アイ‐オー‐ピー‐エス【IOPS】
IOPS
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/07/10 01:23 UTC 版)
|
|
|
この項目の現在の内容は百科事典というよりは辞書に適しています。
|
入出力操作毎秒(英語:Input/output operations per second, 略称:IOPS, 「アイオーピーエス」または「アイオプス」と発音)は、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)、ストレージエリアネットワーク(SAN)などのコンピュータストーレジデバイスの入出力性能特性を示す単位である。ベンチマークと同様に、ストレージデバイスの製造元が公表しているIOPSの数値は、実際のアプリケーションのパフォーマンスとは直接関係しない[1][2]。
背景
任意のストレージデバイスのパフォーマンス特性を意味のある形で説明するには、IOPS、応答時間、および(アプリケーションの)ワークロードという最低3つの指標を同時に指定する必要がある。応答時間とワークロードの指定が同時に行われない場合、IOPSは実質的に無意味である。単独のIOPSは、自動車エンジンの「1分間あたりの回転数(RPM)」に似ていると考えることができる。つまり、ギアをニュートラルに入れた状態で10,000 RPMで回転できるエンジンは有益な情報を何も伝えないが、指定されたRPMで規定のトルクと馬力を発揮できるエンジンはその能力を完全に説明している。
あらゆるシステム構成で可能なIOPSの具体的な数値は、読み取りと書き込み操作のバランス、シーケンシャルアクセスとランダムアクセスのパターンの混在度、ワーカースレッドの数とキュー深度、およびデータブロックサイズなど、テスターがプログラムに入力する変数によって大きく異なる[1]。システム構成、ストレージドライバ、OSのバックグラウンド操作など、IOPSの結果に影響を与える可能性のある他の要因も存在する。また、特にSSDをテストする場合は、考慮しなければならない事前準備(プレコンディショニング)の要素がある[3]。
パフォーマンス特性
最も一般的に測定されるパフォーマンス特性は、シーケンシャルおよびランダム操作である。シーケンシャル操作は、連続データストレージにアクセスし、一般的に128 kB以上などの大きなデータ転送サイズに関連している。ランダム操作は、非連続的な方法でストレージデバイス上の場所にアクセスし、一般的に4 kBなどの小さなデータ転送サイズに関連している。
最も一般的なパフォーマンス特性は次のとおりである。
| 測定項目 | 説明 |
|---|---|
| 合計IOPS | 1秒あたりのI/O操作の総数 (読み取りと書き込みのテストを混在させて実行した場合) |
| ランダム読み取りIOPS | 1秒あたりの平均ランダム読み取りI/O操作数 |
| ランダム書き込みIOPS | 1秒あたりの平均ランダム書き込みI/O操作数 |
| シーケンシャル読み取りIOPS | 1秒あたりの平均シーケンシャル読み取りI/O操作数 |
| シーケンシャル書き込みIOPS | 1秒あたりの平均シーケンシャル書き込みI/O操作数 |
HDDや同様の電気機械式ストレージデバイスの場合、ランダムIOPSの数値は主にストレージデバイスのランダムシークタイムに依存する。一方、SSDや同様のソリッドステートストレージデバイスの場合、ランダムIOPSの数値は主にストレージデバイスの内部コントローラとメモリインターフェースの速度に依存する。どちらのタイプのストレージデバイスでも、シーケンシャルIOPSの数値(特に大きなブロックサイズを使用する場合)は、ストレージデバイスが処理できる最大持続帯域幅を示すことが多い[1]。多くの場合、シーケンシャルIOPSは次のように単純なメガバイト毎秒の数値として報告される。
- IOPS × (バイト単位の転送サイズ) = (秒間バイト数)
(その後、MB/sに変換される。)
一部のHDDやSSDは、未処理のIO数(すなわちキュー深度)が増加するとパフォーマンスが向上する。これは通常、ドライブ上のより高度なコントローラロジックがコマンドキューイングと並べ替えを実行した結果であり、一般的にタグ付きキューイング (TCQ) またはネイティブ・コマンド・キューイング (NCQ) と呼ばれる[4]。多くのコンシューマー向けSATA HDDはこれを行うことができないか、実装が不十分であるためパフォーマンスの向上が見られない場合がある。Western Digital RaptorやSeagate Barracuda NLなどのエンタープライズクラスのSATA HDDは、深いキューにより約100%向上する[5]。
従来のHDDは読み取りと書き込みの操作でほぼ同じIOPSを持つが、多くのNANDフラッシュベースのSSDやUSBメモリは、以前に書き込まれた場所に直接上書きできないため、ガベージコレクションと呼ばれる手順を強制され、読み取りよりも書き込みの方がはるかに遅くなる[6][7][8]。これにより、ハードウェアのテストサイトはIOPSパフォーマンスをテストする際に独自に測定した結果を提供し始めるようになった。
