アダム 語源

アダム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/06 05:44 UTC 版)

語源

Adamという語は、ヘブライ語で「地面」を意味するadamah(アダーマー)という語の男性形である。この言葉は同時に「人間」(アーダーム)という意味も持つ[3]、かつては個人の名前ではなく全体を表す一般的な名詞として使われていた。創世記でも第1章ではこの言葉は普通名詞として使われているが、第2章、第3章では普通名詞と固有名詞のどちらの意味でも使われているが、第4章25節、第5章3節以前での使用例では本当に個人名として使われているのか疑わしい。実際英語では第2,3章で明らかに個人を表す時はAdamの代わりにthe manという言葉が使われており、前置詞を伴わない用例は見られない。

第2章7節ではこの言葉の起源が、「神は地面の土を使って人間を作った」と説明されている。つまり、アダムは地面(adamah)から創られたため、こう呼ばれるようになったのである。第3章19節ではさらに説明的に述べられている。つまり、人間は地面の土から創られ死ぬと地面の土に帰るではなく、実際にその成分を取り入れるのである。同じような考えが、ラテン語のhomohumanus、ギリシア語のέπιχθόνιος、ドイツ語のgam、英語のgroomなどにも当てはまる。しかしAdamという言葉の場合は、普通名詞としての意味に先んじて個人の名前として使われていたとも見られる。実際アッシリアの王の名前でもAdamuという署名が残っており、中近東では古くから個人名として珍しくなかったと考えられる。創世記の中で「人類」という意味の普通名詞として使われているのは、アダムが全人類の祖先であるという考えを反映している。

なお、これ以外に民間語源的な解釈として「原料の土が『赤い[4]』土だったためアダムと名付けられた」というものがフラウィウス・ヨセフスの『ユダヤ古代誌』(第I巻第1章34節)に出てくる[5]


  1. ^ ヘブライ語対訳英語聖書 Genesis 9:6 血:blood:דם
  2. ^ ヘブライ語対訳英語聖書 Genesis 37:22 血:blood:דם
  3. ^ 関根正雄 『旧約聖書 創世記』 株式会社岩波書店、2007年第78刷(第1刷は1956年、1967年第17刷と1999年第69刷で改版あり)。ISBN 4-00-338011-8、P188。
  4. ^ ヘブライ語で「赤い」はアードーム(エドム)という。
  5. ^ フラウィウス・ヨセフス 著、秦剛平 訳『ユダヤ古代誌1』株式会社筑摩書房、1999年、ISBN 4-480-08531-9、P34。
  6. ^ Malan, Solomon Caesar (1882). The Book of Adam and Eve, also called the conflict of Adam and Eve with Satan. Williams and Norgate. p. 106 
  7. ^ クルアーン復活章36節‐39節、人間章2節
  8. ^ ʿAnāq — Brill”. ブリル. 2020年11月29日閲覧。
  9. ^ 吉田敦彦「6 霊魂のはじまり-なぜ、男は「魂」的存在で女は「魄」的存在なのか」『天地創造99の謎―世界の神話はなぜ不滅か』サンポウ・ブックス、1976年2月20日、146-147頁。 
  10. ^ 吉田敦彦『天地創造神話の謎 古代学ミニエンサイクロペディア』大和書房、1985年5月(原著1976年2月20日)。ISBN 4-479-47005-0 
  11. ^ 末日聖徒イエス・キリスト教会・聖句ガイド






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