、「エンタープライズ (CVN-65)」が建造時から装備。また、ミッドウェイ級がSCB-101/66近代化にてC‐11から換装。
C-13-1
蒸気式。全長94m。35,000kgの機体を296km/hまで加速させる能力。ニミッツ級のうち「ニミッツ」から「セオドア・ルーズベルト」までの4隻が建造時に装備。キティホーク級、「エンタープライズ (CVN-65)」も後の近代化で換装。
C-13-2
蒸気式。「エイブラハム・リンカーン」以降のニミッツ級6隻が建造時に装備。フランスPA2への採用も見込まれていたが、建造計画自体がキャンセルとなった。
C-13-3
蒸気式。全長75m。フランスに販売されたモデルで、「シャルル・ド・ゴール」が装備。
ICCALS C-14
内燃式(Internal Combustion Catapult Aircraft Launch System)。1950年代に蒸気式アップグレード用に開発されていたカタパルト。シリンダーの後端に設置された燃焼器で燃焼ガスを発生させ、航空機を加速させる。フルクローズドシステムで動力や電源を損失しても運用可能、蒸気式を上回るパワーとを初期加速G低減を実現したとしている。当時の技術では安全性に問題があり、空母での採用には至らなかった。1995年にEMALSとの競作が提案されるが敗れている。
EMALS
電磁式。アメリカとイギリス共同開発による世界初の航空母艦用電磁カタパルトであり、当初ニミッツ級最終艦「ジョージ・H・W・ブッシュ」への搭載が検討されたが、開発の遅れからフォード級「ジェラルド・R・フォード」にて初めて採用された。

イギリス

アークロイヤル(左)とニミッツ(右)。両艦ともCATOBAR方式の空母であることが分かる。

1978年オーディシャス級空母アーク・ロイヤル」が退役したことで、イギリス海軍における蒸気式カタパルトの運用は無くなった。実質的な後継空母であるインヴィンシブル級の就役時には、世界初の実用V/STOL攻撃機であったハリアーの艦載機型であるシーハリアーの実用化が済んでおり、固定翼艦載機をシーハリアーと各種ヘリコプターのみとしてSTOVL運用されることが決定済であったため、カタパルトは装備されなかった。

クイーン・エリザベス級」では当初カタパルトの搭載が検討され、開発が進められていたが後に開発を破棄し最終的にカタパルト搭載そのものを中止している。

HI‐1
油圧式。5,400kgの機体を122km/hに加速させる能力。「アーク・ロイヤル(初代)
BH‐3
油圧式。9,100kgの機体を118km/hに加速させる能力。イラストリアス級コロッサス級
BXS‐1
蒸気式。世界初の航空母艦用蒸気カタパルトであり、実際に空母に搭載された初の蒸気式カタパルト。試験艦に転用された軽空母「パーシュース」に搭載され、試験結果からイギリスはミッチェル・ブラウンBS4を完成させ、正規空母イラストリアス級や軽空母コロッサス級マジェスティック級セントー級などの改装時に(一部の艦のみ新造時から)油圧式カタパルトから換装、イギリス海軍で運用或いは他国に売却した。また、アメリカではエセックス級の一部に装備した後、若干の変更を加えてC-11として採用された。
ミッチェル・ブラウンBS5
蒸気式。オーディシャス級の油圧式カタパルトから換装等自国製空母のほか、フランス海軍クレマンソー級航空母艦に採用。
EMCAT
電磁式。クイーン・エリザベス級で搭載が検討されていたもので、Converteam UK英語版開発を担当した。EMCATは"E"lectro "M"agnetic "Cat"apultの略。
Converteam UKの海軍ディレクターMark Dannatt氏は7月22日にジェーンに、現代のリニアモーター、エネルギー貯蔵および制御システムの動作を証明するために、2007年に小規模のEMCATシステムが完成したと語っていた。それ以来、システムの広範なテストが成功裏に完了したばかりでなく、イギリス国防省の要請により、Converteam UKがクイーン・エリザベス級に適したフルサイズの飛行機までシステムを拡張できるようにする作業がさらに進められ、2009年7月20日に締結した高出力電気システムの設計・開発、デモンストレーションに関する650,000ポンドの契約に基づいた作業は2010年7月26日の時点でほぼ完了していた[16]。その後同年10月、イギリス政府は、クイーン・エリザベス級に未決定のカタパルトを搭載してF-35Cを購入すると発表し[17]、2011年12月21日にEMALSおよびAARの開発のためのエンジニアリングサポートを受けるためゼネラル・アトミクスと契約を結び、11月26日にDSCAにより公式要請が発表された。この要請の性質と特異性からイギリスが独自の電磁カタパルトを放棄することを決定したことを強く示唆された[18]。しかし2012年5月にF-35Cのコストが当初の見積もりより倍に増加したことから最終的にSTOVL機であるF-35Bが採用されることとなり[19]、これによりカタパルトの搭載自体が見送られることとなった。