Intel X25-E(2010年リリース)などのフラッシュSSDは、従来のHDDよりもはるかに高いIOPSを備えている。Xssistが行ったIometerを使用したテスト(4 KBランダム転送、読み取り/書き込み比率70/30、キュー深度4)では、Intel X25-E 64 GB G1が提供するIOPSは約10,000 IOPSから始まり、8分後に4,000 IOPSに急激に低下し、その後の42分間で徐々に減少し続けた。約50分以降、8時間以上のテスト実行中、IOPSは3,000から4,000の間で変動した[9]。50分後のランダムIOPSの低下にもかかわらず、X25-Eは依然として従来のハードディスクドライブと比較してはるかに高いIOPSを備えている。SandForceコントローラを使用するOCZ RevoDrive 3 x2 PCIeを含む一部のSSDは、読み取り速度により近い、はるかに高い持続書き込みパフォーマンスを示している[10]。たとえば、一般的なオペレーティングシステムには多くの小さなファイル(128 kB以下のDLLなど)が存在するため、SSDはシステムドライブにより適している[11]。
例
メカニカルハードドライブ
テスト時に使用されるブロックサイズは、特定のドライブが実行するIOPSの数に大きな影響を与える。典型的なパフォーマンスの数値を以下に示す[12]。
| メトリック→ | IOPS | IOPS | MB/s | IOPS | IOPS | MB/s | ||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ドライブ | ブロックサイズ → | 4 KB | 64 KB | 64 KB | 512 KB | 512 KB | 大 | |
| タイプ | RPM | アクセスタイプ → | ランダム | ランダム | ランダム | ランダム | ランダム | シーケンシャル |
| SAS | 15 K | 188 – 203 | 175 – 192 | 11.2 – 12.3 | 115 – 135 | 58.9 – 68.9 | 91.5 – 126.3 | |
| FC | 15 K | 163 – 178 | 151 – 169 | 9.7 – 10.8 | 97 – 123 | 49.7 – 63.1 | 73.5 – 127.5 | |
| FC | 10 K | 142 – 151 | 130 – 143 | 8.3 – 9.2 | 80 – 104 | 40.9 – 53.1 | 58.1 – 107.2 | |
| SAS | 10 K | 142 – 151 | 130 – 143 | 8.3 – 9.2 | 80 – 104 | 40.9 – 53.1 | 58.1 – 107.2 | |
| SATA | 7200 | 73 – 79 | 69 – 76 | 4.4 – 4.9 | 47 – 63 | 24.3 – 32.1 | 43.4 – 97.8 | |
| SATA | 5400 | 57 | 55 | 3.5 | 44 | 22.6 | ||
ソリッドステートデバイス
| デバイス | タイプ | IOPS | インターフェース | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| Intel X25-M G2 (MLC) | SSD | ~8,600 IOPS[13] | SATA 3 Gbit/s | Intelのデータシート[14]では、6,600/8,600 IOPS(80 GB/160 GBバージョン)およびランダム4 KB書き込みと読み取りでそれぞれ35,000 IOPSとされている。 |
| Intel X25-E (SLC) | SSD | ~5,000 IOPS[15] | SATA 3 Gbit/s | Intelのデータシート[16]では、書き込みと読み取りでそれぞれ3,300 IOPSと35,000 IOPSとされている。混合では5,000 IOPSが測定されている。Intel X25-E G1は、Intel X25-M G2と比較して約3倍高いIOPSを備えている[17]。 |
| G.Skill Phoenix Pro | SSD | ~20,000 IOPS[18] | SATA 3 Gbit/s | 拡張ファームウェアを備えたSandForce-1200ベースのSSDドライブで、最大50,000 IOPSとされているが、ベンチマーク結果ではこの特定のドライブでランダム読み取りが約25,000 IOPS、ランダム書き込みが約15,000 IOPSであった[18]。 |
| Samsung SSD 850 PRO | SSD | 最大100,000読み取りIOPS 最大90,000書き込みIOPS[19] |
