研究データ利活用協議会とは? わかりやすく解説

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研究データ利活用協議会

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/26 17:05 UTC 版)

研究データ利活用協議会英語: Research Data Utilization Forum, RDUF[1]は、日本における研究データの共有・公開・利活用を促進することを目的とした学術団体である。2016年6月3日にジャパンリンクセンター(JaLC)[2]によって設立され、オープンサイエンス推進の機運の中で分野や機関の枠を超えたコミュニティ形成を目指している。

2014年から2015年にかけて行われた「研究データへのDOI登録実験プロジェクト」により、研究者・図書館員・行政機関担当者など実務レベルの研究データ担当者コミュニティが醸成され、その成果として「研究データへのDOI登録ガイドライン」が取りまとめられた。RDUFはこのコミュニティを基盤に、データ利活用に関する議論の場を提供している。会員は大学や公的研究機関、企業、学術出版社、研究インフラ提供者など多彩な分野から構成されており、研究データに関するガイドライン策定や提言活動などの実績も有している。

沿革

  • 2014年10月~2015年10月 – ジャパンリンクセンター(JaLC)が研究データへのデジタルオブジェクト識別子(DOI)付与の可能性を検証する実験プロジェクトを実施。研究者、図書館、行政機関など異なる立場の関係者が参加し、分野横断的な研究データコミュニティを形成した。プロジェクトの知見は「研究データへのDOI登録ガイドライン」として公開され、研究データにDOIを付与する手順や要件を示したものとなった。
  • 2016年6月 – 同コミュニティの中心メンバーにより「研究データ利活用協議会」設立準備会議(2016年5月26日開催)が開催され、同年6月に「研究データ利活用協議会」(RDUF)が設立された。設立の趣旨として、内閣府や日本学術会議でのオープンサイエンス検討や、第5期科学技術基本計画への明記など国内で研究データ共有推進の気運が高まったことが挙げられている。初代のRDUF企画委員長には武田英明(国立情報学研究所教授・JaLC運営委員長)、副会長には村山泰啓(情報通信研究機構)が選出され、国立研究開発法人や大学図書館等からなる機関会員と個人を中心とした個人会員の制度が整えられた。設立時には、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)、国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)、大学共同利用機関法人情報・システム研究機構国立情報学研究所(NII)、国立国会図書館(NDL)、国立研究開発法人産業技術総合研究所(AIST)、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)、文部科学省 科学技術・学術政策研究所(NISTEP)、の7機関が構成機関として名を連ねている。
  • 2016年11月 – 第1回RDUF公開シンポジウム「研究データの利活用の未来-オープンサイエンスの実現手段-」を開催。日本科学未来館で開催され、RDUFの紹介や、洪水予想やダム操作などの身近なデータ活用事例を題材に活発な議論がなされた。以後、RDUF公開シンポジウムは活動報告及び会員交流の場の提供を目的として、年1回開催されている。
  • 2017年10月 – RDUF内に専門課題ごとの小委員会制度を導入。短期間での活発な議論を促すため、類似の国際コミュニティである研究データ同盟(Research Data Alliance, RDA)を参考に、活動期間を原則として1年間に限定した。「研究データのライセンス検討プロジェクト」小委員会(後にデータ共有・公開制度検討部会)、「国内の分野リポジトリ関係者のネットワーク構築」小委員会(後にジャパン・データリポジトリ・ネットワーク(JDARN)部会)、「リサーチデータサイテーション」小委員会などが発足し、各分野における課題整理と成果物の作成に取り組んだ。
  • 2019年4月 – 内閣府の有識者会議「国際的動向を踏まえたオープンサイエンスの推進に関する検討会」において、JDARN小委員会が取りまとめた「研究データリポジトリ整備・運用ガイドライン」をもとにした同名の公式文書が公表された。本ガイドラインは研究データを保存・公開するデータリポジトリの運用に関する指針であり、国際的な認証制度であるCoreTrustSealの要件整理やデータリポジトリの運営体制モデルなどを含む。RDUFによる政策提言が、政府によるオープンサイエンス推進策の一環として位置づけられた初の事例となった。
  • 2019年12月 – 研究データライセンス小委員会により、研究データを公開する際の利用条件の明示方法を示す「研究データの公開・利用条件指定ガイドライン」が策定、公開された。本ガイドラインは研究データの提供者・利用者双方にとって分かりやすいライセンス表示を定めるもので、想定読者は大学や企業の研究者・技術者だけでなく、研究データ公開を支援する学術機関・図書館・学協会・出版社の担当者にも及ぶ。同ガイドラインは2020年3月にサービスを開始したJ-STAGE Dataのデータポリシーでも参照されるなど、実務者向けに大きな影響を及ぼした事例となった。
  • 2021年2月 – 企画委員会の活性化を目的として、任期制度の変更、及びアドバイザリーボードを設置。任期制度は、国際的な著者名識別子付与団体ORCIDに倣い、個人会員委員に対して最長3年間の区切りを設けた。アドバイザリーボードはRDUFの長期的な運営の在り方について助言を行うものとされ、委員長の判断で随時設置されることとなった。

