金利平価説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/09 05:40 UTC 版)
金利平価説(きんりへいかせつ、英: Theory of Interest Parity)とは、為替レートの決定理論の一つで、どの通貨で資産を保有しても収益率が同じになるように為替レートが定まると主張する説。投資家がリスク中立的であると仮定し、2カ国の金利で投資を考えるとすると、どちらに投資しても期待収益率が同じになるような水準に落ち着くとする。
概説
金利平価説とは為替レートの決定理論のひとつ[1]で、どの通貨で資産を保有しても収益率が同じになるように為替レートが定まると主張する説。投資家が利益を得る方法には、大きく分けて投機と裁定取引の2種類がある。裁定取引とはまったくリスクなく収益を得る方法であるから、あらゆる投資家が裁定取引を行うとする。ここで、日本(自国)とアメリカ(外国)を考える。すると、投資家から見て、この2カ国の金利に差があれば、取引コストなどは無視した上で、より収益を得られるほうに投資をするはずである。投資家がリスク中立的であると仮定し、2カ国の金利で投資を考えるとすると、どちらに投資しても期待収益率が同じ水準に落ち着くはずである。
為替レートの決定理論には購買力平価説(長期的な為替レート決定理論)やアセットアプローチ理論(短期的な為替レート決定理論)があるが、金利平価説は現在の為替レートに対して将来の為替レートがどう動くかを考えるものであり、購買力平価説とアセットアプローチ理論は為替レートがどのような要因とメカニズムで決定されるかを考えるものであるから、金利平価説は若干その性格が異なる。
なお、以下の説明では、つぎのような仮定をおいている。
- 完全資本移動
- 2国間を自由に資金が移動できる。
- 内外資産完全代替
- 投資家はリスク中立的である。
カバーなしとカバー付きの違い
金利平価説とは、投資家がリスク中立的であると仮定し、2カ国の金利で投資を考えるとすると、どちらに投資しても期待収益率が同じ水準に落ち着くというものだが、しかしながら、将来というものを考えるにあたって、「将来の為替レート」には2つの種類のものが考えられる。「将来」を一年後とすると、1つは「1年後の直物為替レート」である。もうひとつは「1年物のフォワードレート」である。1年後の為替レートを考慮する際に、もし1年後の直物為替レートを用いるのであれば、1年間でどれだけ為替レートが変動するかという為替変動リスクを考慮する必要が生ずる。1年後の直物為替レートを用いた、為替変動リスクのある(リスクがカバーされていない)金利平価説をカバーなし金利平価と言う。なお、1年後のフォワードレートを用いる場合は為替変動リスクがないので、カバーのある(リスクがカバーされている)と言う意味で、カバー付き金利平価と言う。
カバーなし金利平価

ここで、日本を自国、アメリカを外国、そして世界には日本とアメリカしか存在しないとする。
一年後の為替レートにフォワードレートを使えば金利平価はどうなるであろうか。1年物のフォワードレートは現在において決定されるので、アメリカに投資した際の為替レートの変化率は、現在の直物為替レートと現在のフォワードレート(一年物)を基に算出する。そのため、カバー付き金利平価では為替変動リスクを考慮する必要はない。
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