SATA 6 Gbit/s | QD32での4 KBアライメントランダムI/O QD1での10,000読み取りIOPS、36,000書き込みIOPS 256 GB以上のモデルでの550 MB/sシーケンシャル読み取り、520 MB/sシーケンシャル書き込み 128 GBモデルでの550 MB/sシーケンシャル読み取り、470 MB/sシーケンシャル書き込み[19] |
| Virident Systems tachIOn | SSD | 4 kBブロックを使用した最大持続読み取りIOPS 320,000、および4 kBブロックを使用した最大持続書き込みIOPS 200,000[20] | PCIe | |
| OCZ RevoDrive 3 X2 | SSD | 最大200,000ランダム書き込み4k IOPS[21] | PCIe | |
| DDRdrive X1 | SSD | 最大300,000以上(512Bランダム読み取りIOPS)および200,000以上(512Bランダム書き込みIOPS)[22][23][24][25] | PCIe | |
| Samsung SSD 960 EVO | SSD | 最大380,000読み取りIOPS 最大360,000書き込みIOPS[26] |
NVMe over PCIe 3.0 x4, M.2 | QD4(実質QD16)で4つのワーカーを使用した4 kBアライメントランダムI/O[27]、1 TBモデル QD1での14,000読み取りIOPS、50,000書き込みIOPS 500 GBモデルでの330,000読み取りIOPS、330,000書き込みIOPS 250 GBモデルでの300,000読み取りIOPS、330,000書き込みIOPS 最大3.2 GB/sシーケンシャル読み取り、1.9 GB/sシーケンシャル書き込み[26] |
| Samsung SSD 960 PRO | SSD | 最大440,000読み取りIOPS 最大360,000書き込みIOPS[26] |
NVMe over PCIe 3.0 x4, M.2 | QD4(実質QD16)で4つのワーカーを使用した4kBアライメントランダムI/O[27]、1および2 TBモデル QD1での14,000読み取りIOPS、50,000書き込みIOPS 512 GBモデルでの330,000読み取りIOPS、330,000書き込みIOPS 最大3.5 GB/sシーケンシャル読み取り、2.1 GB/sシーケンシャル書き込み[26] |
| Kaminario K2 | SSD | 最大2,000,000 IOPS[28]。 | FC | MLCフラッシュ |
| NetApp FAS6240クラスター | フラッシュ/ディスク | 仮想ストレージ階層化を使用し、60のシェルフにわたる1,440台の15kディスクを使用した1,261,145 SPECsfs2008 nfsv3 IOPS[31]。 | NFS, SMB, FC, FCoE, iSCSI | SPECsfs2008は、ファイルサーバーのスループットと応答時間を測定するStandard Performance Evaluation Corporationベンチマークスイートの最新バージョンであり、さまざまなベンダープラットフォーム間でパフォーマンスを比較するための標準化された方法を提供する。 |
| EMC DSSD D5 | フラッシュ | 最大1,000万IOPS[32] | 標準のPCIeで、高可用性を備えた最大48台のクライアント。 | PCIeラックスケールフラッシュアプライアンス。製造終了[33]。 |
脚注
- 1 2 3 Lowe, Scott (2010年2月12日). “Calculate IOPS in a storage array”. TechRepublic.com. 2011年7月3日閲覧。
- ↑ “Getting The Hang Of IOPS v1.3”. community.broadcom.com (2012年8月3日). 2013年8月15日閲覧。
- ↑ Smith, Kent (2009年8月11日). Benchmarking SSDs: The Devil is in the Preconditioning Details (PDF) (Report). 2015年5月5日閲覧.
- ↑ Serial ATA Revision 3.5 Specification (PDF) (Report). シリアルATAインターナショナル・オーガニゼーション. 2026年4月28日閲覧.
- ↑ “SATA in the Enterprise - A 500 GB Drive Roundup”. StorageReview.com (2006年7月13日). 2026年7月9日閲覧。
- ↑ Xiao-yu Hu; Evangelos Eleftheriou; Robert Haas; Ilias Iliadis; Roman Pletka (2009年5月4日). Write Amplification Analysis in Flash-Based Solid State Drives. SYSTOR 2009: The Israeli Experimental Systems Conference (英語). 2026年7月9日閲覧.