上記と平行して、小委員会活動等によって得られた知見の継承と展開を長期的、継続的に行うことを目的とした部会制度を導入。制度趣旨を鑑み、部会では活動期間を設けない代わりに、イベントの開催やシンポジウムでの発表など積極的な広報・普及活動を義務付けている。2025年5月現在では、データ共有・公開制度検討部会及びジャパンデータリポジトリネットワーク推進部会(JDARN)の2つが活動を展開している。

会員構成

RDUFの会員には、「機関会員」と「個人会員」の2種類がある。機関会員は団体としてRDUFの企画・運営に関与するメンバーで、会費は無料である。機関会員はRDUF企画委員会にメンバーを派遣し、各種の意思決定に参画するとともに、公開シンポジウムの企画・運営等を担当する。2016年6月の設立以来、事務局は科学技術振興機構(JST)が務めている。

一方、個人会員は研究データ利活用に関心のある個人が自由に参加できる枠組みで、会費は無料である。2025年3月時点で約190名の個人会員が登録しており、メーリングリストを通じた情報交換や小委員会・部会活動への参加が可能である。個人会員のバックグラウンドは多様で、大学・公的研究機関の研究者(データ提供者・利用者)をはじめ、大学や研究機関のリポジトリ担当者、図書館員・博物館員といった情報管理専門職、学術出版・情報流通関係者、データ分析の専門家、ファンディング機関(研究資金配分機関)担当者など幅広い職種・分野の人々が所属している。

主な活動

定期イベントの開催: RDUFでは年間を通じて複数回の研究会やセミナー、そして年1回の公開シンポジウムを開催している。また、オープンサイエンスに関する日本最大の会議であるJapan Open Science Summit[3]にも協力機関として参加し、研究データ利活用に関するセッションを多数企画している。これらのイベントにおける国内外の最新動向共有や事例紹介、グループ討議といった活動を通じて、会員相互のネットワークを強化するとともに知識共有を図っている。

小委員会/部会による専門課題検討: RDUFの特徴的な活動として、特定のテーマごとに小委員会(ワーキンググループ)を設置し、集中的に課題検討と成果物作成を行っている点が挙げられる。発足以来、以下のような小委員会/部会が順次組織されてきた。

小委員会

小委員会名 活動期間 主な目的 成果物
研究データのライセンス検討プロジェクト小委員会 2017年 10月~2019年 3月 研究データの利活用を促進するためには、政策面でのアプローチだけではなく、利害関係者自身がデータにライセンスを付与し、法的な相互運用性を明確にしていくことが重要となる。上記を達成するため、小委員会ではコミュニティとの議論を通じ、ガイドライン策定のための基礎資料及び事例集を作成する。 •研究データのライセンス表示ガイドライン