イタリア

カタパルトから発射されるRQ-7(画像はアメリカ陸軍のもの)

ドイツ製水上機発艦用火薬式・空気式のカタパルトをベースに国産化し、運用していた。空母「アキラ」はカタパルト搭載予定だったが、イタリアの降伏時完成しておらず、ドイツに接収後に「グラーフ・ツェッペリン」からカタパルトを移植されるが結局未完成のままとなった。 前述のように空母用カタパルトは完成しなかったが、現在はRQ-7無人偵察機の地上射出用に運用する。

オーストラリア

カタパルト後端の発射位置に着いたRQ-7B

RQ-7B無人偵察機の地上射出用に運用する。

カナダ

カタパルト後端の発射位置に着いたRQ-21(画像はアメリカ海兵隊のもの)

RQ-21無人偵察機の地上射出用に運用する。

ドイツ

カタパルト後端の発射位置に着いたLuna NG

水上機発艦用に火薬式・空気式のカタパルトを開発・運用していた。空母用のカタパルトは「グラーフ・ツェッペリン」にて搭載されたが空母自体は未完成に終わった。空母装備の火薬式・空気式のカタパルトはJu87及びBf109Tを射出可能で、空気式の圧搾空気充填は約4分程度とされている。

前述のように空母用カタパルトは完成しなかったが、現在はラインメタル製のLuna NG無人偵察機の地上射出用に運用する。

ロシア

オルラン10

2022年ロシアのウクライナ侵攻から多種類の無人機を運用しており、それに伴いカタパルトの運用も増加している。

日本

空母用カタパルトを実用化できなかった大日本帝国海軍のカタパルト非搭載の空母は、搭載機の離艦時は風上に向かってより高速で航行する必要があり、大出力機関(また細長い艦型)を要し、建造と運用上の制約となった。発艦距離をとるために甲板を長く使わざるをえず、一度に甲板に並べることのできる機数は英米にくらべ減少した。また新型機が実用化されても、その増した重量に対してより高い離陸速度を稼ぐ必要があるため、低速な正規空母や甲板の短い軽空母・護衛空母では新型機の運用が不可能で、旧型機を使い続けなければならないといった不都合や、前述の風上航行などの準備作業が必要な事もあり、潜水艦などからの急襲を受けた際に航空機を迅速に緊急発艦させる事も難しい為に護衛空母というカテゴリーの空母を有効活用する事が出来ない結果を招いた。そして、マリアナ沖海戦においては、風上航行どころか泊地からの出航さえままならぬ状態にあった日本空母は泊地内に停泊したまま海戦前の航空訓練が行えず、搭乗員は発着艦さえままならぬ練度不足に陥り、同海戦の敗因の一つなった。

また天山流星のように、高速な正規空母上であってもロケット補助推進離陸(RATO)を用いないと兵装満載状態で発艦不可能とされた機種もあった。日本軍のRATOは昭和19年頃に実験が完了し、その後は空母からの発進にはRATOが全面的に使用される予定であったが、既にその時期には戦局の悪化で空母が作戦行動出来る状況では無くなっており、実戦で使用される事は無いまま終わっている。なお、RATOは全備状態の艦載機の滑走距離を数十メートル短縮させる効果はあったものの、使用に際して爆発的な閃光を発する為、夜間に使用する場合には敵に空母の位置を暴露してしまう欠点があり、この点でもカタパルトよりも不利であった。

萱場式艦発促進装置
スプリング式。1929年から1933年にかけ、一基の試験装置を「五十鈴」と「由良」で実験。
呉式1号1型
空気式。1928年、「衣笠」で実用実験。
呉式1号2型
伊5」。
呉式1号3型
伊6」。
呉式1号3型改
伊7」。
呉式1号4型
伊8」、甲型乙型潜水艦。
呉式2号1型
火薬式での最初の実用射出機。
呉式2号2型
火薬式。「鬼怒」、のちに「神通」に装備された。
呉式2号3型
火薬式。約3,000kgの機体を加速させる能力を持つ。高雄型重巡洋艦 に装備された。
呉式2号5型
火薬式。全長19.4m。約4,000kgの機体を加速させる能力を持つ。
開戦時には艦艇の射出機のほとんどがこの型だった。形状や搭載艦の事情に合わせた改造で、後に「改2」「改5」といった数字がつく。
一式2号11型
火薬式。全長25.5m。約5,000kgの機体を100km/hまで加速させる能力を持つ。「日進」、「速吸」、航空戦艦に改装された伊勢型戦艦等に装備された。
二式1号10型
空気式。全長44m。約5,000kgの機体を150km/hまで加速させる能力を持つ。「大淀」に装備されたが、後に撤去され呉式2号5型へと改装された。
四式1号10型
空気式。全長26m。約5,000kgの機体を発射間隔4分で発射できる能力を持つ。伊400型改甲型潜水艦に装備された。

南アフリカ

カタパルトに載せられて展示されるATE Vulture

ATE Vulture無人機の地上射出用に運用する。




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