- ↑ SSDs - Write Amplification, TRIM and GC (PDF) (Report). OCZ Technology. 2010年5月31日閲覧.
- ↑ “Intel Solid State Drives”. Intel. 2010年5月31日閲覧。
- ↑ “Intel X25-E 64GB G1, 4KB Random IOPS, iometer benchmark” (2010年3月27日). 2010年4月1日閲覧。
- ↑ “OCZ RevoDrive 3 x2 PCIe SSD Review – 1.5GB Read/1.25GB Write/200,000 IOPS As Little As $699” (2011年6月28日). 2011年6月30日閲覧。
- ↑ “SSD vs. HDD: Which Do You Need?”. Avast. 2024年6月24日閲覧。
- ↑ “RAID Performance Calculator”. WintelGuy.com. 2019年4月1日閲覧。
- ↑ Schmid, Patrick (2008年9月8日). “Intel's X25-M Solid State Drive Reviewed”. 2011年8月2日閲覧。
- ↑ Intel X18-M/X25-M SATA Solid State Drive — 34 nm Product Line (PDF) (Report). Intel. 2010年1月. 2010年7月20日閲覧.
- ↑ Schmid, Patrick (2009年2月27日). “Intel's X25-E SSD Walks All Over The Competition: They Did It Again: X25-E For Servers Takes Off”. TomsHardware.com. 2013年5月13日閲覧。
- ↑ Intel X25-E SATA Solid State Drive: Product Manual (PDF) (Report). Intel. 2009年1月. 2026年7月9日閲覧.
- ↑ “Intel X25-E G1 vs Intel X25-M G2 Random 4 KB IOPS, iometer” (2010年5月). 2010年5月19日閲覧。
- 1 2 “G.Skill Phoenix Pro 120 GB Test - SandForce SF-1200 SSD mit 50K IOPS - HD Tune Access Time IOPS (Diagramme) (5/12)”. TweakPC.de. 2013年5月13日閲覧。
- 1 2 “Samsung SSD 850 PRO Specifications”. サムスン電子. 2017年6月7日閲覧。
- ↑ “Virident's tachIOn SSD flashes by”. The Register. 2026年7月9日閲覧.
- ↑ “OCZ RevoDrive 3 X2 480GB Review”. StorageReview.com (2011年6月28日). 2013年5月13日閲覧。
- ↑ Introducing the DDRdrive X1: Redefining Solid-State Storage (PDF) (Report). 2010年7月20日閲覧.
- ↑ DDRDrive - The drive for speed (PDF) (Report). 2009年5月22日閲覧.
- ↑ DDRDrive - The drive for speed (PDF) (Report). 2009年5月22日閲覧.
- ↑ Allyn Malventano (2009年5月4日). “DDRdrive hits the ground running - PCI-E RAM-based SSD”. PC Perspective. 2013年5月13日閲覧。
- 1 2 3 4 Samsung Electronics. “NVMe SSD 960 PRO/EVO”. 2017年6月7日閲覧。
- 1 2 Ramseyer, Chris (2016年10月18日). “Samsung 960 Pro SSD Review”. Tom's Hardware. 2017年6月9日閲覧。
- ↑ Lyle Smith. “Kaminario Boasts Over 2 Million IOPS and 20 GB/s Throughput on a Single All-Flash K2 Storage System”. 2015年12月19日閲覧。
- ↑ Mellor, Chris (2012年7月30日). “Million-plus IOPS: Kaminario smashes IBM in DRAM decimation”. The Register. 2013年11月14日閲覧.
- ↑ “Storage Performance Council: Active SPC-1 Results”. StoragePerformance.org. Storage Performance Council. 2012年9月25日閲覧。
- ↑ “SpecSFS2008”. 2014年2月7日閲覧。
- ↑ “Rack-Scale Flash Appliance - DSSD D5 EMC”. EMC. 2016年3月23日閲覧。
- ↑ “Dell kills off standalone DSSD D5, scatters remains into other gear”. The Register. 2026年7月9日閲覧.
関連項目
- MIPS (Instructions per second)
- ワットパフォーマンス (Performance per watt)
- IOPSのページへのリンク