•ライセンスの整理表

研究データ・ライセンス小委員会 2019年 7月~

2020年 1月

「研究データのライセンス検討プロジェクト」小委員会で作成したガイドライン草案につき、バージョンアップに向けた論点出しを兼ねた、各分野(学術、産業、官庁等)に対する普及活動を行う。 •研究データの公開・利用条件指定ガイドライン
ジャパン・データリポジトリ・ネットワーク(JDARN)小委員会 2020年 1月~

2020年 12月

研究データを安定的に公開する為には信頼できるデータリポジトリであることが重要。

我が国のリポジトリ関係者間で共通する問題と国際標準等の先進事例を集め整理する。

•研究データリポジトリ運営体制表

•リポジトリにおける役割・ドキュメント・アクション

•研究データリポジトリ整備・運用ガイドライン(JDARN案)

•CTS要求事項とアイテム

リサーチデータサイテーション小委員会 2019年 1月~

2019年 12月

研究データの引用・被引用関係を記述し活用する上での、論文執筆時からデータ検索までの各業務工程における課題を抽出・整理する。

研究データ引用に関わるメンバーが集まる場を作ることで、我が国における研究データ引用の実現に向けての人的ネットワークを作る。

•データ引用原則の共同宣言

•リーフレット「研究データDOIを付与するには?5分でわかる研究データDOI付与」

•「学術雑誌のデータ公開ポリシーの変遷:2014年と2019年の比較」

人文学・社会科学のデータ共有における課題検討小委員会 2021年 10月~2023年 3月 人文学・社会科学のデータ共有における課題を解決するために国内のデータアーカイブ等の事例を共有し、提言を行う。 •データ共有の取り組みに関する事例集
研究資料・実験機器へのPID付与検討小委員会 2022年 4月~2023年 9月 研究DXの推進には、最初からデジタル(ボーンデジタル、born-digital)な対象に加え、研究に用いた試料、史資料、機材等の有体物に関する情報もサイバー空間において参照できるようにすることが不可欠である。これら有体物としての研究資源に付与する永続的識別子(PID)とこれに付随するメタデータの管理と利活用に関する調査を実施する。 •PIDINST日本語ドキュメント
研究データへのDOI登録促進小委員会 2021年 11月~2024年 6月 現在の研究データへの DOI 登録に関する運用経験、実情、課題等を調査・議論し、「研究データへの DOI 登録ガイドライン」の改定、あるいは現状に即した新しいドキュメントを作成することについて検討する。「研究データへの DOI 登録ガイドライン」改定版等ド

キュメントや、検討・調査結果等を成果物としてとりまとめることで、研究データへの DOI 登録促進を目指す。

•「研究データへのDOI登録ガイドライン」改訂版

部会

データ共有・公開制度検討部会

「RDUF 研究データライセンス小委員会」による活動の継承と展開を目的とする。主な活動として研究データの公開・利用条件ガイドラインの作成と普及等を行っている。

ジャパンデータリポジトリネットワーク推進部会(JDARN)

「JDARN小委員会」活動の継承および展開を目的とする。主な活動としてデータリポジトリ整備・運用ガイドラインの草案執筆等を行っている。

成果物: 小委員会/部会の活動から得られた成果物は、RDUFウェブサイトの該当ページで順次公開されている。成果物の種類は多様であり、各種ガイドライン、事例集、海外ドキュメントの翻訳、リーフレット、成果発表論文などがある。

参考文献

外部リンク

  1. ^ 研究データ利活用協議会 RDUF (Research Data Utilization Forum)”. japanlinkcenter.org. 2025年9月20日閲覧。
  2. ^ ジャパンリンクセンター(JaLC)”. japanlinkcenter.org. 2025年9月20日閲覧。
  3. ^ Japan Open Science Summit 2025(JOSS2025)”. joss.rcos.nii.ac.jp. 2025年9月20日閲覧。



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