糟谷磯丸とは? わかりやすく解説

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糟谷磯丸

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/10 16:03 UTC 版)

糟谷 磯丸
糟谷磯丸像(愛知県田原市・伊良湖岬)
誕生 新之丞
1764年6月2日宝暦14年5月3日
三河国渥美郡伊良湖村
(現・愛知県田原市伊良湖町
死没 1848年6月3日嘉永元年5月3日)
墓地 伊良湖神社
職業 歌人
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糟谷 磯丸(かすや いそまる、1764年6月2日宝暦14年5月3日) - 1848年6月3日嘉永元年5月3日))は、江戸時代後期の歌人。「無筆の歌詠み」として知られる漁夫歌人である。別名は貞良、磯麿、通称は新之丞、半之丞[1]

生涯

渥美半島の先端の村、三河国渥美郡伊良湖村(現・愛知県田原市伊良湖町)の貧しい漁師の家の長男として生まれた[2]。31歳で父を亡くし、母も長い間病気で、30歳を過ぎるまで読み書きができなかった[2]。しかし、母の病気全快を願い、伊良湖神社に日参するうちに参詣人の詠む和歌の不思議な響きに魅せられ、35歳にして歌の道を志した[2]大垣新田藩の役人の井本常に文字や和歌の教えを受け、「磯丸」という号を授かる[2]。その後、林織江の世話をしたことがきっかけとなり、織江の師である芝山大納言持豊に師事し「貞良」の号を授かる[2]

磯丸は一生のうちに数万首の歌を作ったといわれている。読み書きができなかったことから「無筆の歌詠み」とも呼ばれた。1848年(嘉永元年)、生まれた日と同じ5月3日に85歳で死去した[2]。その死後、磯丸を慕う人々によって「磯丸霊神」の名を与えられ、神としてまつられた[2]。磯丸の生家に建てられた「磯丸霊神祠」は現在、「糟谷磯丸旧里」と刻まれた石碑と共に伊良湖神社境内に安置されている[2][3]

磯丸は旅を好み、渥美半島の対岸の知多半島や三河の各地をはじめ、新城の山奥や浜松、長野(三遠南信地域)、京都、伊勢、尾張、江戸を旅した[2]。同時代を生きた渡辺崋山とも天保4年(1833年)に会ったという記録もある[4]

作品

磯丸の歌は素直で分かりやすく[5]、「無造作の中に真がこもっている」として庶民の間でもてはやされた[6]。なかでも「まじない歌」は有名で、磯丸に歌を詠んでもらうと願いがかなうという噂が広まり、家内安全・恋愛成就など人々の求めに応じ多くの歌を詠んでいる。恋路ヶ浜から伊良湖岬灯台まで続く遊歩道には磯丸が詠んだこれらの歌の歌碑が数多く建立されている。磯丸歌碑は全国各地に36箇所あるが、そのうち田原市には10箇所ある[7]

伊良湖を詠んだ歌として、以下の歌がある[8]

夏ころも きてもみよかし いらご崎 すずしきなみの よるの月かげ
(現代語訳)夏が来て涼しい着物を羽織る季節になった。そんな着物を着てふらりと夏の伊良湖岬に来てください。月夜に照らされた砂浜がとても綺麗で、涼しげな波の音が聞こえてきます。

脚注

  1. ^ デジタル版 日本人名大辞典+Plus
  2. ^ a b c d e f g h i 渡辺崋山と糟谷磯丸~異才の田原藩家老と漁夫歌人~【ふるさと先人展5】愛知県田原市/東海市”. www.city.tokai.aichi.jp. 2022年8月20日閲覧。
  3. ^ 『神様になった海辺の歌人 糟谷磯丸 生誕250年記念』 糟谷磯丸翁生誕250年記念事業実行委員会(編集・発行)、2014年7月10日、4頁。
  4. ^ 『神様になった海辺の歌人 糟谷磯丸 生誕250年記念』糟谷磯丸翁生誕250年記念事業実行委員会、2014年、P.6
  5. ^ 『渥美半島 郷土理解のための32章』 愛知県立福江高等学校(編集・発行)、2006年3月21日改訂版、37頁。
  6. ^ 『愛知百科事典』 中日新聞社開発局(編)、中日新聞本社、1976年10月5日、218-219頁。
  7. ^ 『三遠の民俗と歴史』第6号、三遠地方民俗と歴史研究会、2015年、P.114
  8. ^ 『神様になった海辺の歌人 糟谷磯丸 生誕250年記念』糟谷磯丸翁生誕250年記念事業実行委員会、2014年、P.5



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